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骨盤臓器脱は女性特有の病気で、本来骨盤内にある臓器(子宮、膀胱、直腸など)が本来の位置から下がり、膣からはみ出てしまうものです。 以前は子宮脱、膀胱瘤など下垂する臓器で呼ばれていましたが、機序が同じであることから現在は総じて骨盤臓器脱と呼称されています。
海外の研究によると、成人女性の3人に1人に骨盤臓器脱がみられると報告されています。
骨盤臓器脱の原因は、骨盤内で臓器を支えている骨盤底筋が緩み、臓器が下がってしまうためですが、その緩みの原因には下記のようなものが挙げられます。
そのほか、ぜんそくなど慢性のせきやくしゃみを伴う呼吸器の病気や、長時間の立ち仕事や重い物を持ち上げる力仕事なども、強い腹圧がかかるため、症状を悪化させるリスクとなります。
骨盤臓器脱
※脱出する臓器によって下記のようにも言われます
軽度であれば無症状ですが、症状が進行してくると、股の間に何かが挟まったような感じがしたり、膣から何かピンポン球のようなものが出てきたりと、外陰部の違和感が出てきます。
さらに、排尿困難や頻尿、尿漏れなど排尿関連の症状や、脱出した臓器が下着に擦れることでの出血、痛みによる歩行困難などの症状が伴うこともあります。
問診(ICIQなど)、検尿、残尿検査、MRI、超音波検査、内診、チェーン膀胱造影など
軽症の場合は保存的治療で対応しますが、日常生活に支障がある場合や根治を目指す場合は手術を行います。臓器脱出の程度や症状の重症度、年齢や合併症の有無、性行為の有無など、それぞれの患者さんの生活スタイルや状態に応じて総合的に判断いたします。
膣、尿道、肛門の3カ所を締める訓練を行うことで、尿漏れの改善や臓器が下がる程度が軽くなるなどの効果があります。
臓器が下がってくるのを防ぐ方法として、臓器が外にはみ出ないように押さえる骨盤臓器脱専用の装具があります。サポート下着は普段の下着に重ねて着用し、体の外側から押さえます。一方、ペッサリーというシリコン素材のリングを子宮の出口にはめ込み、固定して、子宮が出てこないようにする方法もあります。いずれも事前に医師への相談が必要です。
長らく行われてきた術式で、子宮を摘出し、その切除部分を骨盤の奥にある靱帯に縫い付け、膣の前後の壁を縫い縮める方法です(膣式子宮全摘術+膣壁形成術)。お腹を切らずに、短時間で行うことができる手術ですが、再発率が高い、性機能の低下といった弱点もあります。
膣からメッシュと呼ばれる網目状の医療用合成線維シートを挿入し、弱った支持組織に置き換えて、臓器脱の修復を行う方法です。お腹を切らずに、短時間で行うことができる手術ですが、痛みや性機能の低下といった弱点もあります。
腹部に1cm程度の小さな穴をあけ、そこから腹腔鏡で挿入したメッシュ素材で膣を包み込んで補強し、それを仙骨に固定することで臓器の飛び出しを解消する方法です。従来の方法よりも手術時間が長い、腹部に創部が残るといった弱点はありますが、膣から行う手術よりも再発率や出血の程度が低い、術後でも性交渉が可能といった点でのメリットがあります。
済生会熊本病院では、腹腔鏡手術の長年の実績を活かし、骨盤臓器脱に対して「腹腔鏡下仙骨膣固定術」を積極的に行っています。身体への負担が少ない手術で、術後の生活の質をより改善させることを目指していますので、骨盤臓器脱でお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
◎腹腔鏡下仙骨膣固定術に関する詳しい記事はこちら>>
※個人によって現れる症状はさまざまです。治療法も、症状や病態によって異なります。 ご自身の症状については、まずかかりつけ医にご相談ください。