クライオ生検「凍らせて・ひっつけて・取る」生検法
海外では、その高い診断率から肺がんの検査に広く使用されてきたクライオプローブ。日本でも2017年3月に薬事承認されたことを受け、当院でも2018年11月からスタートしました。検査の精度を大きく向上させる新たなデバイスとして期待されています。
最大マイナス50℃で凍結させ、大きな組織を採取
肺がんが疑われる場合、大半は気管支鏡を使って診断を行いますが、これまでは鉗子(かんし)というハサミのような形状のもので組織をつまんで採取していました。
2018年11月から導入した「クライオ生検」では、先端が最大マイナス50℃になるクライオプローブを病変に接触させ、くっついた組織を採取します。
採取できる組織の量も、質も、劇的に向上!
クライオ生検がすぐれている点は大きく2つあります。
1つめは大きな組織が採取できる点です。鉗子による生検で採取できる検体は1~2ミリ程度なのに対し、クライオ生検では5~7ミリの非常に大きな組織が採取できます。その結果、診断率の向上が期待できます。
また進行期の肺癌では適切な治療薬を選択するために遺伝子変異の有無を調べる必要があり、非常に多くの組織が必要ですが、クライオ生検であれば充分量の組織が採取できますので患者さんに適切な薬物療法を提供することができます。
2つめは質の良い組織が採取できます。鉗子で組織を採取する際は鉗子でつまむことで組織がつぶれつてしまい正確な診断が難しくなってしまうことが時にあります。一方、クライオ生検ではつぶれていないきれいな組織が採取できますので、より正確な診断につながります。
△クライオ生検のプローブを操る呼吸器内科 神宮医師(写真左)
クライオ生検を地域に広めるフロントランナーに。
クライオ生検は、九州では当院が3施設目、熊本県では初となります。メリットが非常に大きいため、今後導入を希望する医療機関も増えると思われます。
ただし、鉗子生検と比べて出血のリスクが高く、高い技術が求められるため、容易に導入できるものではありません。他医療機関のお手本となれるよう、症例で経験を重ねながら、より正確な手技の習得に努めていきたいと考えています。
関連情報
お話を聞いた先生
呼吸器内科 医長
神宮 直樹(しんぐう なおき)
本件に関するお問い合わせはこちら
患者さん
医療機関から