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済生会熊本病院

未破裂脳動脈瘤とは

再生する

「未破裂脳動脈瘤」を理解して頂くためには、「くも膜下出血」「脳動脈瘤」「未破裂脳動脈瘤」という言葉を、それぞれ理解して頂く必要があります。

「未破裂脳動脈瘤」とは「くも膜下出血」の最大の原因となるものです。つまり、「未破裂脳動脈瘤」が破裂を来すと、「くも膜下出血」になります。「くも膜下出血」は、重度の脳障害を遺したり、死に至る可能性が高い病気です。「脳」と「くも膜」の間の「くも膜下腔」に出血が広がる状態が「くも膜下出血」と呼ばれます。「くも膜下腔」には、脳を栄養するための大きな脳血管(脳動脈)が走行しています。 この脳動脈に「脳動脈瘤」という膨らみが出来て、破裂することにより「くも膜下出血」が発症します。

「脳動脈瘤」が破裂を起こす前に発見された状態を「未破裂脳動脈瘤」と呼びます。めまいや頭痛などの症状に対する検査や、脳ドック検査の一環で受けられたMRI検査で「脳動脈瘤」が未破裂の状態で発見されるケースが多くなってきています。

未破裂脳動脈瘤の診断について

「未破裂脳動脈瘤」があると診断された方達は、大きな不安を毎日感じながら生活することを強いられ、日々の生活の質も低下する可能性が高くなります。強い不安から、うつ状態になられる方もおられます。
「破裂する可能性は高いのか?」「今、治療を受けないといけないのか?」「治療はどんな方法なのか?」「治療の合併症はあるのか?」「手術以外の治療法はないのか?」「元の生活に戻れるのか?」。「未破裂脳動脈瘤」と診断された後は、こうした様々な疑問が生じるのが当然です。

しかし、一方で「未破裂脳動脈瘤」と診断を受けても、その後の精密検査で脳動脈瘤が発見されない場合もあります。
2012年〜2013年の2年間に当院を「未破裂脳動脈瘤」の診断名で受診された患者さんは445名でしたが、84名の方が動脈瘤無しという診断でした。
2012年〜2013年の2年間で動脈瘤が存在した患者さん361名のうち、手術の適応である方は172名、手術の適応でない方は189名と、半数以上の方が手術の必要がないと診断されています。

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調査の結果、大きさが5mm程度の動脈瘤であれば年間の破裂率が1%程度であることが明らかになっています。5mmの動脈瘤を抱えている人が100人居るとすると、1年間に1人がくも膜下出血を発症するということです。
300人居るとすると、1年間にその内3人がくも膜下出血を発症し、一人が亡くなり、二人は再破裂防止の手術を受けて一人は社会復帰を果たし、残りの一人には後遺症が遺るということです。

このように「脳動脈瘤」は一旦破裂してしまうと既に手遅れになってしまう事があるため、「未破裂脳動脈瘤」の状態で治療を行った方が良い場合があります。「未破裂脳動脈瘤」に対する手術は、多くの場合、無症候の症例に重大な外科的侵襲を加えるものです。いろいろな要素を総合的に考えて、施設として一貫した方針で治療を行うべきですが、その際は、自施設の治療成績とガイドラインに基づいた判断が行われるべきです。

治療方法

未破裂脳動脈瘤の治療方法には、
2つの方法があります。

  • 開頭手術によるクリッピング術

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    頭蓋骨の一部を開いて(開頭)脳の深部に到達し、動脈瘤のネック部分を金属製(多くはチタン製)のクリップで挟むことによって動脈瘤内に血流が入らないようにして破裂を防ぐ方法です。

    手術は顕微鏡を用いて行うマイクロ手術と呼ばれ、非常に困難な手術の一つで専門医が行う必要があります。全身麻酔下での比較的長時間の手術になりますので、体への負担は大きくなりますが、より確実な治療方法です。

