introduction
概要・治療
卵円孔開存に対する
カテーテル治療
脳梗塞の原因となる可能性のある心臓の卵円孔開存(Patent Foramen Ovale、以下PFO)は、
健康な成人のおよそ4人に1人に存在しているといわれています。
卵円孔開存(PFO)は通常は症状もなく、治療の必要もないとされていますが、運動や咳、排便などで静脈圧が高まると、
右心房から左心房に血液が直接流れ込み、危険な血栓が卵円孔を通過し脳に達することで
脳梗塞や一過性脳虚血発作の原因になりうると考えられています。
治療について
「AMPLATZER™ PFOオクルーダー」は、卵円孔開存(PFO)が関与したと考えられる脳梗塞の再発予防として、カテーテルを用いて心臓内に留置され、卵円孔開存(PFO)を閉鎖することで、脳梗塞の再発を予防する治療です。形状記憶合金のワイヤーを編み込んだ自己展開式の閉鎖器具であり、左心房側と右心房側の2枚のディスクで構成されています。
flow
治療の流れ
鼠径部(太ももの付け根)の大静脈からカテーテルを通して、 AMPLATZER™ PFOオクルーダーを心臓に挿入します。
卵円孔開存部を通過させて左心房側で一方のディスクを展開します。
続いてデリバリーカテーテルを右心房側に移動させて、もう一方のディスクを展開することにより卵円孔開存(PFO)を閉鎖する治療法です。
治療動画
indication
対象(適応)者
卵円孔開存(PFO)が関連すると思われる
潜因性脳梗塞既往患者さん
organization for treatment
治療体制
ブレインハートチームによる治療
この治療はカテーテル治療専門医(循環器内科医)、エコー専門医、麻酔科医といった
これまでカテーテル治療に携わってきた医師だけでなく、脳神経内科医もチームに参加しています。
当院では、心原性脳塞栓症を予防するためこれまでのハートチームに脳神経内科医を加えた
「ブレインハートチーム」というチームで治療にあたっています。
doctor
医師紹介
循環器内科上席部長
坂本 知浩Tomohiro Sakamoto
脳梗塞再発予防治療を受けておられる
患者さんの福音となる治療法です
脳梗塞は通常、頭部に向かう動脈に異常が起こり、その血管の支配領域が酸素不足に陥り、脳の組織に不可逆的な(元に戻らない)ダメージが生じることで起こる疾患です。しかしながら一部の脳梗塞は静脈にできた血栓が、動脈に紛れ込んで塞栓することにより発症することが知られています。変わり者の脳梗塞ということで、「奇異性脳塞栓症」という名前が付けられています。
この奇異性脳塞栓症の原因の一つとして知られている心臓の先天異常に「卵円孔開存(PFO)」があります。お母さんのお腹の中にいた時は必要だった心臓の右心房と左心房を隔てる壁(心房中隔)に存在する隙間(卵円孔)が、出生後も残存している状態で、実に健康成人の4人に1人に存在すると言われています。最も多い先天性心疾患と言っても良いかもしれません。
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特殊な検査をしないと卵円孔開存(PFO)の存在は掴めないので、ひょっとしたらこの文章を読んでいらっしゃる皆様、また私にも、この「ココロのスキマ」が存在しているかもしれません。
このように卵円孔開存(PFO)があっても、何事もなく生涯を終えられる方が殆どですが、不幸にして奇異性脳塞栓症を発症された場合(しばしば10代や20代といった若年者に起こる)、長い年月、血栓ができるのを予防するワーファリンというお薬を服用する必要があります。食事制限が必要であったり、定期的に採血が必要であったりと、この疾患が発症する年齢を考えると、かなりの負担を患者さんに強いる可能性があります。
PFO閉鎖デバイスは、この卵円孔開存(PFO)をカテーテルで閉じることができる、心臓内に留置する器具です。患者さんを脳梗塞再発の恐怖から解放し、お薬を長期間服用する負担を軽減することができる画期的な医療機器です。当院では、このPFO閉鎖デバイスを九州で最初に導入することができました。脳梗塞再発予防治療を受けておられる県内外の患者さんの福音となると考えております。
我々は、この新しい治療法を安全かつ確実に皆様にお届けすべく、上記の二つの科で「ブレインハートチーム」を作って、診療を行っております。
お気軽にご相談下さい。
脳神経内科部長
米原 敏郎Toshiro Yonehara
奇異性脳塞栓症の
再発高リスク患者に吉報
卵円孔開存(PFO)が原因となっている脳梗塞を奇異性脳塞栓症といいます。
奇異性脳塞栓症は脳梗塞全体の中では珍しいものですが、特に若い人に発症する脳梗塞においては最も重要な原因のひとつです。
奇異性脳塞栓症の確実な予防法は、これまでは開胸手術によって卵円孔の閉鎖をすることでした。開胸手術ができない、あるいは希望されないが再発のリスクが高い患者さんには、抗凝固療法(ワルファリンなど)を長期に続けることが必要でした。
今回この卵円孔閉鎖がカテーテル治療でできるようになったことは、奇異性脳塞栓症の再発におびえ、開胸手術には不安を覚える若い患者さんにとって良い知らせと言えるでしょう。
Q&A
よくあるご質問
- どのような患者さんが対象となりますか?
卵円孔開存(PFO)が関連すると思われる脳梗塞発症の患者さんが対象となります。原則として60歳未満の方が対象です。
- 麻酔について教えてください。
麻酔については、局所麻酔で治療を実施します。
- 治療後も抗血栓療法が必要ですか?
抗凝固療法については中止が可能となります。また一定期間抗血小板剤の内服が必要です。
- 入院期間はどれくらいですか?
一般的に入院から退院まで約4日です。術前1日、術日、術後約2日で退院の流れです。
ただし、症状等により入院期間には個人差があります。
- 治療費はどれくらいかかりますか?
この治療は健康保険の適用となる治療です。
さらに、高額療養費制度※をご利用することにより費用の負担を少なくすることが可能です。例)卵円孔開存(PFO)治療4日の入院の場合(健康保険を利用。入院期間が月をまたがない場合。)
- 70歳未満
- 高額療養費制度を利用しない場合
- 約51万円(3割負担)
- 高額療養費制度※を使用される場合
-
年収約1,160万円〜の方 約26万円 年収約770〜約1,160万円の方 約18万円 年収約370〜約770万円の方 約10万円 〜年収約370万円の方 57,600円 住民税非課税の方 35,400円
- 70歳以上
- 高額療養費制度を利用しない場合
- 57,600円(所得により異なる場合があります)
- 高額療養費制度※を使用される場合
- 57,600円
制度の変更により、詳細は変更する場合がございます。高額療養費制度についてはこちら(食事代、個室代等は別途必要になります)