目次へ

目次

01 前立腺がんとは

02 がん患者の年次推移

03 前立腺がんに必要な診察と外来検査について

04 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術の認定施設とメリットについて

05 手術件数の年次推移

06 手術の後の創部を比較

07 術中出血量の年次比較

08 手術の様子

09 がんの完全切除

10 勃起神経を温存しやすい

11 痛み止めの使用頻度と総投与量

12 創部感染率

13 術後尿失禁率

14 術後入院日数

15 担当医師

16 前立腺がんについてのお問い合わせ


01:前立腺がんとは

 

 前立腺は男性にだけあり、精液の一部をつくる臓器です。前立腺は膀胱の下にあり、尿道を取り囲んでいます。この前立腺にがんが発生する病気が、前立腺がんです。前立腺がんはほかの臓器のがんとは異なり、ゆっくりと進行し、初期には自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることがあります。進行すると、尿が出にくい、排尿時に痛みを伴う、尿に血液が混じるなどの症状が出てきます。最終的には骨やほかの臓器にまで転移することがあります。早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。

■横から見た図■前から見た図

02:がん患者の年次推移

 

 がん患者の年次推移では、前立腺がんは死亡数、罹患※(りかん)数ともに増加しています。年齢別にみた前立腺がんの罹患数は、65歳以上で増加します。罹患数の年次推移は1975年以降増加しています。死亡数の年次推移は1950年代後半から90年代後半まで増加し、その後横ばい状態です。これは治療方法が進歩し、前立腺がんになっても死亡しない患者が増えたことによります。

※罹患(りかん)病気にかかること


 ■部位別がん死亡数の推移(男性)【全年齢 複数年】
 ■部位別がん死亡数の推移(男性)【全年齢 複数年】


 ■部位別がん罹患(りかん)率の推移(男性)【全年齢 複数年】
 ■部位別がん罹患(りかん)率の推移(男性)【全年齢 複数年】

 

資料:国立がんセンターがん対策情報センター
Source: Center for Cancer Control and Information Services, National Cancer, Japan

 


03:前立腺がんに必要な診察と外来検査について

 

(1) 直腸診:お尻から指を入れて前立腺の性状を観察します。
正常の前立腺ではゴムのような柔らかい前立腺を触知しますが癌が疑われる場合、しこりのようなものをふれる場合があります。

(2)血液検査【PSA測定※1】:PSA検査は、前立腺がんの早期発見のために非常に重要な検査です。血液検査だけで測定できるので、前立腺がんの集団検診でも用いられます。PSAは体の中にもともと存在する成分で、健康な状態でも前立腺でつくられています。しかし、前立腺がんがあるとPSAの血液中の量が急激に増えてくるので、がんの早期発見にも役立ちます。

PSAの「正常値」は測定方法によって様々です。受診した施設でどの方法を使っているかにより判定法は違いますが、標準的な測定法で測った場合は以下のようなものです。
■4ng/mL以下
陰性:定期的にPSA検査をして経過を見守ります。
■4.1~10ng/mL
グレーゾーン:正常値より若干高めの値で、がんの人と前立腺肥大症など、前立腺の他の病気の人が含まれている可能性があります。
■10.1ng/mL以上
陽性:がんがあることが疑われます。高い場合は数百ng/mlという数値が出ることもあります。

(3)前立腺MRI:前立腺がんの局在を知るために必要な画像診断で、がんが前立腺内にとどまっているか、被膜外浸潤※2(ひまくがいしんじゅん)やリンパ節転移があるかを知ることができます。

 

※1 PSA Prostate Specific Antigen
 =前立腺特異抗原(ぜんりつせんとくいこうげん)
前立腺特異抗原は、前立腺から分泌され精液中に含まれている生体物質である。分子量33~34kの単鎖状糖蛋白で、セリンプロテアーゼに分類されるタンパク質分解酵素の一種。 どういう機能を担っているのかは不明であるが、精液の粘度を調整して精子の運動を助けているのではないかと考えられている。

 

※2 被膜外浸潤
前立腺の被膜の外にがん細胞が浸潤していく事。

 


04:腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術の認定施設とメリットについて

 

 腹腔鏡下前立腺摘除術は、2006年4月1日より保険適用となりました。
腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術の認定施設は、15になります(平成25年9月現在)。

 

<厚生労働省の基準>

・泌尿器科を標榜している病院であること。

・腹腔鏡下腎摘出術及び腹腔鏡下副腎摘出術を、術者として、合わせて20例以上実施した経験を有する常勤の泌尿器科の医師が2名以上いること。

・当該手術に習熟した医師の指導の下に、当該手術を術者として10例以上実施した経験を有する常勤の泌尿器科の医師が1名以上いること。

・当該保険医療機関において腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術が10例以上実施されていること。

