動脈管開存症とは、心臓から肺へ血液を送る肺動脈と心臓から全身へ血液を送る大動脈が、細い動脈管によってつながっている疾患です。動脈管はもともと、胎児の状態では開いており、出生後自然に閉じるのが一般的です。
ところが、動脈管が生後自然に閉鎖せずに肺動脈と大動脈がつながったままの状態でいると、血圧が高い大動脈から肺動脈の方に血液が流れ込むようになってしまいます。
その結果、肺動脈に流れる血液量(肺血流量)は増加して、心不全や心臓の感染症になり易くなります。
動脈管開存症に対する治療には、患者さまの年齢や動脈管の形と大きさによって、
現在下記の5つの治療法から治療が選択されます。
一般的に、成人の患者さんの場合動脈硬化が起こって、硬くなっている場合が多く、カテーテル 治療の方が安全であると言われています。治療法の選択においては、一番小さな直径が2mm以下の動脈管では、コイル塞栓術が選択されることが多く、直径2mm以上の動脈管の場合は、 アンプラッツァー動脈管開存閉鎖システムによる閉鎖術か外科治療の適応となります。ただし、心雑音が聴取できないような非常に小さな動脈管は閉鎖する必要がありません。
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治療は心臓カテーテル室で行われます。血管造影置で心臓を観察し、心電図モニターで心拍を監視します。
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鼠径部(太ももの付け根)から大動脈を穿刺し、シースと呼ばれるカテーテルを挿入できる管を入れます。(心臓カテーテル検査で) 大動脈の造影を行い、動脈の形を映し出し、動脈管のサイズを測定します。
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測定結果をもとに適切なサイズの閉鎖栓を選択し、デリバリーケーブル(閉鎖栓取り付け機能を有する専用の細いワイヤー)に取り付け、デリバリ ーシース(閉鎖栓を運搬する細長いカテーテル)に挿入して動脈管まで運び、閉鎖します。
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閉鎖栓の位置が適切であり閉鎖栓が確実に動脈管に留置できたと判断されたら、閉鎖栓をデリバリーケーブルから離脱します。
閉鎖栓は、ニッケル・チタン合金(ニチノール:55% ニッケル 、45%チタン)製の細いワ イヤーをメッシュ状に編みこんだ 円盤のような構造となっ ています。ニッケル・チタン合金 は形状記憶合金・超弾性 合金と呼ばれる金属で、冠動脈 ステント、血管フィルター をはじめ様々な医療機器の材料 として認知されています。 またメガネフレームや携帯電話 のアンテナなど、日常生活でも身近な金属です。
デリバリーシステムは、閉鎖栓を取り付ける機能のあるデリバリーケーブル(内径約2mmの細い金属製のワイヤー)とデリバリーシースと呼ばれる細長いカテーテルがセットになっており、オクルーダー(閉鎖栓)を体内へ安全に運搬できるように設計されています。
アンプラッツァー動脈管開存閉鎖システムは、閉鎖栓を経皮的に胸部を切開することなくカテーテルを用いて動脈管を閉鎖するための医療機器です。
このシステムを用いた動脈管開存の閉鎖治療は、一般的に下記の患者さんが対象となります。
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心エコー+やCTなどの画像検査により動脈管開存症と判断された方
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生後6ヶ月以上、体重6kg以上であること (※当院では体重40kg以下の小児の治療は行っておりません)
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動脈管の最小径が2mm以上12mm以下であること
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大動脈縮窄症など動脈管開存以外の外科治療を必要としない方
治療は、カテーテル治療専門医(主に循環器内科医)、心臓血管外科医、麻酔科医、心臓画像診断専門医やその他コメディカル、事務職員などが、それぞれの専門分野の知識や技術を持ち寄って、患者さんにとって最適と思われる治療法を選択し、治療を行う事で初めて可能になります。治療を担うグループを「ハートチーム」と呼びます。当院でも総勢30名からなる専門のハートチーム体制を整えています。
当院では、2015年4月より動脈管開存症に対するカテーテル治療であるADO治療の施設認定を取得しました。(※)
同じカテーテル治療である心房中隔欠損症に対するASO治療に比べ、手技的な難度もより低く、また患者さんの身体的な負担もほとんど無く、安心して治療を受けて頂くことが可能です。「動脈管開存症」は、心不全の危険性のみならず、感染症の恐れもあるため、早期の治療が望まれます。お気軽にお問い合わせ下さい。
(※治療プログラム受講期間では、外部の指導医師と共に治療を行います)
治療をしないとどうなりますか?
運動時に呼吸困難や疲れやすくなったり、また将来的に、心不全や感染症にかかりやすくなったりします。また、虫歯治療などをきっかけに、細菌性心内膜炎を引き起こす恐れもあります。
カテーテル治療のメリットを教えて欲しい。
入院期間が手術と比較し短く、退院後直ちに社会復帰できます。そけい部に5ミリ程度の創が残りますが、胸の部分に創はできません。また、全身への負担が外科的手術と比較して少ないと言えます。
治療の相談をしたい場合はどうしたらよいですか?
本治療に関するご質問・お問い合わせにつきましては、以下の通りとなります。
患者さんから:当院 医療福祉相談室
医療機関の方:地域医療連携室
お問い合わせの内容によっては当日お答えできない場合もございますので、何卒ご了承願います。
ご連絡先:医療福祉相談室(患者さん)、地域医療連携室(医療機関の方)
患者さんを紹介したい場合はどうしたらよいですか?
地域医療連携室までご連絡ください、診療科担当医師へ伝達いたします。
紹介手順についてはこちらのページをご覧ください。
ご連絡先:地域医療連携室(医療機関の方)
入院期間についておしえて下さい。
一般的に入院から退院まで約4日です。術前1日、術日、術後約2日で退院の流れです。
ただし、症状等により入院期間には個人差があります。
国内での認定施設(PDA認定施設)はどの位で、
また過去の国内実績について教えて下さい。
2015年6月現在では、全国46施設、九州では当院のほか福岡に認定施設がございます。
日本国内での保険適用は2009年7月で、以来5年あまりで1000例の患者さんが本治療を受けています。
(2014年12月31日時点)
治療費はどれくらいかかりますか?
例)ADO治療 約4日の入院の場合(健康保険を利用。入院期間が月をまたがない場合。)
年齢 |
高額療養費制度を利用しない場合 |
高額療養費制度を利用する場合 |
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70歳未満 | 約24万円(3割負担) |
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70歳以上 | 57,600円(所得により異なる場合があります) | 57,600円(所得により異なる場合があります) |
※費用負担は各制度の変更により、上記と異なる場合がございます。高額療養費制度についてはこちら(食事代、個室代は別途必要になります)
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