低侵襲治療

ステントグラフト内挿術

大動脈は体の中で最も太く、末梢の血管に血液を送る重要な役割をしています。大動脈瘤とは、この大動脈の壁が部分的にもろくなり、そこが瘤状に膨らんだもののことを言い、瘤ができた位置や形状によって様々な種類に分けられます。

大動脈瘤について

大動脈瘤の多くは無症状のまま次第に大きくなり、場合によっては破裂し大出血を引き起こす危険性があります。また、形状によっては小さくても破裂する場合もあります。生きている限り動脈瘤は大きくなり、小さくなることはないため、治療が必要になります。
瘤の成長を抑えるためには、薬物治療として降圧剤の服用で動脈が拡大しにくくする治療もありますが、ある程度以上の大きさになった大動脈瘤では、薬だけでの破裂の予防はできません。

現在の治療の第一選択肢は「人工血管置換術」といって、開胸し、大きくなった動脈瘤を人工血管に置き換える外科的手術です。とはいえ、高齢者や他に疾患を持つ患者さんにとって開胸する外科手術は、侵襲が非常に大きい手術ですので、当院では「ステントグラフト手術(ステントグラフト内挿術)」を積極的に取り組んでいます。開腹手術ではないため、術後の回復も早く、入院期間も1週間程度です。(平成28年度の「非破裂性大動脈瘤 ステントグラフト手術」平均入院期間:当院9.89日 全国平均:12.74日)

手術は、全身麻酔下にて、足の付け根の血管(動脈)からカテーテルとともに収納したステントグラフトを挿入して、大動脈瘤の部分まで送り込みます。

動脈瘤のある部位まで運んだらステントグラフトを開放し、瘤に蓋をし固定します。それによって瘤内の血流がなくなり次第に小さくなる傾向がみられます。たとえ瘤が小さくならなくても、拡大を防止できれば破裂の危険性は無くなります。

ステントグラフト内挿術のイメージ図

治療後

大動脈瘤の破裂による突然死を免れ、動脈瘤破裂を予防するための生活制限の必要がなくなります。

※1 ステントグラフトとは、人工血管の内側にステントいわれるバネ状の金属を取り付けたものです。細いカテーテルの中に収納したものを使用します。 ※2 ステントグラフトが可能な動脈瘤は解剖学的に限られており、すべての動脈瘤に対して行える訳ではありません。