心房細動とカテーテルアブレーション治療
心房細動の原因
心臓は心室と心房に分かれています。心臓内に電気が流れ心臓の筋肉を動かして、わたしたちの心臓は一定のリズムで動いています。正常な心臓では、心臓にある洞結節というところから、電気信号が発生し、心室まで電気が流れます。電気の通り道を刺激伝導系とよび、心房と心室が収縮します。この収縮を繰り返すことで、全身に血液が循環します。正常な心臓の動きでは収縮を1分間に50〜100回繰り返しています。
しかし、心臓内の別の場所から突如、異常な電気信号が発生し、一定のリズムで動いている心臓の動きを乱すことがあります。これが心房細動の原因です。
心臓では肺で酸素を貰った血液が流れる、4本の血管が繋がっています。これを「肺静脈」といいます。心房細動のほとんどのケースで、この肺静脈から異常な電気信号が発生します。この異常な電気信号がきっかけで心房全体が痙攣を起こし、心室にうまく血液を送ることができなくなります。このような状態を心房細動といいます。
心房細動の身体への影響
心房細動が起こると動悸、息切れ、めまい、場合によっては失神などの身体症状が生じる場合があります。心臓が正常に動いているとき、血液は全身から戻って、再び心臓から全身へ血液が送り出されます。ところが、心房細動がおこると、血液の流れが悪くなり、心房内の血液が澱み、血の塊ができます。このときできる血の塊が心臓から血液と共に流れ出て、脳や手足の血管を詰まらせる原因となります。脳の血管が詰まると脳梗塞を引き起こす場合もあります。
心房細動の治療方法
治療方法には、以下の2つの方法があります。
薬物治療 | 異常な電気信号の発生を薬で抑えます。しかし異常な電気信号は無くなるわ けではないため、薬を飲み続ける必要があります。薬による副作用や、薬を飲み続けても 心房細動発作が治まらないケースもあります |
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カテーテルアブレーション | アブレーション用カテーテルという細い管を使用し、肺静脈で生じた異常な電気信号が左心房に伝達しないようにする根治治療です。 |
カテーテルアブレーションでの治療方法
当院では循環器内科の不整脈先端治療部門チームを中心に、以下のカテーテルアブレーション治療を積極的に行っています。(アブレーションとは除去・切除という意味)
- 高周波カテーテルアブレーション
- 冷凍バルーンアブレーション
- パルスフィールドアブレーション(PFA)
高周波カテーテルアブレーション
頚部、鎖骨、足の鼠径部などからカテーテルを挿入し、左心房までカテーテルを運びます。発生原因となる肺静脈と心房の接合部分(左右)を囲うように先に触れる僅かな領域の心臓組織だけを焼灼(カテーテルの先端で電気で焼くこと)することで、異常な電気信号が伝達することを防ぎます。
冷凍バルーンアブレーション
冷凍アブレーションは、電流の代わりに、冷たいガスを使い-40℃〜-50℃まで心筋組織を冷却することで心房細動を起こす電気信号を遮断し、異常な電気信号の発生を生じないようにさせる治療法です。冷凍アブレーションの所要時間は平均、約1.5~2時間と短く、(高周波カテーテルアブレーション約2.5~3時間)また、熱を利用しない治療法のため、血流中での熱凝固が生じないため、焼灼中の痛みが少なく、さらに合併症の軽減が期待されます。当院では2015年より冷凍アブレーション治療を開始しています。
パルスフィールドアブレーション(PFA)
PFAはカテーテル電極周囲に電場を発生させて、細胞膜に微小な孔を開けることで治療領域を形成するアブレーションシステムです。
従来の熱伝導による焼灼とは異なり、非熱メカニズムであるため、心筋組織の温度上昇がほぼ無く(温度上昇はわずか0.3〜0.4℃程度)、心臓周囲組織への熱障害が発生しない、より安全性の高い治療が期待できます。
先行する欧米からの報告でも、高周波アブレーションと同等の有効性を維持しつつ、安全性が高まることが示され、治療の主流となりつつあります。