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診療の最前線

- 胸部大動脈瘤の最新治療 - 弓部3分枝バイパスの手技を伴うステントグラフト内挿術

胸部大動脈瘤の中でも大動脈弓部(頭や上肢に行く血管が分岐する部分)にあるものを弓部大動脈瘤と言います。
 弓部大動脈瘤の治療は、通常、動脈瘤の部分を人工血管に取り替える手術が一般的です。この手術方法は全身に与える負担が非常に大きいため、より負担の少ない治療を行うために、当院では上行大動脈から腕頭動脈(右上肢と右頸動脈への血管)、左頸動脈、左鎖骨下動脈(左上肢への血管)の3分枝にバイパスを行った後にステントグラフト内挿術を行う手術を行っています 。

胸部大動脈瘤とは

胸部大動脈瘤は、主に動脈硬化により動脈の壁が伸展され、大動脈が拡大していく病気です。大動脈径が5cmを越えたり、大動脈壁が嚢状(片側だけいびつに拡大する)になったりすると破裂の可能性がでてきます。胸部大動脈瘤が破裂すると出血性ショックとなり、ほとんどが突然死してしまいます。

弓部大動脈瘤

動脈瘤が大動脈弓部(頭や上肢に行く血管が分岐する部分)にあるものを弓部大動脈瘤と言います。(図1)
 弓部大動脈瘤の治療は、通常、体外循環・脳分離循環(人工心肺装置にて血液を灌流させる)を用いて、一時全身循環停止、心停止、低体温の状態で動脈瘤の部分を人工血管に取り替える手術が一般的です。しかし、この手術方法は全身に与える負担が非常に大きく、体力のない患者さんでは手術後に全身の筋力低下で寝たきりになったり、免疫力低下による感染症になって長期入院が必要になったりすることがしばしば起こりえます。

日本ではより体に負担の少ない治療として、2008年から胸部大動脈瘤に対するステントグラフト(注:1)の使用が保険医療として認められるようになり、当院でも年々手術件数が増加しています。ステントグラフト内挿術は主に股の部分の大腿動脈からステントグラフトを挿入します。しかし動脈瘤前後の正常の動脈の部分でステントグラフトを密着させる必要があり、弓部大動脈瘤は頭や上肢に行く血管が分岐しているため(ステントグラフトで重要な分枝を閉塞させてしまう)、これまで適応となっていませんでした。
弓部大動脈瘤に対するステントグラフト治療を行うために、当院では上行大動脈から腕頭動脈(右上肢と右頸動脈への血管)、左頸動脈、左鎖骨下動脈(左上肢への血管)の3分枝にバイパスを行った後にステントグラフト内挿術を行う手技を行っています。(図2)
この治療により、ステントで重要な動脈を閉塞させることなく、動脈瘤の治療が可能になります。
注1…ステントグラフトとは、人工血管の内側にステントいわれるバネ状の金属を取り付けたものです。細いカテーテルの中に収納したものを使用します。

治療の概要

治療のながれ

1. 胸部正中切開にて上行~弓部弓部大動脈、弓部3分枝を露出します。

2. 大腿動脈から送血、右房から脱血し体外循環を確立します。(上行大動脈が薄く、吻合する際に裂けて解離を起こす可能性がある場合に行います。)

3. 上行大動脈に枝付きのバイパス用人工血管を吻合します。各人工血管の枝を3分枝にバイパスしていきます。バイパスし終わった分枝の大動脈分岐側は縫い閉じます。(体外循環を使用した場合は離脱し回路をはずします。)

4.ステントグラフトを大腿動脈から、もしくはバイパス用の人工血管の枝から挿入・留置します。

5.大動脈の造影を行い、動脈瘤が描出されないことを確認します。

6.胸を閉じます。

治療後

手術後は集中治療室管理となり、その後の入院期間は10日前後です。(通常の弓部大動脈人工血管置換術では約2週間の当院での入院期間の後に、リハビリのための他院での入院が必要となることが多い) 退院後、外来では定期的(経過良好なら1年毎)に造影CTを行い、動脈瘤内へ血液の漏れがないか、ステントグラフトの形が変わっていないか確認していきます。 バイパスやステントグラフト留置により、特別に開始する内服薬はありません(血栓予防のためのアスピリンやワーファリンなど)。また、生活上の制限もありません。

適用

ステントグラフト留置可能な正常径の上行大動脈があることが原則です。また、弓部3分枝への吻合を行う場合は血流遮断して行うため、頸動脈や頭蓋内の血管に狭窄や閉塞があると手術中の脳梗塞のリスクが高くなります。  ステントグラフト治療が開始されてから数年が経ちましたが、長期成績がまだ明確になっていませんので、通常の体力のある患者は、これまでどおりの人工血管置換術を選択します。
 

高齢者、体力の低下した患者さん、多くの合併症を有する患者さんに対する治療の選択肢が増えることになり、より良い医療が提供できるようになりました


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