カテーテル・低侵襲血管内治療センター「CLIEVTC」

血管内治療で広がる医療の可能性

患者さんにより優しく⾼度な治療の提供を目指して

About

血管内治療とは、血管造影装置でリアルタイムに血管を見ながら、
カテーテルという特殊な細い管状の医療器具を血管内に挿入して行う治療法です。

CTの画像などと組み合わせて正確な位置にカテーテルを挿入できること、
体の奥にある臓器や血管の治療ができること、
傷跡が小さく治療期間や入院期間の短縮が可能などの特長があります。

医療技術の進歩に伴い、患者さんの体への負担が少ない「低侵襲治療」として、
詰まった血管を拡げたり、出血した血管を詰めて止血したり、
行える治療は多岐にわたっています。

カテーテル・低侵襲血管内治療センター (Catheter Less Invasive EVT Center; CLIEVTC):通称クリークは、
この血管内治療を行う各診療科の医師が集い、
診療科・医師が持っている技術を共有することで、
さらに質の高い治療を提供することを目的として創設されました。

当センターでは脳から下肢までの全身の血管内治療を実施し、
患者さんにより低侵襲な治療を提供することをその使命としています。

Endovascular Treatment

  • STEP1
    STEP1 イメージ

    皮膚の上から局所麻酔を用いて針を刺します(穿刺)。

  • STEP2
    STEP2 イメージ

    レントゲン(血管造影装置)の画像を確認しながら、治療器具を病変部まで運ぶために必要なガイドワイヤーを血管内に挿入します。

  • STEP3
    STEP3 イメージ

    適宜、造影剤を用いながら治療器具をカテーテルを用いて患部に届けます。

  • STEP4
    STEP4 イメージ

    それぞれの治療部位に応じた治療器具で病変を治療します(例:ステントを拡げて血栓を除去)。

Features

  • 血管造影装置でリアルタイムに血管を見ながら、正確な位置へのカテーテル挿入・治療が可能
  • カテーテルを用いることで、これまで治療困難であった体の奥にある臓器や血管の治療が可能
  • 傷跡が小さく治療期間や入院期間の短縮が可能

Target Diseases

医療技術の進歩に伴い対象となる疾患は増えており、カテーテル・低侵襲血管内治療センター(CLIEVTC)では、
脳から下肢までの全身の血管内治療を実施しています。

代表的な対応例

人体図
1

脳血管-1

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瘤ができた脳⾎管(未破裂脳動脈瘤)にコイルを留置してくも膜下出⾎を防ぐ。

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脳血管-2

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ステントを血管の中で拡げ、脳梗塞で詰まった血栓を除去し、血管を再開通させる。

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脳血管-3

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プラークが沈着し、狭くなった頚動脈にステントを留置し、⾎管を拡張することで脳梗塞を防ぐ。

1

脳血管-4

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カテーテルを誘導し、動静脈奇形を形成している⾎管内腔そのものを閉塞させることで、将来の出⾎のリスクを低減させる。

  • 脳動静脈奇形の場合
2

肺動脈

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慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対し、バルーンを用いて肺血管を拡げ、肺の血液の流れを改善させる。

3

大動脈

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⼤動脈にできた瘤に対して、⼈⼯⾎管(ステントグラフト)を留置し、動脈瘤破裂を予防する。

4

肝動脈

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がんに栄養を送っている⾎管を詰めたり、抗がん剤を注⼊することでがんを死滅させる。

  • 肝臓がんの場合
5

腹部血管

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腹部血管にできた瘤にコイルを留置して出血を防ぐ。

6

腎動脈

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腎動脈の狭窄に対して、血管の拡張とステント留置を行い、血管を拡張する。

7

下大静脈

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足から心臓に向かう下大静脈にフィルターを留置し、血栓が肺へ流れておこる肺塞栓症を起こさないよう予防的に治療する。

8

下肢動脈

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詰まったり、狭くなった下肢の血管をバルーンやステントで拡げて再開通する。

9

緊急止血

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事故による出⾎などに対し、出⾎部位にカテーテルをすすめ⾎管を塞ぐための物質を注⼊する/コイルを留置するなどして出⾎を⽌める。

Types of Treatment

領域診療内容
脳血管脳動脈瘤に対するコイル塞栓術、脳梗塞に対する血栓回収術、内頚動脈狭窄症に対する頚動脈ステント留置術
大動脈大動脈に対するステントグラフト術
肺動脈慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)
腹部血管腹部血管疾患に対する血管内治療(腹腔内動脈に対する塞栓術、肝血管内治療など)
下大静脈下大静脈のフィルター治療・抜去術
透析用シャント血管透析の内シャントに対するPTA
末梢動脈鎖骨下動脈狭窄症に対する経皮的血管形成術、上腸間膜動脈狭窄・閉塞症に対する経皮的血管形成術、腎動脈狭窄症に対する経皮的血管形成術
下肢動脈下肢の動脈閉塞に対する経皮的下肢動脈形成術(EVT)
腸骨静脈・下肢静脈深部静脈血栓症に対する経皮的血栓溶解術・経皮的血管形成術
その他肺動脈奇形、動静脈奇形(頭部、腹部含めて)などの血管奇形に対する治療、腫瘍性病変に対する塞栓術、緊急止血、経皮的血管内異物除去術

