数字で見る済生会
当院の主な指標(2023年度)
手術件数
手術室で行った手技件数です。
救急車等搬入数 ※1
当院に搬入された救急車・病院車・防災ヘリ・ドクターヘリ・ドクターカーの年間台数です。 1日あたり平均で約21台搬入されています。
救急患者数
救命救急外来を受診した年間の患者数です。
ヘリ受入数
ドクターヘリや県の防災ヘリコプター「ひばり」の受入件数です。
外来患者数
1日あたり外来を受診した患者数です。
平均在院日数 ※2
一人の患者さんが、平均して何日入院していたかを示す指標です。 当院は急性期病院です。集中的な治療が終了した後は、連携医療機関へ転院、もしくはかかりつけ医のもとで治療を続けることになります。
紹介率 ※3
地域の医療機関などから紹介された患者さんの割合です。「日々の診療や健康管理はかかりつけ医、高度な検査・治療は当院」という医療の機能分化を進め、地域全体で連携しながら治療にあたっています。
新入院数
一年間に入院された患者さんの数です。
- 救急車等搬入数とは、救急車・病院車・防災ヘリ・ドクターカーを合計した数値
- 在院延べ患者数÷((新入院患者数+退院患者数)÷2)
- 地域医療支援病院紹介率 初診紹介患者数÷初診患者数×100(但し、初診患者数からは、救急搬送患者および休日・夜間の救急患者を除く。)
各診療科・部門の実績詳細は下記よりご覧ください。
令和5年度 済生会熊本病院 病院情報の公表
DPCデータから全国統一の定義と形式に基づいた指標を作成し、市民の皆さんに情報公開を行っています。
DPCデータとは、全国約5,800病院が、匿名化した患者情報を全国標準形式で厚生労働省に提出しているデータです。
傷病名や診療内容、入院日数などがわかるものです。
現在当院が公開している指標は、2023年度(2023年4月1日〜2024年3月31日)中に当院を退院した患者さんのDPCデータを基に作成しております。
DPCデータには自動車賠償責任保険や労災保険、自費、24時間以内の死亡の患者さんのデータは含まれません。
病院指標
医療の質指標
年齢区分 | 0〜 | 10〜 | 20〜 | 30〜 | 40〜 | 50〜 | 60〜 | 70〜 | 80〜 | 90〜 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
患者数 | – | 97 | 130 | 216 | 515 | 1,111 | 2,328 | 4,089 | 3,400 | 1,252 |
※転院率=転院患者数/全退院数
■外科
外科の手術の約3割は緊急手術であり、救命救急センターと密に連携して手術を実施しています。また、予定手術については消化器内科医の診断後、消化器内科・放射線科・外科で合同カンファレンスを行い、安全で適切な治療方法を実施できるよう体制を整えています。外科全体の約3割は悪性腫瘍の手術であり、当科の大きな特徴は、肝臓がん・胆道がん・膵がん等の高難易度手術を行うhigh volume center(多数例を手術する施設)であることです。日本肝胆膵外科学会高度技能医制度認定施設として、高度技能指導医1名・高度技能専門医1名のもと安全に肝胆膵領域の悪性腫瘍手術を行っています。さらに日本内視鏡外科学会技能認定医6名のもと、胃がん手術の94%、大腸がん手術の85%、肝臓がん手術の70%、胆のうがん手術の71%、膵臓がん手術の30%、ヘルニア手術の41%は患者さんにとって負担の少ない腹腔鏡手術で行っています。また、手術支援ロボット「ダヴィンチ」による、ロボット手術にも取り組んでおり、より低侵襲な治療を推進しています。
■消化器内科
消化器内科では、消化管疾患や肝疾患、胆膵疾患などの幅広い疾患を扱っており、胃・大腸内視鏡や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を用いた内視鏡的治療を中心に行っています。胆のう炎や総胆管結石、胆管炎などの胆道疾患に対しては、炎症の原因である結石を除去する治療や、チューブを留置して胆汁の流れを良くする治療を行うことで、発熱や腹痛、黄疸などの症状を改善します。また、大腸ポリープに対しては、内視鏡を用いてポリープのある粘膜の下に液体を注入し、持ち上がったポリープをスネア(輪状の電気メス)で切除する手術を行っています。そして、胃や大腸の早期がん(粘膜内がん)に対しては、粘膜下層剥離術(ESD)でがんの根治を目指しています。ほかにも、胆管がんや膵臓がん、肝臓がんに対する治療を行っており、例えばがんによって胆管が狭窄することによって生じる胆管炎や黄疸などの治療や、カテーテルを用いてがんに栄養を与える血管を塞栓する手術、切除不能な癌に対する化学療法などの治療があります。特に、従来精査が難しいとされてきた膵臓がんに対しては、超音波内視鏡を用いてより正確かつ負担の少ない組織診断(EUS-FNA)を行うことができ、ご自身の希望にあった加療方針の選択やスムーズな治療に繋げています。
■整形外科
整形外科での手術は外傷関連が約7割を占めており、高齢者の大腿近位部骨折や橈骨遠位端骨折、複雑な関節内骨折や骨盤・寛骨臼骨折、血管損傷を伴った軟部組織損傷など様々な四肢外傷の治療にあたっています。また、関節外科も得意分野であり、変形性関節症に対する人工膝関節置換術や、前方アプローチによる人工股関節置換術では良好な成績を上げています。高齢化社会に伴い、脆弱性骨折症例だけでなく、慎重な全身管理が必要な患者さんも増えています。安全な医療の提供には、適切な手術手技だけでなく周到な周術期管理が不可欠であることから、整形外科では包括診療医(病院総合医)を導入しています。包括診療医は身体的・精神的・全人的な医療を包括し、多職種協働による「患者さん中心のチーム医療」を目指しています。チーム医療を実践し、合併症の発生を低減させるべく包括的に管理するとともに、多発外傷や重度外傷患者に対しては救急科とも協力して治療にあたり、良好な結果が提供できるよう努めています。
■呼吸器内科、呼吸器外科
呼吸器内科と呼吸器外科の専門医が一体となってすべての呼吸器疾患(肺がん、肺炎、間質性肺疾患、ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気胸および胸膜疾患、急性呼吸不全や急性呼吸促迫症候群など)に対応しています。
