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当院でのせん妄に対する取り組みについて

はじめに

せん妄とは、身体的要因や薬剤が誘発した意識障害であり、一般の総合病院入院患者の2~3割に認められると言われています。入院して急にボケた、認知症になったと言われるものは、大抵せん妄です。せん妄は身体の症状の一つであり、認知症や精神病になったのではありません。適切な治療を行えば、多くの患者で症状が改善します。

当院でのせん妄対応

当院では、2017年12月12日よりDelirium Team Approach(DELTA)プログラムを導入しております。これは、国立がん研究センター東病院で開発されたプログラムで、各職種がチームとなって入院中の患者に生じるせん妄の予防、初期対応が出来るようにしたものです。せん妄によって生じる転倒・転落や点滴ルートの自己抜去など医療事故の減少、速やかな対応による患者やその家族の動揺軽減、医療スタッフの対処スキル向上と疲弊軽減、入院期間の短縮、などを目的としています。

DELTAプログラムの導入効果について

国立がん研究センター東病院に於いては、既にいくつかの導入効果が得られております。

Quality of care in hospitalized cancer patients before and after implementation of a systematic prevention program for delirium : the DELTA exploratory trial

方法:

  • 国立がん研究センター東病院に於けるDELTAプログラム導入前(2012年10月~2013年3月)の入院患者4180人と導入後(2013年10月~2014年3月)の入院患者3797人を比較した後ろ向き研究。
  • 結果:

    • ①せん妄の発症率の低下
    • ②転倒や自己抜管などの有害事象の減少
    • ③ベンゾ系薬剤の処方減少
    • ④退院時のADL改善
    • ⑤入院期間短縮
    • (Asao Ogawa et al, Supportive Care in Cancer, 2018)

STEP1 せん妄のリスク評価 ▼クリック

全症例について、主治医が入院時にせん妄のリスク評価を行います。

  • 60歳以上かどうか
  • 脳器質的障害の既往の有無
  • 認知症の有無
  • アルコール多飲の有無
  • せん妄の既往の有無
  • ベンゾジアゼピン系薬剤内服の有無
  • ステロイド使用の有無
  • オピオイド使用の有無
  • 緊急入院

上記について、いずれか1つでも該当すれば、「せん妄ハイリスク症例」として扱います。

STEP2 せん妄症状のチェック ▼クリック

STEP1において、「せん妄のリスクなし」であれば、そのまま経過観察、「せん妄ハイリスク症例」であれば、看護師がせん妄症状のチェックを行います。その際、せん妄アセスメントシートを参考に、急性症状または症状の変動性、注意力欠如、思考の解体、意識レベルの変容などを評価します。

STEP3 せん妄ケア:評価と計画 ▼クリック ( せん妄治療プロトコール 資料あり )

STEP2で1つでも該当すれば、せん妄症状が疑われるとして、せん妄に準じた対応を開始します。「せん妄あり」の場合、看護師は主治医に報告します。「せん妄症状なし」の場合、カルテに「せん妄ハイリスク」と記載します

↓

「せん妄ハイリスク症例」の場合、ベンゾジアゼピン系薬剤を内服していれば、極力減量あるいは中止して他剤に変更します。減量または中止の際は、「ベンゾジアゼピン受容体作動薬を内服されている方へ」のパンフレットを用いて患者に説明を行います。不眠時には、せん妄症例に準じた指示を使用します。

当院で作成した治療プロトコール、不眠時・せん妄時指示などについての留意点 ▼クリック

当院で作成した治療プロトコール、不眠時・せん妄時指示などについての留意点

せん妄への治療的介入研究は数多くあるものの、よくデザインされた二重盲検試験や実証水準の高い系統的レビューは少なく、治療アルゴリズムの作成には至っていないというのが現状です。1999年に初めて米国精神医学会からせん妄の治療ガイドラインが示され、我が国でも2005年に日本総合病院精神医学会からせん妄の治療指針が出され、2006年にはカナダとオーストラリア、2010年には英国からガイドラインが提示されました。しかし、治療の項目は実質的には抗精神病薬の短期間使用が控えめに推奨されているに留まり、現場の医療者のニーズとは程遠い感が否めません。  このような状況を踏まえ、目の前の患者様に如何に対応するかと悩んだ揚げ句、種々の文献を参考にして当院独自に作成したものです。このため、エビデンスレベルとして確立されていない方法であることは承知の上で、症例報告として提示された手法で妥当性が高いと判断したものは、積極的に取り入れております。  まだまだ不十分で未完成なプロトコールと存じます。くれぐれも、その点にご留意頂き、参考にされますよう、お願い申し上げます。参考にされる際は、当院の許可なく使用して頂いて構いません。

<参考:明智龍男 : せん妄の向精神薬による対処療法と処方計画. 精神科治療学, 28(8): 1041-1047, 2013.>

今後の継続フォローのお願い

当院で入院加療を行った患者様の継続加療をお引き受け下さる医療機関の皆様方におかれましては、心より御礼申し上げます。 当院入院中にせん妄発症した場合、せん妄ハイリスク症例にてせん妄予防対策が施された場合、あるいは退院時に向精神薬を内服されている場合など、そのような患者様の今後の対応につきましては大変恐縮ですが、お願いがございます。 当院では、せん妄に対して、上記対応を心掛けております。当院よりご紹介した患者様につきましては、せん妄の直接原因となり得るベンゾジアゼピン系薬剤の今後のご使用につきましては、くれぐれもご注意お願い申し上げます。また、抗精神病薬の調整方法などは当院での治療プロトコールをご参照頂けますと幸いです。当院で使用している向精神薬の使用意図のご理解と、今後の継続フォローのほど何卒宜しくお願い申し上げます。 せん妄に対する取り組みについて意思統一がなされ、患者様、ご家族様、医療関係者、など関わる全ての者に幸あらんことを願って止みません。

文責:心療内科・精神科 北 英二郎

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