    手術の詳細を見る

  • 血管内手術による塞栓術

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    動脈瘤 コイルで脳動脈瘤内部を満たす

    血管内手術と呼ばれる治療の一つで、血管の中から動脈瘤の中に形状記憶のコイルを詰める方法です。
    内部からコイルを詰めて動脈瘤内部をコイルと固まった血液で埋めてしまい、破裂を防ぐ方法です。
    体への負担は少ない治療方法ですが、再治療の可能性が高いなどの問題点もあります。やはり難しい処置であり、専門医でなければ治療を行うことが出来ません。

治療方法の選択は、患者さんの状態や動脈瘤の部位、大きさ、形など数多くの因子を考えたうえで決定する必要があります。どちらの方法でも良い場合もありますし、絶対的に一方の術式が適している場合もあります。両方の治療が出来る施設で、公平な視点で判断を受けることをおすすめします。

脳動脈クリッピング術について

  • 様々な脳動脈瘤に対応が可能

    当院では、「未破裂脳動脈瘤」に関しては、より治療が確実な「開頭クリッピング術」をほとんどの症例で選択しています。
    歴史がある治療法で、術後の成績が長期間良好なことがわかっており、複雑な形態の脳動脈瘤にも対応が可能です。
    開頭手術ではありますが、入院期間は10日と短く、髪を刈ったり剃ったりする事がない「無剃毛手術」で行うため、社会復帰も極めて早く可能です。

  • からだにやさしいチタン製のクリップを使用

    開頭クリッピング術は、脳動脈瘤の根っこの部分をチタン製のクリップで挟み込み、動脈瘤内に高い圧力の血液の流入を遮断することによって破裂を予防する手術です。用いるクリップはチタンという体にやさしい金属から作られていて、磁石にくっつかない性質をもっているため、手術後にMRIの検査も可能です。クリップのはさむ力はかなり強く、きれいにクリッピングされているなら、以後外れることはありません。

  • 1

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    手術の多くは左右どちらかのこめかみの部分を開頭して行います。
    ※当院では基本的に完全無剃髪で手術します。

  • 2

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    脳動脈瘤の首に金属製のクリップをかけます。

  • 3

    *

    これで脳動脈瘤内に血液が流れ込まなくなります。

脳動脈瘤のクリッピングによる治療

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    治療前

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    治療後

手術適応になる場合

原則はガイドラインに沿って手術を行うか決定します

  • 1

    5mmを越える
    動脈瘤

    ※5mm以下でも部位等
    によっては適応になる

  • 2

    blebが存在するなど
    不整形であるもの

    ※動脈瘤の壁の弱い部分が
    飛び出したもの

  • 3

    経過中に
    大きくなったり、
    新たに発生が
    確認されたもの

  • 4

    くも膜下出血の
    治療時に
    発見されたもの

  • 5

    くも膜下出血の
    家族歴がある場合

  • 6

    多発動脈瘤
    (二個以上の脳動脈瘤)

  • 7

    本人のQOLが低下し、
    手術の希望が強い場合

    ※生活の質

  • 8

    70才以下で重大な
    全身合併症が無い

治療体制・設備

  • 当院では、「未破裂脳動脈瘤」に対する開頭クリッピング術を安全で確実に行うために、手術自体や手術前後の管理について院内ルールを作成して厳守するとともに、最新の設備機器を導入しています。
    血管の裏側を観察するための内視鏡をはじめ、脳血管内の血流を音で確認できる超音波血流計、脳内の運動神経の働きを手術中に確認できる運動誘発電位(MEP)などの各種のモニタリング装置を使用しています。さらに、血液の流れを顕微鏡下で確認できる新しい手術用顕微鏡を導入したことで、より高度で安全な脳動脈瘤手術が可能になりました。

  • 新しい顕微鏡による術中血管造影

    新しい顕微鏡による術中血管造影

治療実績

  • 当院では、2000年以前から「未破裂脳動脈瘤」の治療には積極的に取り組んで来ました。また、くも膜下出血を来した「破裂脳動脈瘤」についても、日本有数の症例数を経験しています。
    2001年から2015年にかけての治療数は、「未破裂脳動脈瘤」が1491例に達しています。治療成績については、98%の確率でクリッピングが完遂されています。合併症については、自分一人では生活が困難となるような(麻痺や意識障害などで)重症の合併症は1〜2%、軽微な合併症3〜4%程度の確率です。当院では、死亡症例は、0.1%以下となっています。