患者数が最も多い疾患は肺がんです。肺がん治療は、内科、外科、放射線科の医師が、外来から入院まで密に連携をとり、患者さんお一人お一人の個別状況に応じた最も適切な治療を提案しています。肺がんの進行度・病期に基づいて、初診日から1ヵ月以内に治療(手術、放射線、化学療法)が開始できるように、マルチスライスCTやPET-CTなどの検査を計画し、早期手術適応の判断や進行肺がん症例への化学療法治療薬の選択といった治療方針について、カンファレンスを通じて総合的に行っています。
肺がん手術では、99%以上が胸腔鏡による低侵襲な手術を実施しており、高度進行がんで他医療機関で手術ができない患者さんにも、術前集学的治療後に心臓血管外科との拡大手術の実施や、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤による個別がん薬物療法を積極的に行っています。2018年10月からは、最新鋭の手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた低侵襲かつ精密・正確な手術治療も導入しています。 高齢者に多い疾患として、誤嚥性肺炎があります。誤嚥する(食べ物や唾液などが気管に入ってしまう)ことで、食べ物や唾液に含まれた細菌が気管から肺に入り込み、肺炎を引き起こしてしまいます。当院では、言語聴覚療法士による評価と嚥下機能訓練も併せて行っています。
次に多い疾患は、間質性肺炎(肺胞の壁や周辺に炎症を起こす状態)です。炎症によって壁が厚くなり、肺全体が固くなることで肺の膨らみが悪くなり、呼吸がしにくくなります。じん肺や過敏性肺炎、感染症による急性のもの、膠原病に伴うものなど原因は様々です。当院は間質性肺疾患の診療患者数が九州地区においてトップクラスであり、画像診断や血液検査等で総合的に診断するだけでなく、気管支肺胞洗浄検査や胸腔鏡下肺生検を実施し、さらには全国的な臨床試験に参加することで得られた最新情報を基に、薬物療法や在宅酸素療法、リハビリテーションを実施しています。
我々は、よりよい治療を目指すための臨床研究や新薬開発のための臨床治験に積極的に取り組み、肺がん・びまん性肺疾患・肺間質異常(ILA)・急性呼吸窮迫症候群などの幅広い分野において、世界的な多施設共同研究や臨床試験などに参加し、エビデンスの創出にも関わっています。(2024年9月1日現在)
■腫瘍内科
腫瘍内科では、手術、がん薬物療法、放射線治療、緩和ケア、精神腫瘍における専門医師が在籍しており、様々ながん種や治療に対応しています。また、患者さんの病態や事情に合わせた集学的な治療を行うために、複数の専門医師に加えて、がん診療を専門とした看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、公認心理師、社会福祉士などの複数診療科・多職種によるチーム医療を行っています。 上記実績は、入院による診療実績となるため手術実績が多くを占めていますが、がん薬物療法や放射線治療については外来による診療を中心に実施しています。2023年度の当科の外来延べ患者数は18,671人となりました。外来の内訳として、最も多かったのは薬物療法外来6,607人、次に放射線治療外来5,529人でした。 その他にも、がんゲノム外来、遺伝カウンセリング外来、薬物療法による心毒性など循環器領域を広くカバーする腫瘍循環器外来といった専門外来や、がん腫や状態を問わず地域医療機関からの依頼に迅速に対応できる総合腫瘍外来も整備しています。
■糖尿病内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数(自院) |
平均 在院日数(全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
10007xxxxxx1xx | 2型糖尿病の治療 (インスリン投与あり) |
– | – | 13.99 | – | – | – |
100210xxxxxxxx | 低血糖症 | – | – | 6.80 | – | – | – |
100040xxxxx01x | 糖尿病ケトアシドーシス,非ケトン昏睡 (尿路感染症等の合併あり) |
– | – | 23.79 | – | – | – |
100040xxxxx10x | 糖尿病ケトアシドーシスの治療 (処置あり) |
– | – | 18.91 | – | – | – |
100040xxxxx00x | 糖尿病ケトアシドーシスの治療 (処置なし) |
– | – | 13.15 | – | – | – |
糖尿病の治療は外来通院を主としており、糖尿病療養指導士である看護師や管理栄養士とともに、患者さんのライフスタイルに合わせた生活習慣の見直しや、血糖コントロールの改善を目標として診療を行っています。また、他科に入院中で血糖コントロールが必要な患者さんには定期回診を行い、必要に応じて血糖管理のサポートを行っています。
また、高血糖や低血糖、糖尿病ケトアシドーシスなどの急性代謝障害や、手術前の血糖コントロール等、患者さんの状態に合わせて、入院加療を行います。
■泌尿器科、腎臓内科
泌尿器科
前立腺がんについては、がんが前立腺内にとどまっている場合、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた腹腔鏡手術を行います。拡大された3D映像を見ながら、人の手よりも精密に動く器具を用いることにより、がんの確実な摘出だけでなく、痛みの低減、術後尿失禁率の低減、入院日数の短縮などの治療成績が得られています。また、前立腺がんだけでなく、2016年より腎がんに対する腎部分切除術、2020年より腎盂尿管移行部(尿が腎臓から尿管に流れ出す部分)の狭窄に対する腎盂形成術、2021年より膀胱がんに対する膀胱摘除術、2022年より根治的腎摘除術においても「ダヴィンチ」を用いた治療を開始しました。
膀胱がんに対する経尿道的手術は、尿道から膀胱に内視鏡を挿入し、その先端に付いている電気メスで膀胱内の腫瘍を切除します。患者さんの状態に応じて、手術の直後に再発予防のために抗がん剤を膀胱内に注入(化学療法)する場合があります。手術日に入院し、2日又は3日間で退院できます。
腎臓内科
