チームで診る。 ひとり残さず診る。 ― 済生会熊本病院呼吸器センター、その実像 (前編)―
1981年以来、日本人の死因の第一位はがんです。年間30万人、3人に1人が命を落とすがんは、今や国民病と言ってもいいかもしれません。
中でも、最も死亡者数が多く、年間6万人以上が亡くなっているのは肺がん。しかしながら、診断と治療の進歩により、早期に発見された場合は、多くの方が治るようになってきました。
九州でもハイボリュームの肺がん症例数を誇る当院の呼吸器センターは、複数の専門スタッフと最新機器を備え、すべての患者さんをチームで診ます。
がんはその進行具合により、ステージ1〜4と診断されますが、当院ではどのステージの患者さんに対しても有効な治療法を用意しています。呼吸器センターの治療体制について、吉岡部長に伺いました。
95%以上に胸腔鏡手術、 それって普通?
呼吸器センターは、呼吸器の外科と内科が1つになったチームです。患者さんの数は年々増えています。肺がんや悪性腫瘍などの難しい病気だけでなく、肺炎やぜんそくなど呼吸器の病気はすべて診る〝呼吸器のプロ集団〟です。
肺の病気の中でもいちばん患者さんの数が多いのは肺がんです。がんが見つかって手術をするというと誰しも不安になると思いますが、手術できるのは早期に発見できた場合のみ。だから、ある意味、幸運とも言えます。
当院では年間約250の肺がん症例がありますが、手術で治療するのは100例程度。ここ呼吸器センターでは、肺がん手術の95%以上を低侵襲で入院期間が短い胸腔鏡手術というやり方で行います。
これは内視鏡を使った手術の方法で、体力面に不安がある高齢者の方でも受けやすく、患者さんの約75%が7日以内に退院できるんです。実際、当院で胸腔鏡手術を受けている患者さんの2人に1人は70歳以上、5人に1人は80歳以上。
言うのは簡単ですが、肺がん手術の95%以上に胸腔鏡手術を採用するには、相応な技術を持つ医師と最新機器が必要です。
主治医が15人もいる感覚
センターの医師は内科・外科含め約15人。そのほとんどが呼吸器疾患を専門に治療する学会認定資格を持っています。複数の専門医で診るメリットは、客観的で偏りのない治療ができること。週2回のカンファレンスには医師が勢ぞろいし、すべての患者さんの情報を共有しています。
医師も人間ですから、キャリアや得意分野によってどうしても診断力に個人差があります。がんが映った1枚のCT画像を見て、ある人はがんに気付くけど、ある人は気付かないということも現実には起こりえます。しかし全員で共有すれば、見落としを防げる上に、新しくていいアイデアを発見することもあります。
済生会熊本病院ではそうした担当医による治療の差を生じさせず、高いレベルで医療の質を保っていくために、医師全員ですべての患者さんを診ます。15人の主治医がいる感覚というとわかりやすいでしょうか。
胸腔鏡下手術を行う呼吸器科 吉岡医師