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済生会熊本タイムズ

地域に最先端の医療をいち早く提供する当院の取組みや様々な情報をご紹介します。

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「臨床研究・治験センター(仮称)」の開設に向けて

治験の実施を増やすことでもっと多くの患者さんを救い、もっと多くの新薬開発に貢献したい。

当院では、治験のための体制強化として「臨床研究・治験センター(仮称)」の開設に向けて準備中です。
その中心を担うお二人に、当院の治験の現状や将来像について伺いました。

 

呼吸器内科部長 一門 和哉

呼吸器内科部長 兼 臨床研究支援室長
一門 和哉 Kazuya Ichikado
趣味のガーデニングの延長線上で自宅の庭をまるごと張り替えた。

治験事務局 中野孝一郎

治験事務局 臨床検査技師
中野孝一郎 Koichiro Nakano
鹿児島出身でずっと焼酎派だったが、最近になって白ワイン派に転向。晩酌は日課。

標準治療で病状が改善しない患者さんの選択肢に。

一門 治験というものをご理解いただくにあたって、まず前提にあるのが「標準治療」です。すでに臨床治験・試験などで有効性が証明されていて、現在の日本において最善と認められている治療のことで、保険も適用になります。当院でも他の医療機関でも、通常はこの「標準治療」を行います。

中野その標準治療を行っても、すべての患者さんが治るわけではなく、病状が改善しない場合もあります。そのような患者さんのうち、一定の体力がある、アレルギーがない等、製薬会社が定めた基準をクリアできた方に、治験という選択肢をご提案する流れになります。

ご提案にあわせて、治験のメリットやデメリットなどを詳細にご説明(インフォームド・コンセント)します。副作用やプラセボへの不安などで、この段階でお断りされる方も2割程度いらっしゃいます。

一門 このように、治験は当院から患者さんにご提案することが大半ですが、最近はネット等で情報収集し、ご自身から希望される方も少しずつ増えています。「済生会熊本病院でこういう治験をしているそうなので、紹介状を書いてほしい」と、治療を受けている病院に相談されて、当院に依頼が来る、という流れです。病気と闘う患者さんにとって、従来の薬にはない効果が期待できるので、それくらい熱心な方もいらっしゃる、ということです。我々もできるだけ熱意に応えたいと考えています。

中野実際に治験をスタートしたあと、私の肌感覚ですが、おおよそ半数の患者さんに治験薬の効果が出ていると感じます。治験は新薬開発を目的としたものですが、参加する患者さんにとっても十分にメリットとなる可能性を秘めていると思います。

「知っていたらご紹介したのに」が、悔しい。

一門 治験に関わっていて、いちばん悔しいのが「この治験、済生会熊本病院でも実施されていたんですね」と他病院の先生から言われたとき。「知っていたら患者さんをご紹介したのに」となって、そのたびにアピール不足を痛感します。周囲の基幹病院への適切な情報伝達が課題です。

ご提案にあわせて、治験のメリットやデメリットなどを詳細にご説明(インフォームド・コンセント)します。副作用やプラセボへの不安などで、この段階でお断りされる方も2割程度いらっしゃいます。

中野実施件数としては年間30件程度で、決して少なくないのですが、もっと周知していればもっと多くの患者さんにご参加いただくことができたのに、ともどかしい思いがあります。

治験のセンター化で機運を高めたい。

一門 治験は基本的に、製薬会社からの依頼で行われます。つまり、製薬会社に〝選んでもらえる〟病院でないと、治験の実施も増やせない、患者さんに治験のチャンスを提供できない、ということです。

そのためには情報発信が必要になります。学会発表や専門誌などへの論文発表を行うことで、施設としての存在感を高め、積極性を示していく。その内容も精度を高めていく。現在当院で行っている治験も、そのようなこれまでの努力の結果で声がかかり、実現しているものです。

中野当院では「臨床研究・治験センター(仮称)」の開設に向けて準備中です。その目的は、人員や体制の強化でより多くの治験を実施できるようにすることですが、一言でいうと「治験をもっと盛り上げたい!」という気持ちです。

一門 医師をはじめスタッフのみなさんに、「うちの病院でこんなことができるんだ!」や、「治験に参加して医学的なエビデンスを創出し、患者さんに還元しよう!」など、前向きな機運を高めたい。そしてやがては、「あの治験に参加しているこの病院で働きたい」とリクルートにも繋げたい、と未来予想図を描いています。

当院の治験の成果で世界に広がることもある。

一門 私の専門である間質性肺炎の分野は、グローバル治験が通常で、症例データが世界的に共有されて新薬の開発が行われています。当院が参加した治験結果から日本中、さらには世界中の患者さんに投与されるようになったケースも実際にあります。目の前の患者さんだけでなく、より多くの命を救うことにつながっていくのは、通常の治療とはまた違うやりがいを感じます。そんなやりがいも共有したいですね。

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