急性腎不全、慢性腎炎・ネフローゼ症候群、慢性腎不全(保存期から導入期、維持透析期)と、腎疾患の全ての病態と病期において医療を提供できる体制で診療を行っています。 人工透析は、慢性腎不全の患者さんの腎臓の代わりに老廃物を除去する対症療法で、「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。当院では、多くのメリットがあることから、適応がある患者さんには腹膜透析を推奨しています。 腹膜透析とは腹腔内に留置したチューブ(カテーテル)を通じて透析液を注入し、腹膜の毛細血管から過剰な水分や不要な老廃物を透析液に滲みださせ、排液する透析方法です。この腹膜透析のメリットは、通院回数を減らせることです。血液透析の場合は週3回程度の通院が必要ですが、腹膜透析は自宅でできるため、通院は月に1〜2回で済みます。透析液の交換は自宅以外でも可能で、仕事や通学、出張、旅行などの選択肢も広がります。また、血液透析のように毎回太い透析針を刺す必要がなく、痛みがないことも特徴です。そして、最も大きなメリットは残存腎機能を維持しやすいことです。わずかでも残った腎機能に仕事をしてもらうことで、老廃物の自浄作用の一部を残すことができ、結果として余生の健康や長生きにつながります。 当院では「腹膜透析に力を入れる」のではなく、「腹膜透析が適している(のに選べていない)患者さんに、きちんと選んでもらいたい」と考えています。現在、約20%の方が腹膜透析を選んでいますが、血液透析や腎臓移植が適した患者さんもいらっしゃいます。慢性腎不全の患者さんには「腎臓移植」「腹膜透析」「血液透析」という3つの選択肢がありますが、それぞれの長所短所を正しく患者さんに理解していただき、ライフスタイルに適した方法を選択していただくことを目指しております。
■心臓血管外科
心臓血管外科では、積極的に低侵襲治療を提供しています。低侵襲治療は、傷を小さくし、痛みが少なく、術後の回復が早い治療です。 まず、大動脈瘤では、緊急手術以外でステントグラフトという血管内治療を行うことが増えてきました。この方法では、80歳を超える高齢の方でも身体への負担が少なく術後の早期回復が期待できます。
また、弁膜症では小切開手術による大動脈弁、僧帽弁、三尖弁手術を行っています。特に僧帽弁手術は人工弁を使用せず自分の弁を温存し修復する弁形成術を行っており、同時に三尖弁形成、左心耳切除、心房細動の治療も行うことが可能です。現在、僧帽弁・大動脈弁治療は全体の9割以上を小切開による低侵襲治療にて行っております。また、その多くを手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使用して行っており、2024年8月末時点で累計181症例を実施しました。大動脈弁治療は、通常の人工弁置換術に加えスーチャーレス弁という新しい植え込み型の人工弁を使用することにより、より短時間で手術を施行することが可能となっています。正中切開にはなりますが、大動脈弁自己弁温存基部置換もほとんどの適応患者さんで施行しております。緊急手術が必要な患者さんに対しては、24時間、365日断ることなく対応しています。
■循環器内科
循環器内科では、カテーテルという細い管を用いた低侵襲な血管内治療・不整脈治療・弁膜症治療を積極的に行っています。カテーテル治療は、主として局所麻酔で行う患者さんの身体的負担が少ない治療法です。
その中で最も多い治療は、頻脈性不整脈に対するカテーテルを用いたアブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術)です。アブレーション治療とは、過剰な伝導路(心筋を動かす電気の通り道)や不整脈の起源を焼灼する治療です。2024年からは最新のパルスフィールドアブレーション(電気穿孔法)を開始しました。従来のアブレーション治療よりも治療時間が短く、合併症が少なくなるなどの従来治療にはない大きなメリットがあり、今後全国への普及が期待されている治療です。現在、熊本県内唯一の施設として先行して治療に取り組み、治療実績を積み重ねています。
次に多い手術が、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)に対するPCI(経皮的冠動脈インターベンション)です。特に生死に関わる急性心筋梗塞に対するカテーテル治療には注力しています。24時間365日施行可能な緊急治療体制が確立しており、なおかつ重症患者への術後集学的管理・治療が出来る集中治療室の体制も整っています。PCIとは、血管内にカテーテルを挿入し、血管の狭窄部をバルーンで拡張したり、ステントを留置する手術を指します。予定入院であれば、日帰り、1泊2日や2泊3日で退院することが可能です。また、当科では2012年に保険適応となったエキシマレーザーを用いたPCIを行っています。エキシマレーザーとは、カテーテルの先端からレーザーを照射し、狭窄や閉塞の原因となっている血栓を主に溶かし、血流の改善を行う治療デバイスです。従来の手術では治療困難な病変を安全に治療することができます。このように、あらゆる機器を用いて患者様の症状・予後を改善すべく、低侵襲治療を行っています。また、下肢血管の動脈硬化性病変に対するカテーテル治療も年間100例以上実施しており、全身の動脈硬化性疾患に対応できるカテーテルインターベンション専門医数も熊本県下最多の心臓血管センターです。
■脳神経内科
脳神経内科では、虚血性脳血管障害(脳梗塞、一過性脳虚血発作)とてんかんが全体の約86%を占めています。
脳梗塞とは、脳に酸素と栄養を運ぶ動脈が詰まり、脳への血液供給が途絶えてしまうことによって、意識障害や運動麻痺などが起こる病気です。治療としては、t-PA治療(血栓を強力に溶かす薬を静脈から点滴投与するもの)や脳血管内治療、その他薬物療法があります。てんかんは、脳の異常な興奮により、意識障害やけいれん発作などが起こる病気で、抗けいれん薬を用いて薬物療法を行います。
当科では、チーム医療体制のもとグループ回診を毎週実施し、理学療法士、言語聴覚士、作業療法士による早期リハビリテーションを通じて、早期退院やリハビリテーション病院への早期転院を図っています。これにより、社会復帰にかかる期間の短縮や、予後改善を促進することができます。
■脳神経外科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数(自院) |