・関係学会から示されている指針に基づき適切に実施されていること。


腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術のメリット

 

開腹術に比べ腹腔鏡下前立腺摘除術は、

(1)傷が小さい

(2)術野を拡大して見るため精密な手術が可能

 ・術中出血量が少ない ・がんの完全切除 ・勃起神経を残し易い

(4)術後の痛みが少ない

(5)合併症のリスクが少ない

(6)回復が早い

などの利点があります。

 

 

これまでの腹腔鏡下手術の実績を生かし、今後は前立腺摘出術を腹腔鏡からロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術へ順次移行していく予定です。
(※詳細はダヴィンチの特設サイトをご覧ください。)

 

 


05:手術件数の年次推移

 

 当院では、2007年より前立腺がん治療のための腹腔鏡下前立腺摘除術を始めました。

 ■腹腔鏡下摘出術と開腹術の年次推移
■腹腔鏡下摘出術と開腹術の年次推移


06:手術の後の創部を比較

 

傷が小さい

 お腹を開く手術に比べ、腹腔鏡下手術は傷が小さいので、極めて痛みが少ないことが大きなメリットです。前立腺がんに対する腹腔鏡下手術は、お腹に5カ所の小さな穴を開け、それぞれにトロッカーと呼ばれる筒をはめ込んで行います。おヘソの横に開ける穴は直径1.5センチほどで、ここから専用の内視鏡を差し込んで腹腔内をテレビ画面に写し出します。あとの4つは0.5~1センチほどの大きさで、鉗子※(かんし)、はさみ、電気メスなどの細長い腹腔鏡下手術専用の器具を挿入します。

※鉗子(かんし)組織をつかむ

 ■開腹術の創部             ■腹腔鏡下手術の創部

07:術中出血量の年次比較

 

術中出血量が少ない

 腹腔鏡下手術の大きなメリットは、出血量を最小限に抑えることができることです。腹腔鏡下手術では、術中出血量が開腹術に比し有意に少なくてすみます。これは、手術中、腹腔内を膨らませる炭酸ガスの圧力で血管からの出血をおさえることなどによります。当科の腹腔鏡下手術では、術中出血量は開腹術に比べ約半分以下の量となっています。

■開腹術と腹腔鏡下摘出術の術中出血年次比較

08:手術の様子

 

術野を拡大して見るため精密な手術が可能

専用の内視鏡を差し込んで腹腔内を画面に写し出します。患部の鮮明な画像が得られ、大きなモニター画面に写しだされますので、肉眼よりも精密な手術が可能となります。

 

図A 左端から順に、看護師、執刀医師3名 (その他、看護師1名、麻酔医1名が常駐しています)
図B 手術中の様子(医師3名が腹腔鏡のモニターを見ながら施術しています)
図C 腹腔鏡のモニター画面(剥離している様子)

 


09:がんの完全切除

 

 腹腔鏡下手術は、視野を拡大して見るため精密な手術が可能です。このため、がんの完全切除が可能となります。日本人の前立腺がんの特徴として、前立腺尖部(尿道との境界)にがんが多く存在します。このため前立腺と尿道の境界を切断する際に前立腺組織を少しでも残してしまうと、がんが残る確率が非常に高くなります。当科では2012年までに210例の腹腔鏡下手術を行いました。腹腔鏡による手術で精密に前立腺と尿道の境界を切断することにより、開腹術と比較して、完全切除率が高くなりました。さらに腹腔鏡下手術の25例目から前立腺尖部に対する術式を変更し、以後、尿道との境界にがんを取り残す症例がなくなりました。

■開腹術と腹腔鏡下手術のがん切除の比較

10:勃起神経を温存しやすい

 

 腹腔鏡下手術において、性機能および排尿機能の維持のため、積極的に勃起神経を温存しています。勃起能力の回復度合いは現在追跡調査中ですが、症例によっては術後2週目より完全勃起できる症例も経験しています。ただし、がんの悪性度が高い症例や、前立腺がんが勃起神経の近くに存在する症例では、勃起神経を残すとがん細胞も残ってしまう可能性があるため、行っていません。

■腹腔鏡下手術における勃起神経温存可能比率

11:痛み止めの使用頻度と総投与量

 

術後の痛みが少ない

 痛み止めの使用頻度と総投与量は、腹腔鏡下手術で有意に低下しています。通常、手術の後は痛みが生じます。開腹術では約8割の人が全身麻酔から覚めたあと、痛み止めの追加が必要ですが、腹腔鏡下手術では痛みが少ないため、痛み止めが必要な人は約4割にしかすぎません。さらに腹腔鏡下手術では、痛み止めの投与量は、開腹術の半分以下の量しか必要としません。また、手術の後の痛みが小さいため、手術翌日から普通に歩き出すことも可能です。

