脳卒中治療のエキスパートが解説する「てんかん」という病気
当院脳卒中センター特別顧問である、橋本洋一郎医師に「てんかん」についてお話を伺いました。
橋本医師は日本脳卒中学会の理事や日本脳卒中協会の常務理事、日本脳卒中医療ケア従事者連合の監事などを務め、これまでに熊本脳卒中地域連携ネットワーク研究会(K-STREAM)の創設・構築、わが国の脳卒中センターの提唱・制度設計・認定など、熊本だけでなく日本の脳卒中治療の普及と啓発に尽力。脳卒中治療の第一人者である他にも、頭痛、てんかん、認知症、不眠症、禁煙、リハビリテーション、医療連携などにも精通しています。
3月26日は「てんかん啓発の日」に設定され、世界中がそのシンボルカラーであるパープルに彩られます。
この機会に“てんかん”という病気について勉強してみませんか。
てんかんとは
人間の脳は、電気信号によって情報を伝えています。この電気信号が脳の異常な興奮により過剰になると、一過性の神経症状(てんかん発作)を引き起こします。
子供や高齢者に発症することが多い疾患です。
高齢者に発症する原因は、脳梗塞や脳出血などの脳卒中、あるいは頭部外傷などで、脳組織が障害を受けた場合に発症することがあります。脳卒中後には5%程度の患者さんに発症し、脳卒中発症から数年以内に起こることが多いと言われています。
子供や若い方では原因が特定できない場合も少なくありません。
てんかんの種類
臨床の現場では、全身けいれんをきたすような全般発作と、軽い発作である部分発作(下表参照)に分けることが多く、さらに原因不明の特発性てんかん、脳卒中発症後(後遺症)などによって起こる症候性てんかんに分けることがあります(専門的には複雑な分類があります)。
軽い発作の例
- 1点を見つめぼーっとしている。
- 動作が止まってしまう。
- 無意識に「口をもぐもぐ」、「手をもぞもぞ」、「体をゆらゆら」させる。
- 何をしていたか覚えていない(出来事の前後関係を思い出せない)。
- 呼びかけに応答しない、要領を得ない返事をする。
原則として毎回同じ症状が現れます。
主な検査
- 頭部CT/頭部MRI
- 脳波検査
- 脳血流シンチ
- PET、PET/CT
- 血液検査
治療の流れなど
- 救急搬送されるようなけいれん重積※状態の場合は、まず注射や点滴で治療します。
※てんかん重積ともいい、発作が5分以上続いたり、短い発作が意識の戻らないうちに繰り返し起こる状態 - てんかんと診断された場合には飲み薬で治療を継続します。
- 飲み薬だけで発作が完全に抑えられない場合は、脳の外科治療、迷走神経刺激療法、あるいは特別な食事療法などが行われる場合があります。
日常での注意点
- てんかん患者さんの多くが適切な治療を受けることにより、日常生活を送ることができる時代になっています。
- てんかん発作がうまく抑えられたにもかかわらず、その後再発する方の多くに“薬の飲み忘れ”があるようです。飲み忘れがないようにしましょう。
- 睡眠不足で発作を起こすことがあります。十分に睡眠をとるようにしましょう。
- 副作用や飲み合わせの制限が少ない新しいお薬が出ていますが、お薬の価格が高いのが難点です。自立支援の診断書の作成で医療費を軽減できる制度がありますので、一度、主治医にご相談ください。
- てんかんの患者さんでけいれん発作をおこすと5年間(病状が安定していれば診断書作成で2年間)、車の運転ができなくなります(発作によって期間が変わってきます)。車の運転についても主治医の先生とご相談ください。
- 妊娠の予定がある方でも、薬剤を選定・調節できますので主治医とご相談ください。
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