平均 在院日数(全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
010040x099000x | 高血圧性脳出血の保存的治療 | 115 | 12.81 | 19.09 | 80.87% | 69.16 | – |
010010xx9906xx | 脳腫瘍 放射線治療(ガンマナイフ) | 92 | 3.77 | 4.26 | 6.52% | 70.25 | – |
160100xx97x00x | 外傷性硬膜下血腫等 穿孔洗浄術等 | 84 | 10.75 | 9.88 | 55.95% | 79.17 | – |
160100xx99x00x | 外傷性硬膜下血腫等の保存的治療 | 53 | 10.04 | 8.38 | 62.26% | 75.66 | – |
010040x199x0xx | 非外傷性頭蓋内血腫の治療 | 51 | 16.84 | 22.61 | 78.43% | 72.55 | – |
脳神経外科では、脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷といったさまざまな脳神経疾患を診療しています。その多くが、一刻を争う緊急の対応や高度な診断・治療技術を要求されるものです。
当科で最も多い症例は、高血圧性脳出血です。主に高血圧が原因で脳内の細い血管が破綻して出血する脳卒中です。
次に多いのは慢性硬膜下血腫です。頭部外傷を負って1〜2ヵ月後に徐々に頭蓋内に血液が貯まる病気で、麻痺や認知症などの症状を呈します。多くが緊急での穿孔洗浄術を必要とします。 脳腫瘍に対するガンマナイフ治療の中で最も多いのは、転移性脳腫瘍(がんの脳転移)です。脳の中の病巣を手術で開頭することなく放射線(ガンマ線)を使って除去することができ、極めて低侵襲な治療法といえます。
地域の施設との医療連携も緊密に行い、全国平均在院日数よりも短い在院日数を実現しています。
その他、未破裂脳動脈瘤、三叉神経痛、水頭症、頭部外傷などに対する治療も行っています。
■救急科、内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数(自院) |
平均 在院日数(全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
161070xxxxx00x | 薬物中毒(その他の中毒)の治療 | 36 | 6.08 | 3.62 | 38.89% | 48.14 | – |
080010xxxx0xxx | 膿皮症の治療 | 35 | 13.23 | 12.88 | 62.86% | 73.83 | – |
180010x0xxx0xx | 敗血症の治療(人工呼吸、中心静脈注射、人工腎臓なし) | 30 | 16.80 | 20.03 | 53.33% | 85.63 | – |
100393xx99xxxx | 電解質異常等の治療 | 29 | 10.86 | 10.25 | 44.83% | 78.52 | – |
161060xx99x0xx | アナフィラキシー等 手術なし 処置2なし | 24 | 2.79 | 2.86 | 4.17% | 49.46 | – |
複数の臓器障害を抱える重症患者さんや、専門診療科に振り分けることのできない患者さんへ対応すべく、救急科と総合診療科を統合し、さまざまな救急疾患に対応できる診療体制を整えています。当科では、救急搬送後に入院となる比較的重症度の高い患者さんが多く、年間891人(2023年度)が入院されています。当科で多い分類は外傷や感染症であり、DPCコード別に見ると薬物中毒、膿皮症、敗血症、電解質異常、アナフィラキシーが上位となります。一疾患あたりの患者さんは多くありませんが、きわめて幅広い疾患をカバーするのが当科の特長です。DPCコードは、部位や処置、合併症で細分化されるため、様々な疾患を抱える当科では、統一されたDPCコードが出にくい傾向となっております。
初発 | 再発 | 病期分類基準(※) | 版数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Stage I | Stage II | Stage III | Stage IV | 不明 | ||||
胃癌 | 104 | 22 | 22 | 38 | 30 | – | 1:UICC TNM分類 | 第8版 |
大腸癌 | 47 | 77 | 80 | 68 | 37 | 19 | 1:UICC TNM分類 | 第8版 |
乳癌 | – | – | – | – | – | 14 | 1:UICC TNM分類 | 第8版 |
肺癌 | 106 | 32 | 46 | 74 | – | 73 | 1:UICC TNM分類 | 第8版 |
肝癌 | 10 | 29 | 19 | 10 | – | 42 | 1:UICC TNM分類 | 第8版 |
1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約
定義
5大がんと呼ばれる胃がん、大腸がん、乳がん、肺がん、肝がんであった症例を初発の UICC 病期分類別、および再発に分けて集計しています。また、集計対象期間中に複数回入院された患者さんはそれぞれ集計をしています。UICC 病期分類とは、UICC 病期分類国際対がん連合によって定められた、①がん(原発巣)の大きさと進行具合(進展度)、②所属リンパ節への転移状況、③遠隔転移の有無の3つのカテゴリによって、各がんをⅠ期(早期)からⅣ期(末期)の4病期(ステージ)に分類するものです。
特徴
「初発」とは当院において腫瘍の診断、あるいは初回治療を実施した場合を指します。「再発」とは、当院・他施設を問わずに初回治療が完了した後、当院にて患者を診療した場合や、がん寛解後に局所再発・再燃または新たな遠隔転移をきたした場合を指します。なお、ステージの判断は退院時点のものです。集計区分が”不明”の患者数には、退院時時点でがんのステージ分類が未確定のものが含まれます。
患者数 | 平均在院日数 | 平均年齢 | |
---|---|---|---|
軽症 | – | 11.14 | 59.14 |
中等症 | 54 | 8.57 | 76.43 |
