最近は脳ドックなどの普及で、未破裂脳動脈瘤が偶然見つかることが多くなってきました。当院にも日々多くの患者さんが受診されます。例えそれが小さく、すぐに治療が必要でないものだとしても、患者さんはさぞ不安になることでしょう。「経過観察の方針になったが、何かできることはないか」、「どういったことに気をつければ良いか」、今回はよく言われている生活習慣との関連について少し詳しくお話ししたいと思います。

未破裂脳動脈瘤の増大・破裂に影響する生活習慣(生活習慣病)として、①高血圧、②喫煙、③飲酒が挙げられます。実は世界的にみても脳動脈瘤破裂(くも膜下出血)の発症率は減少傾向にあります。高齢化が進んでいるにも関わらず減少傾向にあるのは、生活習慣病を含めた内科治療の進歩、生活習慣の改善意識(健康志向)などが影響していると思います。
実際、高血圧(収縮期血圧の平均値)は年々低下傾向にあります。さらに脳動脈瘤との関係を解析すると、収縮期血圧が1mmHg下がることで破裂率が7%低下すると報告されています。また喫煙率も低下傾向にあり、喫煙率が1%下がると破裂率が2.4%低下するようです。
飲酒も破裂率に影響しています。特に1日あたりアルコールを30g以上摂取される方は破裂リスクが有意に高くなります。また1日あたりのアルコール摂取量が10g増える毎に、破裂リスクが12%増加するようです。(アルコール10gとは:ビール 250ml、日本酒 0.5合、ワイン グラス1杯、お店で飲む場合どの種類でも約1杯)。
ちなみにコーヒーやお茶との関係を調べた研究もありますが、今のところ脳動脈瘤への影響は証明されていません。

ご存知のとおり、このような悪い生活習慣は脳動脈瘤だけでなく他の病気にも悪影響を及ぼします。未破裂脳動脈瘤が見つかった方、そうでない方も今一度ご自身の生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。私自身も晩酌を少し減らそうと思います。

脳神経外科 水上 秀紀