 ■開腹術と腹腔鏡下摘出術の痛み止めの使用頻度部(2010年までの実績)    ■開腹術と腹腔鏡下摘出術の薬剤投与量(2010年までの実績)

12:創部感染率

 

合併症のリスクが少ない

 創部感染は、腹腔鏡下手術では現在まで発生していません。傷の大きな開腹術では、創部感染・肺炎・腸閉塞などの合併症が起こる可能性が高くなりますが、傷の小さな腹腔鏡下手術ではそのリスクも減らすことができます。前立腺がんの患者さんは、高齢者が多く、傷の大きな開腹術ではこれまで約8%の人が創部感染を発生しています。一方、腹腔鏡下手術では、現在まで発生していません。

■開腹術と腹腔鏡下摘出術の創部感染率の比較

13:術後尿失禁率

 

 退院時における尿失禁の状況です。1日の合計尿失禁量を1日の総尿量で割った値を尿失禁率としています。0%は「尿失禁なし」ということです。尿失禁は、患者さんの日常生活に大きな影響を与える要因の一つです。当院では開腹術において、多数の手術症例を経験しているため、退院時という極めて早期の状態でも約60%の患者さんで全く尿失禁を認めず、尿失禁率の平均値12.0%、中央値2.6%という極めて低い値になっています。腹腔鏡下手術においても、初期の24例ではやや尿失禁率が上昇しましたが、その後の症例では尿失禁率が減少し、54例目の時点では開腹術と同様に約80%の患者さんで全く尿失禁を認めず、尿失禁率平均値6.4%、中央値1.5%と開腹術よりも良い成績が得られています。術後3か月で、90%以上の患者さんで尿失禁を認めないようになります。

■退院時尿失禁率(1日尿失禁量/1日尿量)(2010年までの実績)

<<目次に戻る


14:術後入院日数

 

(6)回復が早い

 手術が終わったあとは尿道にカテーテルを留置します。カテーテルを抜去するまでの期間は、開腹術では7日間くらい必要なのに対して、腹腔鏡下手術ではおおよそ5日です。そのため、入院期間も、開腹術が約2週間なのに対して、腹腔鏡下手術では10日間くらいで済みます。

■開腹術と腹腔鏡下摘出術の術後入院日数の比較

15:担当医師

 

町田 二郎(図A 右)

【専門分野】

●泌尿器科腫瘍 ●泌尿器科内視鏡手術
●腎移植 ●神経因性膀胱 ●血液浄化療法

担当医師の詳細はこちら

 

渡邊 紳一郎(図A 左)

【専門分野】

●泌尿器科腫瘍 ●泌尿器科内視鏡手術 ●鏡視下手術
●排尿障害 ●腎不全 ●血液浄化療法 ●腎不全外科(PTX)

担当医師の詳細はこちら

 

【担当医師】渡邊医師(左)町田医師(右)

16:前立腺がんについてのお問い合わせ

 

前立腺がんが気になる方は、下記の案内に問い合わせ・電話・FAX でご相談ください。



※当院に受診をご希望の方で、他院に通院中あるいは入院中の方は、おかかりの主治医、担当医にご相談の上、紹介状をご持参頂き、受診して頂くよう お願い致します。

 

問い合わせ先

済生会熊本病院 医療相談室

TEL 096-351-1022

済生会熊本病院 地域医療連携室

TEL 096-351-8372 FAX 096-351-8505

ホームページからもお問い合わせできます。

お問い合わせフォームはこちらから


PDFダウンロードサービス

 

本内容はPDFファイルでもご覧いただけます。PDFファイルをお使いのパソコンに保存しておけば、インターネットに接続していなくてもパソコンで自由に閲覧できます。また必要な部分だけ印刷することも可能です。

 

PDFファイルをダウンロード

 

PDFファイルをご覧いただくにはAdobe Readerが必要です。Adobe Readerがインストールされていない場合は、下記よりダウンロードした後インストールしてください。
Adobe ReaderをインストールするとPDFファイルがご覧に頂けます。詳しくは、アドビシステムズ株式会社のサイトをご覧ください。
※ご提供するデータは、細心の注意を払って掲載しておりますが、その正確性を完全に保証するものではありません。
※これら各種データをご利用になったことによって、生ずる一切の損害についても、責任を負うものではありません。
※当データの著作権は全て済生会熊本病院に帰属するものです。

Adobe Readerをダウンロード

手術支援ロボット ダヴィンチ

2013年3月より済生会熊本病院は、従来の腹腔鏡手術よりも精密な手術を行うことができるロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術を開始しました。

手術支援ロボット ダヴィンチの詳細はこちら 新しいウィンドウで開きます。

  • 小
  • 中
  • 大
  • オン
  • オフ
  • ヘルプ