重症 | 48 | 13.10 | 82.60 |
超重症 | 15 | 12.93 | 84.20 |
不明 | – | – | – |
定義
DPCデータの入院契機病名および最も医療資源を投入した傷病名のICD10コードがJ13~J18の肺炎(肺炎レンサ球菌による肺炎、インフルエンザ球菌による肺炎、その他肺炎)で始まるもののうち、市中肺炎であるものを集計しています。
【ICD10コードとは】
International Classification of Diseases and Related Health Problems(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の略称で、世界保健機関(WHO)が世界保健機関憲章に基づき作成した、傷病に関する分類です。世界の異なる国における傷病の状況を比較できることを目的とした標準的分類で、現在は1990年のWHO総会で改定された、第10回修正版(ICD-10)が採択されています。
特徴
市中肺炎とは、 普段の社会生活の中でかかる肺炎のことであり、成人市中肺炎診療ガイドライン (日本呼吸器学会)による重症度分類を用いて集計しています。この指標では細菌による肺炎を集計しており、インフルエンザウイルスなどのウイルスによる肺炎や食べ物の誤嚥による肺炎、 気管支炎などは集計対象外です。患者数は中等症が最も多く、また、軽症の患者さんの平均年齢が50歳代であるのに比べ、中等症~超重症になるほど高齢の患者さんが多くなっています。治療は、急性呼吸不全の管理、薬剤投与が中心です。最新の機器(人工呼吸器、NPPV、ネーザル・ハイフロー等)を積極的に活用し、様々な病態に応じた呼吸管理を行っています。
発症日から | 患者数 | 平均在院日数 | 平均年齢 | 転院率 |
---|---|---|---|---|
3日以内 | 625 | 12.50 | 77.94 | 66.51% |
その他 | 17 | 13.59 | 75.24 | 2.02% |
※転院率=転院患者数/全退院数
定義
入院中に医療資源を最も投入した傷病名のICD10コードの上3桁で集計しています。
【ICD10コードとは】
International Classification of Diseases and Related Health Problems(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の略称で、世界保健機関(WHO)が世界保健機関憲章に基づき作成した、傷病に関する分類です。世界の異なる国における傷病の状況を比較できることを目的とした標準的分類で、現在は1990年のWHO総会で改定された、第10回修正版(ICD-10)が採択されています。
特徴
発症3日目以内の急性期脳梗塞の患者さんが全体の約97%を占めています。当院ではそういった緊急性のある疾患に迅速に対応できるよう、24時間365日患者さんを受け入れ、常時CT・MRI・超音波検査などができる万全の体制を敷いています。また、発症後4.5時間以内の超急性期脳梗塞には、t-PAという血栓を強力に溶かす薬を点滴投与する治療を優先して実施し、発症後8時間以内の場合で適応する症例には脳血管内治療(局所血栓溶解療法や血栓回収療法)を行います。t-PA適応外の患者さんやt-PA治療後に効果が十分でなかった患者さんのため、脳血管内治療専門医を中心とし、さらにこの脳血管内治療を推進していきます。
※転院率=転院患者数/全退院数
■外科
2023年度の外科での手術件数は1,069件で、そのうち悪性腫瘍の手術が28%を占めています。当科の大きな特徴は、肝臓がん・胆道がん・膵がん等の高難易度手術を行うhigh volume center(多数例を手術する施設)であることです。日本肝胆膵外科学会高度技能医制度認定施設として、高度技能指導医1名、高度技能専門医1名のもとで安全に肝胆膵領域の悪性腫瘍手術を行っています。2023年度には同領域の悪性腫瘍手術を98件施行しました。同年度の胃がん手術は34件、大腸がん手術は165件施行しました。さらに、胃がん手術の94%、大腸がん手術の85%、肝臓がん手術の70%、胆のうがん手術の71%、膵臓がん手術の30%、ヘルニア手術の41%は患者さんにとって負担の少ない腹腔鏡手術で行っています。また、手術支援ロボット「ダヴィンチ」による、ロボット手術にも取り組んでおり、より低侵襲な治療を推進しています。
■消化器内科
消化器内科では、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)関連処置や粘膜下層剥離術(ESD)・内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的消化管止血術といった内視鏡的治療を中心に行っています。胆管炎や膵炎などの疾患に対しては、胆道に内視鏡下でステント(金属やプラスチックでできた筒)を留置することによって、胆汁の流れを正常にし、炎症の改善を行います。大腸ポリープ・粘膜切除術では、内視鏡でポリープのある粘膜に液体を注入し、持ち上がったポリープをスネア(輪状の電気メス)で切除します。また、胃や大腸の早期がん(粘膜内がん)に対しては、粘膜下層剥離術(ESD)と呼ばれる治療に注力しており、高周波ナイフでがんの周りの粘膜を切開したのち、更に粘膜下層(粘膜の下の層)を剥離して切除します。内視鏡による治療であり、身体への負担が少ないのも特徴です。他にも、胃や十二指腸、大腸などの消化管の出血に対しては、止血クリップや高周波電流によって止血を行います。
■整形外科
2023年度の整形外科での手術件数は1,420件であり、外傷関連の手術が約7割を占めています。内訳は大腿骨骨折骨接合術215件、人工骨頭置換術181件、前腕骨骨接合術88件、下腿骨骨接合術49件、上腕骨骨接合術32件などが上位を占め、外傷以外の人工膝/股関節置換術は146件に上りました。特に人工股関節置換術・人工骨頭置換術に関して、難易度の高い前方アプローチでは合併症も少なく、高い評価を得ています。多くの患者さんを安全に治療していく上で、手術技術の向上を図ることは勿論、合併症予防のためにできるだけ早期の手術・離床を図ること、多職種で情報共有を行いながらチーム医療を実践することは不可欠です。クリニカルパスを有効に活用し、合目的的な医療が提供できるよう今後も努めていきます。また、低侵襲な経皮的プレート固定、血管損傷を伴った四肢外傷に対する組織再建、複雑な関節内骨折、骨盤・寛骨臼骨折など難易度の高い骨折についても綿密な治療計画に基づいて治療を行い、良好な成績を得ています。
