「フレイル」を知ることでもっと、実りある 長寿へ。
健康寿命を延ばすキーワード「フレイル」
高齢化が加速度的に進行する中で、一人でも多くの方に、一日でも長く健康に過ごしていただくために。今回は「フレイル」という概念と、その対策や予防法をご紹介します。
いま、フレイルが注目されているのはなぜ?
日本は世界一の長寿国ですが、平均寿命に対して健康寿命が短いという事実をご存知でしょうか。 男性は9歳、女性は12歳も短いことから、人生の終盤を要介護の状態で過ごす方が非常に多いのです。
高齢になっても自分らしい人生を送りたい、大事な人にいつまでも元気に過ごしてほしい、その願いを叶えるために、今注目されている概念が「フレイル」です。フレイルは病名ではないですが、それに準ずる、病気やケガを非常にしやすくなっている状態です。
平均寿命と健康寿命の差
出典:厚生労働省「健康日本21(第二次)各目標項目の進捗状況について」を参考に作成
フレイルって何?
フレイルから要介護への流れ
健康な状態から、心身が衰え要介護状態に至る、その中間の状態が“フレイル”です。
フレイルの段階で気づいて生活を見直せば、健康な状態に戻せます。
フレイルとは、一言でいうと「要介護の一歩手前」
ちょっとしたケガや環境の変化が起きただけで、すぐに要介護になってしまいやすいギリギリの状態を指します。例えば、健康な人が風邪をひいても数日で治りますが、フレイルで風邪をひくとそのまま要介護になることもあります。
フレイルになる原因は、加齢です。
人は加齢に伴って、どうしても「体力が落ちる」「社会との接点が減る」「経済力が落ちる」など、さまざまな変化が起こります。フレイルという概念の特徴は、筋力低下や体重減少など身体的な衰えだけでなく、気力の低下、うつなどの精神的な衰え、経済的困窮や独居など社会的な問題まで含むことです。例えば、ご夫婦二人暮らしから、どちらかが亡くなるなどで一人暮らしになることも、「話し相手がいなくなる」「2人分の年金で2人で暮らすより、1人分の年金で1人で暮らすほうが経済的コストが高く、節約のため趣味や交際を控えることで社会との関わりが減る」などの理由がフレイルの原因になります。
コロナ禍で、もともと元気に出歩いていた高齢者が、外出自粛し室内で過ごすことが多くなり、家族と会えなくなったことでフレイルに陥るケースも増えています。
フレイルの3つの要素
フレイルを知るとなぜ健康な長寿につながるの?
まだ言葉として認知度が低いため、すでにフレイルなのに自覚していない「隠れフレイル」も少なくありません。見た目は健康でも「以前より体力がない」「食欲が湧かない」「家から出るのがおっくう」などの変化を感じたら、実はフレイルかもしれません。
一人でも多くの方にフレイルを知ってほしい理由は、フレイルが可逆的だからです。可逆的とは「努力で戻すことができる」ということ。自覚したことをきっかけに、生活習慣や普段の行動を見直すことで、もとの健康な状態に戻れるのです。
自分がフレイルかどうかを知る方法は?
まずは「イレブンチェック」や「指輪っかテスト」で確認してみましょう。もしフレイルの可能性があれば、
- 栄養バランスのとれた食事を摂る
- 座っている時間を減らす、筋トレや体操など運動や体を動かす頻度を高める
- 趣味やボランティアなど社会参加を行う
という3つのポイントを振り返ることで生活習慣の改善が必要です。一日でも長く自分らしい毎日を送るため、早速フレイル予防を始めてみましょう。
あなたの「フレイル度」を測る「イレブンチェック」
- ほぼ同じ年齢の同性と比較して、健康に気をつけた食事を心がけていますか(〇 はい|× いいえ)
- 野菜料理と主菜(肉か魚)を両方とも、毎日2回以上は食べていますか(〇 はい|× いいえ)
- 「さきいか」「たくあん」くらいの硬さの食品を、普通にかみ切れますか(〇 はい|× いいえ)
- お茶や汁物でむせることがありますか(〇 いいえ|× はい)
- 1回30分以上の汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施していますか(〇 はい|× いいえ)
- 日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していますか(〇 はい|× いいえ)
- ほぼ同じ年齢の同性と比較して、歩く速度が速いと思いますか(〇 はい|× いいえ)
- 昨年と比べて外出の回数が減っていますか(〇 いいえ|× はい)
- 1日に1回以上は、誰かと一緒に食事をしていますか(〇 はい|× いいえ)
- 自分が活気にあふれていると思いますか(〇 はい|× いいえ)
- 何よりもまず、もの忘れが気になりますか(〇 いいえ|× はい)
- 質問4・8・11は「はい」と「いいえ」が逆になっていますので注意してください。
右側の赤が3~4個ならフレイル予備群。5個以上ならフレイルの可能性が高い
指輪っかテスト
椅子に座って一瞬でできるテストです。今すぐやってみましょう。
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フレイルは病気ではないので、それが理由で当院に入院することはありませんが、他の疾病やケガで入院された患者さんに、フレイル状態の方が少なくありません。そんな患者さんのフレイル対策に日々取り組む当院のスタッフがお話します。