治験~治験のハテナ?教えます~
病気と闘う患者さんの選択肢となり、やがて、より多くの患者さんを救うことにつながる。
「治験」という言葉を聞いたことがありますか?
どんなイメージがあるでしょうか?
不安、怪しい、よくわからない、など ネガティブな先入観を持つ方も多いかもしれませんが、実際は、医療を支える重要な仕組みのひとつ。
その背景や意義を正しく知ることで、あなたや、あなたの大切な人が病気になった時の治療の選択肢となり、そしてそれが、やがて広く社会の役に立つかもしれません。
治験ってなに?
医学の進歩は、新しい薬の開発とともに歩んでいるといえます。その薬が医療現場で広く使えるようになるまでには、安全性や有効性などを確かめる地道なプロセスが必要です。
動物で試験されたあと、次は人に対して有効か、安全かどうかを試験・確認することで、国(厚生労働省)から正式な薬として承認されます。この「人を対象とした臨床試験」のことを「治験」といいます。
現在、当院で実施している治験
間質性肺疾患、肺癌、心不全、心筋梗塞、偏頭痛など
参加可能な期間が終了している場合があります。
当院は急性期病院であるため、救急車で運ばれてきた急性期の患者さんで、意識不明などご本人の判断が難しい場合にも、治験薬で病状の改善が期待できると判断した場合に、代諾者(ご家族など)の了承を得ることで治験薬を使用するケースもあります。
薬ができるまでの道のり
治験の進められ方
インフォームド・コンセントとは
「インフォームド・コンセント」とは、治療を受ける前に、病気や治療方法などについて、医師から詳細な説明を受けること。しっかり理解・納得したうえで、患者さん自身の意思でその内容に同意することです。治験においてのインフォームド・コンセントは、治験の目的や実施方法が示された具体的な文書をもとに、医師や治験コーディネーターが患者さん(治験参加者)に説明し、理解・納得したうえで同意することです。
治験Q&A
治験って安全なの?
それまでの臨床試験で安全性が確認された薬だけが、当院の治験の対象となります。
動物での試験、人での第Ⅰ相の臨床試験で安全性が確認されたものだけが当院での治験対象となるため、基本的な安全性は担保されています。 そのうえで、メリット(薬の効果など)とデメリット(副作用など)をインフォームド・コンセントでしっかりと説明し、ご理解いただいてから進めます。
治験でよく耳にする「プラセボ」って何?
薬のそっくりさん=偽物の薬のことです。
見た目や味は治験薬とまったく同じで、薬としての有効成分は含まれていない、いわばそっくりさんのような「偽物の薬」です。治験の際、有効成分を含んでいないのに、「効く薬を飲んだ」という思い込みで効果が出ることがあります。これを「プラセボ効果」といいます。プラセボ効果により正しい結果が得られないことを避けるため、治験では「治験薬を服用する患者さん」と「プラセボを服用する患者さん」の2グループに分けられます。つまり「治験薬を飲んだつもりになる」ために、そっくりさんが必要になるということです。
治験の副作用は大丈夫?
通常の治療以上に、慎重に副作用を確認しながら進めます。
治験薬に限らず、どんな薬にも副作用はあります。治験を受けている間は、通常の治療よりも詳細な診察、経過観察、検査を行います。患者さんの体調の変化に一層注意を払い、患者さんの安全を第一に、さまざまなことに配慮しながら進められます。
新しい薬を使えるということは、費用が高いのでは…?
費用負担はありません。
治験薬や検査代などについて、患者さんの費用負担はありません(保険対象の標準治療にかかる費用は、他の患者さんと同様に必要となります)。それに加えて、来院ごとの交通費や食事代を補助する「負担軽減費」も支払われます。これは、治験期間中は体調の変化などをより慎重に把握・観察する必要があり、通院や検査の頻度が多くなることがあるためです。
「治験バイト」と何が違うの?
まったく違うものです。
薬の承認に必要な治験のうち、いわゆる「治験バイト」はその「第Ⅰ相(※上記:薬ができるまでの道のり図参照)」であり、主に副作用を調べるために、病気ではない健康な人を対象に行われます。
健康な人なので、目的が治療ではなく薬の安全性確認です。「バイト」という言葉も正しいものではなく、新しい薬を世に出すために有償で協力いただくボランティアと位置づけられます。
一方、当院で行っている治験は臨床試験の「第Ⅱ相」または「第Ⅲ相」であり、副作用だけでなく薬の効果について調べるために、実際に病気に罹患している患者さんを対象に行うものです。その薬に効き目があればそのまま治療につながります。
ただし抗がん剤などの治験は、健康な人を対象に行うことが難しいため、第Ⅰ相の治験から実際の患者さんを対象に行われます。
途中でやめることはできる?
いつでもやめられます。
参加した後からでも、患者さんの自由意志でいつでもやめることができます。 途中でやめた場合にも、通常の治療を継続して受けられるなど、その後の治療に不利益を受けないようになっています。
プライバシーは守られるの?
守られます。個人情報は公開されません。
治験の結果はその薬を申請するための資料として利用されますが、参加した患者さんの個人情報が公表されることはありません。 製薬会社や厚生労働省がカルテや検査データを確認することがありますが、その場合も同様です。
「治験に参加したい」と思ったらどこに相談すればいい?
当院の治験事務局、または現在治療中の病院へ。
治験について興味のある方、詳しく知りたい方、参加してみたいと考える方は、ぜひ当院の治験事務局にご相談ください。正式な治験参加の際には、現在治療している病院・医師と協議のうえで進める形になりますので、かかりつけの医師にご相談いただいても差し支えありません。
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