当科では、Common Diseaseから希少疾患、急性期から慢性期、臨床から研究まで、呼吸器診療の幅広い領域を深く経験できます。
とりわけ以下の領域では、国内でも先進的な環境を提供します。
【研究・先進医療】世界レベルの研究と最先端の治療を実践
肺がん・間質性肺炎におけるグローバル治験や、国内初のレジストリ研究を主導。
【症例の質と量】九州トップクラスの症例数で、診断・治療能力を磨く
間質性肺炎や肺がんなど、専門性の高い症例が豊富。偏りのないバランスの取れた経験を通じて、確かな実力を養います。
【集学的・チーム医療】院内完結のシームレスな連携体制
呼吸器外科、放射線科、脳神経外科など他科との強力な連携により、診断から治療まで迅速かつ最適な医療を提供。チームの一員として専門性を発揮できます。
■ 専門性の高い疾患
肺がんや間質性肺炎といった専門性の高い呼吸器疾患に対して、高度な診断技術と個別化医療を融合させた先進的な診療体制を構築しています。これらの疾患は、早期診断と適切な治療選択が患者さんの予後に大きく影響するため、精密な検査・迅速な治療開始・最新の治療法の導入を重視しています。
- ①最新のエビデンスに基づいた個別化医療
近年の肺がん診療領域は、がん側の詳細な情報と患者さん側の身体的・社会的背景を踏まえ、診療方針を決定する個別化医療が行われています。当科では、目まぐるしく変遷する最適な治療(標準治療)を、適切な指針に基づき、症例検討会議で方針を協議した上で、提供しています。
- ② 現行のエビデンスを越えていく臨床試験・治験
当科では新たな標準治療の確立や新薬創薬のために実施される臨床試験や治験に積極的に参加しており、実施件数は九州エリアでも有数の施設です。尚、当科で実施される全ての臨床研究は、法に定められた倫理審査を経て実施されています。適切な実施要件を満たした最先端の治療を、地域の患者さんへいち早くお届けすると共に、新たなエビデンス創出へ貢献しています。
- ③ 診断から治療まで一施設内で完結する集学的診療
当院は、PET/CTやMRIなどの画像検査、気管支鏡や針生検といった組織診断など、肺がん診療に必要な検査が一施設内で実施可能です。治療方針は、呼吸器外科・放射線治療科・脳神経外科など、肺がん診療に欠かせない診療科と合同で協議検討して決定しています。患者さん毎に最適な適応・時期に検査や治療介入可能であり、各所と連携しながら診療しています。
- ① 高分解能CTと生検による早期診断
当科では、診断が難しいびまん性肺疾患に対して、最新の国際ガイドラインに準拠した診療を行っています。特に間質性肺炎においては、高分解能CTに加え、気管支肺胞洗浄法(BAL)や、症例に応じて経気管支鏡下クライオバイオプシー、呼吸器外科との連携による外科的肺生検など、多様な診断技術を駆使しています。 さらに、診断の精度を高めるため、院外の肺病理専門医や胸部放射線科医を交えた多職種による学際的検討(MDD: Multidisciplinary Discussion)を定期的に実施しています。これにより、複雑な症例に対しても、より適切で信頼性の高い診断が可能となっています。 これらの取り組みにより、正確な病態把握と早期診断が可能となり、疾患の進行を抑えるための早期治療介入が実現しています。患者さんの予後改善に大きく寄与する診療体制を整えています。
-
② 多職種連携による個別化医療の推進
間質性肺炎の診療においては、医師だけでなく、薬剤師、理学療法士、看護師、栄養士、医療ソーシャルワーカーなど、多職種によるチーム医療を展開しています。各専門職が連携し、患者さん一人ひとりの病態や生活背景に応じた個別化医療を推進しています。 入院診療ではクリニカルパスを活用し、外来診療においても多職種が積極的に関与する体制を整えています。治療方針の共有においては、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を重視し、患者さんとご家族の意思を尊重した医療を提供しています。 さらに、生活支援、服薬管理、栄養指導、リハビリテーションなど、各分野の専門性を活かした包括的な支援を通じて、患者さんの生命予後の改善と生活の質(QOL)の向上を目指しています。 このような多職種連携により、全人的な医療の提供を実現し、患者さんとそのご家族に寄り添った診療を行っています。
-
③ 国際共同治験への参画(抗線維化薬など)
間質性肺炎の中でも特に治療が難しい線維化を伴う症例に対して、当科は世界的な多施設共同研究(国際共同治験)に参画しています。抗線維化薬を中心とした新たな治療法の開発に関与し、国内外の最新知見をいち早く臨床に取り入れる体制を整えています。
また、厚生労働省びまん性肺疾患調査研究班の研究協力員として、さらに日本呼吸器学会の関連部会役員として、診療ガイドラインの作成や政策提言にも貢献しており、診療と研究の両面から間質性肺炎の克服に取り組んでいます。
