院長挨拶

院長挨拶

済生会熊本病院 院長
命を支える杖になる ~済生のこころとアウトリーチ~
済生会は、1911年、「生活が苦しく、医療を受けられずにいる人々を救済するように」と、明治天皇が発出された「済生勅語」を起源としています。日本最大の社会福祉法人であり、約64,000人の職員が40都道府県で、医療・保健・福祉活動を展開しています。現在、第6代総裁に秋篠宮皇嗣殿下を戴き、第14代全国会長に潮谷義子氏(前:熊本県知事)をお迎えしており、本日、創立112周年を迎えました。
今日の済生会はその活動の目標として、1)生活困窮者支援の積極的推進、2)最新の医療による地域への貢献、3)切れ目ない医療と福祉の提供を掲げています。1935年設立の私たち熊本病院も、この目標に準じ、「医療を通じて地域社会に貢献します~質の高い医療を済生のこころとともに~」との理念を掲げ、活動の基本方針として、「救急医療」、「高度医療」、「予防医療」、「地域連携」、「人材育成」の5つを定めています。
さて、「医者は国民にとっての命の杖とならねばならない」とは、熊本県阿蘇郡小国町に生まれ、済生会の創立に医務主幹として深く関わり、東京都済生会中央病院の初代院長でもあった北里柴三郎博士の残した言葉です。この「命の杖」という表象は、北里博士がドイツ留学時に師事したロベルト・コッホ博士から受け継いだようですが、医療・医術のシンボルとして世界的に広く用いられているアスクレピオスの杖を想起させます。破傷風の血清療法を確立するなど世界的な研究者として活躍し、帰国後には幾多の伝染病研究所を設立するなど、近代日本の医学・医療の礎を築いた博士の肖像は、来る2024年、紙幣に描かれることになりました。
コロナ禍はもとより、私たちの誰しもが、突然に誰かの助けを必要とする「弱い立場」になりうる不確実な時代に、命を支える杖となり、「施薬救療」という済生のこころをもって、人々の命と暮らしに向き合って手を差し伸べること、すなわちアウトリーチは、私たち済生会人の使命です。病、老い、障がい、そして境遇に悩むすべての命を支える杖となりたい。私たちはそう願って、いのちに寄り添い続けます。
2023年(令和5年)5月30日