■呼吸器内科、呼吸器外科
肺がん治療は、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科の医師が、外来から入院まで密に連携をとり、患者さんお一人お一人の個別状況に応じた最も適切な治療を提案しています。肺がんの進行度・病期に基づいて、初診日から1ヵ月以内に治療(手術、放射線、化学療法)が開始できるように、マルチスライスCTやPET-CT(2022年更新)、気管支鏡検査などの検査を計画し、早期手術適応の判断や進行肺がん症例への化学療法治療薬の選択といった治療方針について、カンファレンスを通じて総合的に行っています。
Ⅰ期肺がんの手術においては、最も低侵襲な方法とされる「完全胸腔鏡下肺切除術」を実施しています。当院の胸腔鏡は、ハイビジョン3Dシステムを使用しています。また2018年10月からは、アメリカで開発された最新鋭の手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた低侵襲かつ精密・正確な手術治療も導入しています。導入以降、肺がんに対しては284件、縦隔腫瘍対しては77件の実績を積み重ねており、2023年度は肺がん手術の33%、縦隔腫瘍手術の65%を「ダヴィンチ」で行いました。(2024年3月現在)
また、「ダヴィンチ」を含んだ胸腔鏡による手術は、肺がん患者さんの98%以上に対して実施しており、60%が70歳以上、19%が80歳以上であり、多くの高齢の患者さんも手術を受けられています。また、ほとんどの患者さんが手術後5日目までに自宅退院されています。その他、肺がん以外では、救急疾患のひとつである気胸(肺の一部が破れ、漏れた空気で肺が圧迫される病気)に対する胸腔鏡による手術を行っています。
■腫瘍内科
- 胃がんの腹腔鏡(ダヴィンチ)手術
従来の腹腔鏡手術比べ関節機能を持った鉗子が特徴的で、カメラもコンピューター制御で画面のぶれがほとんどなく、拡大視効果で精緻な手術を行うことが可能です。
術前の検査でロボット手術が最も適している場合に選択をしています。 胃がんに対するロボット手術症例数は全国、九州でもトップクラスの実績があり、2024年7月現在、累計217症例を超える手術を実施しています。
- 直腸がんの腹腔鏡(ダヴィンチ)手術
ロボット支援下直腸がん手術は、ロボットの関節機能が最大限に発揮される狭い骨盤腔内での手術であり、確実な神経温存により性機能障害や排尿障害の予防に寄与します。
また、肛門管内の剥離も良好な視野で行うことができるため、可能な限り肛門を温存することで患者さんのQOL(生活の質)向上に役立つことが期待されます。
- 結腸がんの腹腔鏡(ダヴィンチ)手術
2022年の診療報酬改定に伴い結腸がんに対するロボット手術が保険収載されたことを受け、ロボット支援下結腸切除術を開始しました。
ロボットのメリットである3Dで安定した視野と手振れのない操作および関節機能を活かして、出血量の少ない精緻で安全な手術が可能となります。
その他ロボット支援手術以外にも、悪性腫瘍の患者に対して抗悪性腫瘍剤の局所持続注入を目的として植込型カテーテルを設置する術式や、体表に作成した人工肛門(結腸)を吻合しなおし腹腔内に戻す人工肛門閉鎖術、開腹手術より高い技術が必要となる腹腔鏡下での結腸悪性腫瘍切除術など多岐にわたる手術を実施しています。
■泌尿器科、腎臓内科
泌尿器科
- 前立腺がんの腹腔鏡(ダヴィンチ)手術
手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた腹腔鏡手術です。拡大された3D画像を見ながら、人の手よりも精密に動く器具を用いることにより、がんの確実な摘出だけでなく、痛み・出血量の低減、術後尿失禁率の低減、入院日数の短縮、などの治療成績が得られています。当院では、2024年7月までに1,968例実施しております。
- 膀胱がんの経尿道的手術、腹腔鏡手術
尿道から膀胱に内視鏡を挿入し、先端の電気メスで腫瘍を切除します。手術中膀胱内に洗浄液を注入しますが、電解質溶液(生理食塩水)を用いるため、合併症が少なくなります。
また、病状によっては膀胱を全て摘出する手術を行う場合があります。当院では2021年より「ダヴィンチ」を用いた腹腔鏡手術を開始しました。術中の出血量や切除断端陽性率の減少、術後合併症の発生数の軽減や在院日数の短縮が可能となります。
- 腎がん/腎盂尿管がんの腹腔鏡手術
腎がんでは、その大きさにより腹腔鏡下に腎臓全体を摘出する場合(全摘出)とがんのみを切除する場合(部分切除)があります。2016年6月から、部分切除にダヴィンチを用いており、2024年7月までに384例実施しております。また、2022年より根治的腎摘除術(全摘出)においても「ダヴィンチ」を用いた治療を開始しました。腎盂尿管がんでは、腹腔鏡下に腎臓、腎盂、尿管全体を摘出します。また、当科では患者さんのQOL維持のため、手術当日の入院を推進しております。手術の前日まで、普段の生活を送ることができます。
腎臓内科
- 人工透析の導入
人工透析は、慢性腎不全の患者さんの腎臓の代わりに老廃物を除去する対症療法で、「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。
血液透析においては体に貯まった水分や老廃物を除去するため、1分間に200mlの血液をポンプで抜き出し、人工腎臓できれいにした血液を体に戻します。そのため、バスキュラー・アクセスという血液の取り出し口と返し口を作るための手術を行います。最も多いのは内シャント造設術という、静脈と動脈をつなぐシャントを作成する方法で、静脈に動脈の血液が流れることで静脈の血流が増加し、透析に必要な血流量を得ることができます。太くしっかりとした血管がある場合には、患者さん自身の血管を使って手術を行うことができますが、無い場合はグラフトという人工の血管を使って動静脈をつなぎます。