  • 脳動脈瘤治療症例数

医師からのメッセージ

このホームページをご覧になっている方達の多くは、ご自身、もしくはご家族のどなたかが「未破裂脳動脈瘤」という診断を受けられ、今後の治療方針の選択に迷っておられる方達と思います。済生会熊本病院では、そのような方達のお役に立つために、2015年10月より「未破裂脳動脈瘤治療専門外来」を開設いたしました

「未破裂脳動脈瘤」とは「くも膜下出血」の最大の原因となるものです。つまり、「未破裂脳動脈瘤」が破裂を来すと、「くも膜下出血」になります。「くも膜下出血」は、重度の脳障害を遺したり、死に至る可能性が高い病気です。このことは多くの皆さんがご存知の事実だと思います。

従って、「未破裂脳動脈瘤」があると診断された方達は、大きな不安を毎日感じながら生活することを強いられ、日々の生活の質も低下する可能性が高くなります。強い不安から、うつ状態になられる方もおられます。 「破裂する可能性は高いのか?」「今、治療を受けないといけないのか?」「治療 はどんな方法なのか?」「治療の合併症はあるのか?」「手術以外の治療法はないのか?」「元の生活に戻れるのか?」。「未破裂脳動脈瘤」と診断された後は、こうした様々な疑問が生じるのが当然てす。

しかし、実際には、こうした疑問に対する正しい説明がなされていないために、どうしたらよいかわからない患者さん達が数多くおられます。不安に苦しまれる 多くの方達に十分に納得していただき、よく相談したうえで適切な治療方針を提 供することを目的として、「未破裂脳動脈瘤治療専門外来」を開設することにいたしました。済生会熊本病院脳神経外科は「未破裂脳動脈瘤」治療では、日本でもトップクラスの経験があります。その経験・実績を活かして、是非、皆様のお役に立ちたいと思って居ります。

副院長・脳神経外科 上席部長

西 徹

副院長・脳神経外科 部長西徹

よくあるご質問

  • なぜ脳の動脈にこぶができて、それが破れるのですか?

    動脈瘤が出来る原因は、いくつかの体質や生活習慣が関連している場合もありますが、ほとんどの患者さんでは明らかではありません。動脈瘤の破裂は、膨らんで薄くなった動脈瘤の壁が内部からの圧力に耐えられなることによって起こります。高血圧、喫煙、過度の飲酒などは破裂の危険因子です。

  • 脳ドックで脳動脈瘤があると言われたのですが、かならず破裂しますか?また、破裂を防ぐ方法がありますか?

    未破裂脳動脈瘤はそう簡単には破裂しません。しかし、その部位・大きさ・形などによって、破裂し易い動脈瘤も 有ります。まずは、脳神経外科専門医に相談しましょう。破裂を防ぐには、手術を受ける方法がありますが、受けない場合は、高血圧や喫煙などの破裂の危険因子を除くことが必要です。

  • くも膜下出血が心配です。未破裂の脳動脈瘤があるか検査したいのですが?

    人間ドックの脳ドッグを受診することで未破裂脳動脈瘤の有無が判明します。気になられる方は、脳ドックの受診をお勧めします。
    当院予防医療センターでも受診可能です。詳細は予防医療センターをご覧ください。

  • 「未破裂脳動脈瘤」に対する開頭クリッピング手術の成功率や合併症の確率について知りたいのですが?

    98%の確率でクリッピングが完遂されています。合併症については、自分一人では生活が困難となるような(麻痺や意識障害などで)重症の合併症は1〜2%、軽微な合併症3〜4%程度の確率です。当院では、死亡症例は、1500例中2例のみです

  • 手術の際、髪の毛は剃ってしまうのでしょうか。また創あとは残りますか?

    当院では完全無剃毛の手術を実施しています。毛髪が有る部位を切開しますので、創は目立ちません

  • 入院期間はどれ位ですか?

