ページの本文へ メインメニューへ フッターへ

  1. トップ>
  2. 診療の最前線>
  3. 記事詳細

ページの本文です。

診療の最前線

進化する腹腔鏡下肝切除 ― 肝臓外科手術の最前線 ―

肝臓は右上腹部に位置する最大の腹腔内臓器であり、主な役割は、栄養分などを取り込んで体に必要な成分に変えたり、体内でつくられたり体外から摂取された有害物質の解毒・排出をすることです。肺や心臓などと同じように肋骨で覆われ、周囲の臓器や横隔膜、腹壁と複数の間膜で固定されています。肝臓にできた悪性腫瘍に対する治療法(肝がんの治療)において、肝機能が良好な方は肝切除が標準治療(第一選択)となります。

肝臓がんの手術:腹腔鏡下肝切除術の詳細

肝臓を授動して手術野までたぐり寄せて行う開腹手術と違って、腹腔鏡下肝切除では自らが肝臓へ近づくことで腹壁破壊(傷)や肝授動が必要最低限で済みます。肝授動が必要最低限で済むことは、術後の胸水や腹水貯留の低減にもつながります。

肝臓手術の鍵となる出血コントロールも、腹腔鏡手術に特有の気腹圧と内視鏡手術用止血器具の性能向上、腹腔鏡用の血管遮断鉗子を用いた間欠的肝流入血流遮断法(プリングル法)の併用により肝離断中も安定した出血コントロールが得られるようになり、腹腔鏡手術のスコープによる拡大視効果とも相まって、良好な視野での腹腔鏡下肝切除が可能となっています(2)。

腹腔鏡下肝切除における内視鏡による拡大視効果

腹腔鏡下肝切除術のメリットとしては「創(きず)が小さい」「術後の痛みが少ない」「術後の回復が早い」という点で患者さんに負担の少ない手術と言えます。

一方でデメリットとしては、開腹に比べると手術時間がかかることがあります。また、腹腔内の癒着が高度な場合や出血傾向が強い場合には腹腔鏡で行えない場合もあります。

実際、肝切除は開腹手術でも困難な手術であり、腹腔鏡ではさらに難易度が高くなります。そのため、胃や大腸の手術では腹腔鏡手術が一般的に行われるようになってきている現在でも肝臓領域では腫瘍の場所、大きさによって行える場合と行えない場合があります。

それらを踏まえて安全に行えると判断した場合、患者さんのご希望も踏まえて腹腔鏡手術ができるかどうかを検討します。癒着の程度や出血傾向の程度によっては、完全に腹腔鏡下のみで行う手術以外に、手を入れて行う用手補助手術(HALS)や肝臓の切離のみ小開腹下で行う腹腔鏡補助下手術(ハイブリッド手術)などがあります。

なお、腹腔鏡手術で開始しても、術中所見で安全性や根治性が十分確保できない場合は、開腹手術へ移行します。 腹腔鏡下肝部分切除や外側区域切除については、最近は新しい腹腔鏡下肝切除パスを適応し早期飲水・内服開始(術当日夕方より可能)、早期離床(手術翌日)、早期食事開始(手術翌日)、早期退院(術後4-5日)を実現しています(図3)。

腹腔鏡下肝切除 術後在院日数の推移

2016年4月より亜区域切除、1区域~3区域切除といった高難度肝切除(血行再建や胆道再建を伴うものは含まない)に対する腹腔鏡下肝切除が保険適応となり、当院でも2017年1月から導入し全例で合併症なく良好に経過しています。

図4 腹腔鏡下後区域切除術のポート設定および術後創

がんの治療のために数週間入院し、術後も長期の自宅療養を要することは社会的に難しい方もおられると考えられます。傷が小さい腹腔鏡下肝切除は、早期の日常生活や仕事への復帰をサポートできる選択肢の一つと考えられます。
不明な点がありましたら、ご相談ください。
文責:外科センター  林 洋光 ( はやし ひろみつ )

外科センターの情報/実績はこちら 外科センターのページ

診療の最前線 トップへ戻る


ページの先頭へ