しかしながら、作製したシャントは血栓ができやすく、シャント血管の狭窄や閉塞をきたす可能性があります。バスキュラー・アクセスは血液透析の命綱であるため、当院では2015年6月に透析シャント専門外来を開設し、年間約700例の手術を行うなど質の高い診療を提供しています。
また、腹膜透析は腹腔内に留置したカテーテル(チューブ)を通じて透析液を注入し、腹膜の毛細血管から過剰な水分や不要な老廃物を透析液に滲みださせ、排液する透析方法です。腹膜透析を導入する際には、全身麻酔により腹腔内にカテーテル(チューブ)を留置する手術を行います。おへその横から縦に4-6cmほど皮膚を切開し、カテーテルを挿入します。残存腎機能を維持しやすく、多くのメリットがあるため、当院ではできるだけ腹膜透析をおすすめしています。
■心臓血管外科
心臓血管外科では、積極的に低侵襲治療を提供しています。低侵襲治療は、傷を小さくし、痛みが少なく、術後の回復が早い治療です。
まず、大動脈瘤では、緊急手術以外でステントグラフトという血管内治療を行うことが増えてきました。この方法では、80歳を超える高齢の方でも身体への負担が少なく術後の早期回復が期待できます。
また、弁膜症では小切開手術による大動脈弁、僧帽弁、三尖弁手術を行っています。特に僧帽弁手術は人工弁を使用せず自分の弁を温存し修復する弁形成術を行っており、同時に三尖弁形成、左心耳切除、心房細動の治療も行うことが可能です。現在、僧帽弁・大動脈弁治療は全体の9割以上を小切開による低侵襲治療にて行っております。また、その多くを手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使用して行っており、2024年8月末時点で累計181症例を実施しました。大動脈弁治療は、7割近くを小切開で行っており、通常の人工弁置換術に加えスーチャーレス弁という新しい植え込み型の人工弁を使用することにより、より短時間で手術を施行することが可能となっています。正中切開にはなりますが、大動脈弁自己弁温存基部置換もほとんどの適応患者さんで施行しております。緊急手術が必要な患者さんに対しては、24時間、365日断ることなく対応しています。
■循環器内科
循環器内科では、カテーテルという細い管を用いた低侵襲な血管内治療・不整脈治療・弁膜症治療を積極的に行っています。カテーテル治療は、主として局所麻酔で行う患者さんの身体的負担が少ない治療法です。
その中で最も多い治療は、頻脈性不整脈に対するカテーテルを用いたアブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術)です。アブレーション治療とは、過剰な伝導路(心筋を動かす電気の通り道)や不整脈の起源を焼灼する治療です。2024年からは、最新のパルスフィールドアブレーション(電気穿孔法)を開始しました。従来のアブレーション治療よりも治療時間が短く、合併症が少なくなるなどの従来治療にはない大きなメリットがあり、今後、全国への普及が期待されている治療です。現在、熊本県内唯一の施設として先行して治療に取り組み、実績を積み重ねています。
次に多い手術が、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)に対するPCI(経皮的冠動脈インターベンション)です。PCIとは、血管内にカテーテルを挿入し、動脈硬化による血管の狭窄部をバルーンで拡張したり、ステントを留置したりする治療を指します。予定入院であれば、日帰り、1泊2日から2泊3日で退院することが可能です。また、当科では2012年に保険適応となったエキシマレーザーを用いたPCIも行っています。エキシマレーザーとは、カテーテルの先端からレーザーを照射し、狭窄や閉塞の原因となっている血栓を主に溶かし、血流の改善を行う治療デバイスで、従来の方法では治療困難な病変を安全に治療することができます。
その他にも、大動脈弁狭窄症に対して従来の心臓手術に比べて、より安全で低侵襲に弁置換が行える経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)を行っています。TAVI治療はカテーテルによる心臓弁膜症の治療であり従来の外科手術と比較すると体の負担が大きく軽減されることが分かっています。また当院のTAVI治療は全国でも有数の低侵襲治療となっており、穿刺部の選択や左室ペーシングなども含めて全国に先駆けて導入しており、条件にもよりますが現在3泊4日での入院も可能となっています。また人口の高齢化に伴い疾患自体も増加することが予想されており、今後益々安全で侵襲の少ない手法がのぞまれる状況となっています。また、徐脈による息切れ、ふらつきや意識消失発作が生じる患者さんへのペースメーカー治療などの多様な治療にも数多く取り組んでいます。
■脳神経内科
脳神経内科で最も多い手術は、主幹動脈(脳を養う重要な血管)の閉塞による脳梗塞に対する「経皮的脳血栓回収術」です。この手術は、カテーテルという細いビニールの管を足の血管から挿入して、頭の中の脳血管へ進めます。そして、血管を詰めている血栓を溶解、または回収し、閉塞した脳血管を再開通させる手術です。現在、脳梗塞の治療法として第一選択となっているのは、t-PAという、血栓を強力に溶かす薬を静脈から点滴投与するものです。しかし、この治療法には発症4.5時間以内に治療を開始しなくてはならないなどの制約があります。そこで、t-PA適応外の患者さんの命と生活を救う次の手段として、脳血管内治療という、カテーテルを用いた「経皮的脳血栓回収術」を行います。この手術は、原則として、発症後最大24時間以内の患者さんが対象となります。また、t-PAの投与と「経皮的脳血栓回収術」の両方を行う場合もあります。当院では、急性期脳梗塞に対する脳血管内治療に対して、脳卒中センターの脳神経内科・脳神経外科の脳血管内治療専門医がチームを組んで治療に当たっています。
■脳神経外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K164-2 | 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 | 128 | 0.80 | 11.09 | 62.50% | 79.32 | – |
K6092 | 動脈血栓内膜摘出術(内頸動脈) | 46 | 2.48 | 8.63 | 13.04% | 74.89 | – |