- ④ 医師主導の臨床研究
当科では、間質性肺炎の病態解明と治療法の確立を目指し、複数の医師主導型臨床研究を実施しています。
•KUMAMOTO-ILA Study
当科では、熊本大学病院および熊本赤十字病院と共同で、健診受診者を対象とした肺間質異常(ILA)の臨床研究を実施しております。ILAは、間質性肺炎の未発症段階と考えられており、本研究はその早期診断および早期治療につなげることを目的とした、国内初の前向きレジストリー研究です。
•RAPID-IPF Study
特発性肺線維症(IPF)の急性増悪患者を対象とし、ステロイドの漸減方法に関する当科主導のランダム化比較試験を実施中です。
これらの研究は、臨床現場から得られる知見をもとに、より効果的な診断・治療法の開発につなげることを目的としています。
■一般的な呼吸器疾患(Common Disease)への取り組み
肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、日常的に多く見られる呼吸器疾患に対しても、専門的かつ包括的な診療体制を整えています。地域医療との連携を重視し、急性期から慢性期まで、患者さん一人ひとりに寄り添った医療を提供しています。
- 当科では細菌性肺炎/胸膜炎、抗酸菌感染症、真菌感染症など、幅広い呼吸器感染症に対して専門性をもって診療を行っています。
- ①診断
適切な診断のため、必要があれば起因菌同定ための気管支鏡検査を積極的に行っています。また近年ではmultiplex PCR法を用いた迅速診断にも力を入れています。
- ②治療
エビデンスに基づいた治療を重視しており、感染症専門医も含めたカンファレンスを連日行っております。また膿胸に対する外科的掻爬術など呼吸器外科との連携もスムーズに行っています。
- ③救急診療
新型コロナウイルス感染症の流行や高齢化社会の進行に伴い呼吸不全の救急搬送件数は増加しており、基幹病院として24時間体制での診療対応を継続し、地域の急性期医療を支える重要な役割を果たしています。
- ④集中治療管理
ARDS(急性呼吸窮迫症候群)による重症呼吸不全、敗血症性ショックなどの重症例の全身管理を行っています。薬物療法に加え、肺保護を重視した人工呼吸器管理、腹臥位療法などのエビデンスのある非薬物療法も積極的に行っています。また超重症例に対しては他科とも連携しV-V ECMO(体外式膜型人工肺)、CRRT(腎代替療法)の導入を行っています。ARDSは九州内でも有数の症例数であり、臨床試験や治験に積極的に参加しています。
- ①安定期 診断~治療まで
診断は、問診や一般血液検査、CTなど画像検査、呼気NO検査・肺機能検査(気道可逆性検査含む)、喀痰検査などで総合的に行っていきます。病型や重症度を同時に評価し、吸入薬の提案や適正使用指導を行います。急性増悪(発作)を頻回に繰り返す、症状が遷延する場合は生物学的製剤の導入を行っております。
- ②急性期
当院は急性期病院であり、気管支喘息の診断に至っておらず急性増悪を契機に発覚する方も多くみられます。GINAや喘息予防・管理ガイドラインなどに則り、エビデンスに沿って治療します。安定期に移る際に生物学的製剤導入の必要性があれば引き続き当科での外来治療を行います。
- ③ 国際共同治験への参画(抗線維化薬など)
間質性肺炎の中でも特に治療が難しい線維化を伴う症例に対して、当科は世界的な多施設共同研究(国際共同治験)に参画しています。抗線維化薬を中心とした新たな治療法の開発に関与し、国内外の最新知見をいち早く臨床に取り入れる体制を整えています。
また、厚生労働省びまん性肺疾患調査研究班の研究協力員として、さらに日本呼吸器学会の関連部会役員として、診療ガイドラインの作成や政策提言にも貢献しており、診療と研究の両面から間質性肺炎の克服に取り組んでいます。
- 診断・治療、在宅支援の強化
OPDは診断・治療に至っていない例が多く、NICE studyでは推定患者数は日本で500万人以上いるとされています。難治性咳嗽・息切れの精査時に診断されることがあり、慢性期治療における吸入薬導入、必要があれば在宅酸素療法導入を行っております。急性呼吸不全を契機に診断されることがあり、その場合は急性期病態に対する入院治療を行いつつ、慢性期治療を導入していきます。呼吸不全の程度が強い場合は呼吸補助を行いますが、NPPVやハイフローセラピーを活用し、非侵襲的な介入で可能な限りQOLを維持した治療を優先します。これらのことで入院期間の短縮や再入院の予防ができるよう取り組んでおります。 慢性の一般呼吸器疾患であり、通院をしやすい地域医療機関に受診ができるよう御案内をしております。在宅療養支援・地域包括ケアを患者さんが受けられ生活の質を保てるように、近隣医療機関と連携を行っています。