Organization for Treatment

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専門分野の医師が集い、知識・治療技術を共有

センターには心臓血管外科、循環器内科、脳神経外科、脳神経内科、消化器内科、救急科、腎臓内科、放射線科といった専門分野の医師が所属しています。

カンファレンスやお互いの科の症例への参加など、組織横断的な活動を通して知識・技術を共有することで、病院としてより質の高い血管内治療を提供できる体制を構築しています。

充実した設備で治療を実施

当院には血管内治療を行う血管造影室が6室あります。そのうち2室は手術台と心・脳血管X線撮影装置を組み合わせた ハイブリッド手術室で、手術室と同等の空気清浄度の環境下で、カテーテルによる血管内治療が可能です。

知識・技術に加えて充実した設備を整えることで患者さんに安心して治療を受けていただける環境づくりを目指しています。

Outpatient Consultation

当院では、カテーテル・低侵襲血管内治療を希望される方へ、
安心して診療を受けていただくために、血管内治療担当医による専用の外来を設けています。

カテーテル・低侵襲血管内治療外来

心臓血管外科

診療日:

腎臓内科

診療日:

脳神経外科

診療日:

脳神経内科

診療日:

消化器内科

診療日:

Message

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院長 中尾 浩一

低侵襲治療の価値を極める

済生会熊本病院の基本方針のひとつが「高度医療」の実践。たとえ難易度の高い治療であっても、確かな技術で安全に実施できるよう、私たちは日々研鑽を積み重ねています。そして今、「高度医療」のもう一つのポイントは「低侵襲」であること。からだに対してのダメージが少ないことは、早期回復と生活の質の改善に繋がります。それを実現したのが、この四半世紀に飛躍的な進歩を遂げた「カテーテル(細い管)」を用いた治療です。

今、心臓を養う冠動脈はもとより、大動脈を経て、脳、肺、消化器、腎臓、下肢に至るまで、全身のほとんどの血管がカテーテル治療の対象となっています。この急速な進歩の背景には高性能な放射線透視装置の開発があります。この度、私たちは、私たちの持つ医療資源を最大限に活用し、血管内治療 (endovascular treatment; EVT)をさらに進めるべく、カテーテル治療を得意とする各臓器の専門医をつなぐ、カテーテル・低侵襲血管内治療センター (Catheter Less Invasive EVT Center; CLIEVTC) を創設しました。

この新たなチームで互いの技術をさらに高めあい、治療の質と安全の向上に努めて参りたいと考えています。

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カテーテル・低侵襲血管内治療センター長 坂本 知浩

「CLIEVTC」始動!

最初の東京オリンピックが開催された1964年、米国オレゴン州で放射線科医のCharles T. Dotterが世界で初めて、足の動脈を拡げる治療をカテーテルを使って経皮的に行いました。治療を受けた82歳の女性は、勧められていた下肢の切断を免れ、痛みも消失しました。

この血管内治療 (EVT; endovascular treatment)は、Dotterの時代のすりこぎ棒状のカテーテルを挿入するだけの拡張 (Dotter効果と名付けられている) から、現在ではバルーン、ステント、レーザーなど様々な新しい技術を用い、全身のあらゆる血管の狭窄や閉塞、動脈瘤や出血に対し、メスを使わずに経皮的に治療が行われるようになりました。

これまで当院では複数の診療科が個別にこれらの治療を行って参りましたが、この度、各科の治療のノウハウを共有し患者さんにより優しく高度な治療を提供すべく、新たにカテーテル・低侵襲血管内治療センター (Catheter Less Invasive EVT Center; CLIEVTC) が創設されました。クリークと呼んで下さい。「仲間」と言う意味の英単語cliqueにちなみます。どうぞ宜しくお願いします。

二つのハイブリッド手術室を含む院内に6室あるカテーテル室に設置された最新の血管造影装置を駆使し、高度な治療テクニックを有する専門医の仲間たちが協働して治療を担当します。ご期待下さい。

Q&A

カテーテル・低侵襲血管内治療センター(CLIEVTC)で治療を受けるためには、どうすればよいですか?

治療を希望される場合は、専門外来を受診ください。受診にあたっては紹介状が必要となりますので、まずはかかりつけの先生にご相談頂ければと思います。

血管内治療に関するご質問については、医療福祉相談室・地域医療連携室で受け付けておりますので、不明な点などあればこちらの窓口をご利用ください。尚、内容によっては当日お答えできない場合もございますので、何卒ご了承願います。

入院期間について教えてください。

脳動脈瘤では3~5日、下肢動脈の治療では2~3日、大動脈瘤は胸部・腹部いずれも8~9日などです。例えば大動脈瘤治療に関しては、開胸の場合の入院期間(15~18日)に比べて、低侵襲のため入院期間が短くなります。

カテーテル・低侵襲血管内治療センター(CLIEVTC)で治療を受けるメリットについて教えてください。

当センターには、複数の診療領域の血管内治療専門医が所属しており、それぞれの知識・技術を共有することで、病院としてより質の高い血管内治療を提供できる体制を構築しています。

脳から下肢まで全身の血管内治療が可能ですので、治療をお考えの場合は当センターまでご相談ください

血管内治療の対象について教えてください。

詳細は対応疾患をご確認ください。血管内治療の適応かどうかについては、当院を受診いただき、患者さんの状態を診せていただき、方針を決定します。

費用はどれくらいかかりますか?

血管内治療はほとんとが保険適用となります。年齢などにより患者さんの負担額が異なりますので、詳細はお問い合わせください。

  • 医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関の窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」があります。制度についてはこちらをご覧ください。(食事代、個室代は別途必要になります)