K1781 | 脳血管内手術(1箇所) | 41 | 0.80 | 12.20 | 31.71% | 63.27 | – |
K1742 | 水頭症手術(シャント手術) | 29 | 1.34 | 13.69 | 58.62% | 71.38 | – |
K1771 | 脳動脈瘤頸部クリッピング(1箇所) | 28 | 1.79 | 20.71 | 42.86% | 62.93 | – |
脳神経外科で最も多い手術は、「慢性硬膜下血腫」に対する穿孔洗浄術です。慢性硬膜下血腫は頭部外傷を負って1〜2ヵ月後に、徐々に頭蓋内に血液が貯まる病気です。緊急手術を必要としますが、術後は早期に症状が改善し、脳外科の中でも予後がよい疾患です。当科を代表する治療である脳動脈瘤根治術には、脳血管内手術と脳動脈瘤クリッピング術があります。脳血管内手術は、血管の中から動脈瘤中に形状記憶のコイルを詰め、血流が瘤内へ流入しないようにする治療法です。一方、クリッピング術は、瘤の根元をチタン製のクリップで挟み込み、血液が入らないようにして瘤の破裂を未然に防ぐ開頭手術となります。脳動脈瘤が破裂しても(くも膜下出血)、まだ破裂していない状態でも(未破裂脳動脈瘤)、いずれかの治療を適切に選択しております。脳梗塞の原因となる頸動脈狭窄症に対しては、狭窄の原因である動脈硬化を手術的に取り除く動脈血栓内膜摘出術を行います。髄膜腫に代表される良性脳腫瘍に対する頭蓋内腫瘍摘出術の件数も多いです。
■救急科、内科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
K386 | 気管切開術 | 13 | 11.00 | 23.54 | 76.92% | 69.92 | – |
K6151 | 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等)(止血術) | – | – | – | – | – | – |
K6153 | 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等)(その他) | – | – | – | – | – | – |
K046-3 | 一時的創外固定骨折治療術 | – | – | – | – | – | – |
K681 | 胆嚢外瘻造設術 | – | – | – | – | – | – |
様々な疾患を抱える救急科・総合診療科では、緊急度・重症度の高い症例を年間を通して数多く受け持っており、救命のため症例に応じた多くの手術・処置を行っています。1処置ごとの症例数は少ないものの、種類は多岐にわたっており経口気管挿管、緊急気管切開等の気道処置、外傷に関しては胸腔ドレーン留置、大動脈遮断バルーン留置、緊急開胸・開腹術、経皮的動脈塞栓術等の侵襲性の高い処置を行っています。重症感染症の診断目的に胸腔・腹腔穿刺、腰椎穿刺、膿瘍穿刺を、集学的治療を行うために中心静脈カテーテル留置等を数多く行っています。
DPC | 傷病名 | 入院契機 | 症例数 | 発生率 |
---|---|---|---|---|
130100 | 播種性血管内凝固症候群 | 同一 | – | – |
異なる | – | – | ||
180010 | 敗血症 | 同一 | 67 | 0.50% |
異なる | 37 | 0.27% | ||
180035 | その他の真菌感染症 | 同一 | – | – |
異なる | – | – | ||
180040 | 手術・処置等の合併症 | 同一 | 22 | 0.16% |
異なる | – | – |
定義
上記の傷病名について、入院の契機となった傷病名と同一性の有無を区別して症例数を集計しています。発生率は、2023年度の退院患者を分母としています。
特徴
当院は、手術や処置などを行う際には合併症を起こさないように細心の注意を払い施行しています。起こり得る合併症については、事前に患者さんに説明した上で、手術や処置の施行に同意をいただくよう努めています。
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが「中」以上の手術を施行した退院患者数(分母) | 分母のうち、肺血栓塞栓症の予防対策が実施された患者数(分子) | リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率 |
---|---|---|
1,713 | 1,541 | 90.0% |
血液培養オーダー日数(分母) | 血液培養オーダーが1日に 2件以上ある日数(分子) |
血液培養2セット実施率 |
---|---|---|
4,185 | 3,777 | 90.3% |
広域スペクトルの抗菌薬が 処方された退院患者数(分母) |
分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日 までの間に細菌培養同定検査が 実施された患者数(分子) |
広域スペクトル抗菌薬使用時の 細菌培養実施率 |
---|---|---|
528 | 522 | 98.9% |
更新履歴
令和5年度分の病院指標を更新しました。 | |
令和4年度分の病院指標を更新しました。 | |
令和3年度分の病院指標を更新しました。 | |
令和2年度分の病院指標を更新しました。 | |
令和元年度分の病院指標を更新しました。 | |
平成30年度分の病院指標を更新しました。 | |
平成29年度分の病院指標を更新しました。 | |
平成28年度分の病院指標を更新しました。 |
定義
2023年度退院患者さんの人数を10歳刻みの年齢階級別に集計しています。年齢は入院時の満年齢です。
特徴
当院の入院患者さんは、60歳以上の占める割合が全体の84.2%、80歳以上が35.4%と、比較的ご高齢の患者さんが多くを占めています。40歳代以下は7.4%です。60歳未満では頻脈性不整脈、狭心症・慢性虚血性心疾患、虫垂炎、非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外)などが多く、60歳~79歳では頻脈性不整脈、狭心症・慢性虚血性心疾患、肺の悪性腫瘍、脳梗塞が多くなっています。80歳以上では心不全、脳梗塞、股関節・大腿近位の骨折、誤嚥性肺炎が主な疾患です。