    「未破裂脳動脈瘤」の入院期間は、7日間〜10日間です。直接自宅へ退院可能です。

  • 疼痛についての対策を教えて下さい

    痛みに対しては、細心の注意をはらい、痛みが発生する以前から術後すぐに痛み止めを処方し、可能な限り疼痛コントロールを行っております。

  • MRIの撮影は可能でしょうか?

    当院で現在しているクリップはチタン合金製であり、MRIを撮影しても大丈夫です。ただし以前にクリッピングを受けられている場合は、チタン合金製でないクリップを用いた場合もあります。

  • 手術した未破裂脳動脈瘤が破裂する可能性はありますか?

    きちんとクリッピングされた動脈瘤が破裂する可能性は非常に低いと考えられます。

  • 再び動脈瘤ができるのではないでしょうか?

    5〜10年の間に新たな未破裂脳動脈瘤ができる可能性がありますが、その可能性も1〜2%といわれています。未破裂脳動脈瘤の治療を行った人でも、未破裂脳動脈瘤がなかった人でも、その可能性は変わりません。2〜3年おきにMRIや三次元CT検査でチェックするようにしましょう。定期的な脳ドック受診をおすすめします。ただし、最初から複数の動脈瘤が発見された場合は注意を要します。

  • クリップが外れてしまうことはないのでしょうか?

    クリップは非常に強い力で動脈瘤の壁を挟んでいますので外れることはありません。ただし、稀ではありますが、時間と共にクリップの根元の弱い部分が膨らんで来る場合があります。一定期間ごとに検査を行っていく必要が有ります。

  • 治療費はどれくらいかかりますか?

    例)クリッピング1カ所10日間入院の場合
    (健康保険を利用。入院期間が月をまたがない場合。)

    年齢

    高額療養費制度を利用しない場合

    高額療養費制度を利用する場合

    70歳未満 66万円(3割負担)
    所得区分 高額療養費制度を利用した場合
    年収約1,160万円〜の方 約26万円
    年収約770〜約1,160万円の方 約18万円
    年収約370〜約770万円の方 約10万円
    〜年収約370万円の方 57,600円
    住民税非課税の方 35,400円
    70歳以上 22万円(1割負担) 44,400(所得により異なる場合があります)

    例)コイリング1カ所6日間入院の場合
    (健康保険を利用。入院期間が月をまたがない場合。)

    年齢

    高額療養費制度を利用しない場合

    高額療養費制度を利用する場合

    70歳未満 58万円(3割負担)
    所得区分 高額療養費制度を利用した場合
    年収約1,160万円〜の方 約26万円
    年収約770〜約1,160万円の方 約18万円
    年収約370〜約770万円の方 約10万円
    〜年収約370万円の方 57,600円
    住民税非課税の方 35,400円
    70歳以上 19万円(1割負担) 44,400(所得により異なる場合があります)

    例)クリッピング1カ所10日間入院の場合
    (健康保険を利用。入院期間が月をまたがない場合。)

    • 70歳未満

      高額療養費制度を利用しない場合

      約66万円(3割負担)

      高額療養費制度を利用する場合

      年収約1,160万円〜の方 約26万円
      年収約770〜約1,160万円の方 約18万円
      年収約370〜約770万円の方 約10万円
      〜年収約370万円の方 57,600円
      住民税非課税の方 35,400円
    • 70歳以上

      高額療養費制度を利用しない場合

      約22万円(1割負担)

      高額療養費制度を利用する場合

      44,400円(所得により異なる場合があります)

    例)コイリング1カ所6日間入院の場合
    (健康保険を利用。入院期間が月をまたがない場合。)

    • 70歳未満

      高額療養費制度を利用しない場合

      約58万円(3割負担)

      高額療養費制度を利用する場合

      年収約1,160万円〜の方 約26万円
      年収約770〜約1,160万円の方 約18万円
      年収約370〜約770万円の方 約10万円
      〜年収約370万円の方 57,600円
      住民税非課税の方 35,400円
    • 70歳以上

      高額療養費制度を利用しない場合

      約19万円(1割負担)

      高額療養費制度を利用する場合

      44,400円(所得により異なる場合があります)