転移性脳腫瘍の放射線治療|海馬回避全脳照射(HA-WBRT)で認知機能を守る
転移性脳腫瘍に対する「海馬回避全脳照射」とは?
脳にがんが転移した場合(転移性脳腫瘍)、治療方法はいくつかの選択肢があります。
腫瘍の大きさや数、場所によって、ガンマナイフや手術などを行うこともありますが、腫瘍が多い場合は、脳全体に放射線を当てる全脳照射という治療が選ばれることがあります。
全脳照射の課題
従来の全脳照射では、脳全体に放射線を当てるため、記憶や学習に関わる「海馬」という部分にも放射線が届いてしまいます。
海馬は記憶をつかさどる大切な場所で、放射線の影響を受けやすいことがわかっています。 そのため、治療後にもの忘れや認知機能の低下が起こることが問題になっていました。
海馬回避全脳照射とは?
「海馬回避全脳照射(HA-WBRT)」は、IMRT(強度変調放射線治療)などの高精度な技術を使って、脳全体に放射線を当てながら、海馬への影響をできるだけ減らす治療法です。
海馬に転移があることはまれなので、治療効果に大きな影響はありません。 この方法により、認知機能への影響を抑えながら、脳全体を治療することができます。
脳を上から輪切りに見た図
左:放射線を当てる範囲(ピンク)と記憶に関わる海馬(オレンジ)を示した図
右:脳の画像(比較用)
記憶への影響を減らすため、海馬を避けて放射線を当てる方法です。
臨床試験でわかっていること
- 海馬回避全脳照射は、従来の全脳照射に比べて認知機能の低下を防ぐ効果があると報告されています。
- 腫瘍の再発を防ぐ効果は従来と同じです。
- 生存率や重篤な副作用についても、従来の治療と同等の安全性が確認されています。
対象となる患者さん
海馬回避全脳照射は、海馬に近い範囲に転移がない患者さんが対象です。
すべての患者さんに適しているわけではありませんが、可能な場合には積極的に適応を検討しています。
治療に関してご質問やご不安をお持ちの方はお気軽にご相談ください。
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