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済生会熊本タイムズ

地域に最先端の医療をいち早く提供する当院の取組みや様々な情報をご紹介します。

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フレイルにもチーム医療で取り組む。専門スタッフの視点から見たフレイル対策

フレイルは病気ではないので、それが理由で当院に入院することはありませんが、他の疾病やケガで入院された患者さんに、フレイル状態の方が少なくありません。そんな患者さんのフレイル対策に日々取り組む当院のスタッフに話を聞きました。

【理学療法士の視点】 生活の中に、できるだけ運動やおしゃべりを。

岡田 大輔

リハビリテーション部 理学療法士
岡田 大輔
お弁当作りが朝の日課。
同じおかずを入れがちでも文句を言わない子どもたちに感謝。

フレイル状態の患者さんが入院する時には、それまでの生活スタイルや運動量を確認したうえで、できるだけ早い段階から私たち理学療法士や作業療法士が入り、生活に必要な身体機能を取り戻すための歩行訓練、筋力バランス改善などのリハビリを行っています。当院は急性期病院なので入院期間は長くないのですが、その短い入院中でも、体力が低下してフレイルが進行しないよう、積極的に体を動かしてもらうことで身体機能の維持・向上を図っています。

特に循環器系などの慢性疾患を持つ方は、もともと運動機能に不安があるため運動不足がちで、フレイルになりやすい傾向があります。一方で、例えば高齢の方でも畑仕事を毎日している方などは元気な方が多い。そういった、日常生活の中にできるだけ運動を取り入れていただくことを、私たちは専門用語で「身体活動量を増やす」と言いますが、それがフレイル予防に効果的です。

また運動以外にも、閉じこもった生活で人や社会とのつながりが弱くなるような、刺激がない状態は認知機能の低下につながります。外にも出ない、趣味もない、一人暮らし、などはとても危険です。誰かとおしゃべりしたり、何かを一緒にしたり、そういう社会的なコミュニケーションも、脳や心を刺激し、フレイル予防につながるので、ぜひ心がけていただきたいですね。

フレイルについて質問です。実家の親など、離れて暮らす高齢家族のフレイル予防に、何ができますか?

できるだけ電話すること。地域活動への参加もすすめてみて。

なかなか会うのが難しいご時勢ですが、電話して声や話し方など変化がないかだけでも気をつけてみて。また行政のサービスや、地域活動への参加を促すのもおすすめです。たとえば熊本市では、高齢者のさまざまな生活相談に乗ってくれる「ささえりあ」が各地域にあるほか、高齢者が集まって介護予防の体操などを行う「くまもと元気くらぶ」も開催されています。気軽に問い合わせてみてください。

【看護師の視点】 フレイルにならないよう退院後まで見据えて。

認知症看護認定看護師

認知症看護認定看護師
坂口 美香子
私服のコーディネートは黒い服と奇抜な靴下が鉄板。紫のオープンカーを買うのが夢。

患者さんやご家族のそばにいて、過ごす時間も長いのが看護師。患者さんの様子や変化を見落とさないようにして、その気づきや情報をもとに、医師、栄養士、薬剤師、療法士、医療ソーシャルワーカーなどのスタッフにつなぐ役割をしています。

つなぐのは院内スタッフだけではありません。フレイルは短期的に解決するものではないので、退院・転院後のケアまで考えます。特に、そのまま家に戻るとまたフレイルになるのが明らかな場合は、まずリハビリができる病院に転院して、社会支援やサービスを得て社会的孤立を生まない状況にしたうえで家に戻れるような〝ストーリー〞を描く必要があります。そして、その段取りを組むところまでが私たちの仕事です。

私自身は「認知症看護認定看護師」という資格を持っています。その勉強をする過程でフレイルという概念を知りました。フレイルの方に認知症が多いと言われているので、フレイル予防を学ぶことで、自分の専門である認知症の予防にもつながる、と考えています。

例えば食事が摂れない患者さんに対して、以前は「高齢で筋力が落ちたのだから仕方ない」で終わっていたのが、フレイルが可逆的と知ってからは「どうアプローチすれば健康な状態に戻せるだろう?」と考えるようになりました。患者さんやご家族とも、フレイル改善のための方法について、一緒に考え、一緒に頑張っていきたいと思っています。

【管理栄養士の視点】 きちんと食べることが、何よりのフレイル対策。

管理栄養士

管理栄養士
山室 伊吹
家で懸垂できる器具を購入。院内のスポーツテスト満点をめざし日夜トレーニング中。

 

食事や会話、呼吸など、口は生きるために不可欠な機能を多く担います。加齢に伴う口腔機能の衰えは、心身の機能低下につながりやすいため、フレイルの中でも「オーラルフレイル」という概念も生まれました。
しっかり食べ十分な栄養を摂ること、口腔機能を健康に保つことは、フレイル予防・改善の鍵となります。

栄養士として、食事が不十分な患者さんには原因を探って対応します。嚥下機能が低下している方の食事は食べやすい形状に変更し、少食の方にはタンパク質や脂質を食事に混ぜたり栄養補助食品を追加するなど、患者さんに合わせた工夫をしています。また栄養摂取だけが目的の味気ない食事にならないよう、好きなものを間食として提供するなど、〝食べる楽しみ〞を実感いただくことも心がけています。

患者さんはよく「動いていないからお腹が空かない」とおっしゃいます。入院で活動量が減り、また気分もすぐれず、さらに食欲が落ちることもあります。以前、骨折で入院された嚥下機能の低下した患者さんに嗜好を考慮した甘いデザートを提供したり、嚥下のトレーニングを粘り強く続けたりした結果、「ごはんが美味しくなった!」という言葉をいただき、きちんと食事ができるようになったことがありました。フレイルは対策を立て実践することで改善できるということを実感しました。

フレイル予防・対策の3つの柱

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