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済生会熊本タイムズ

地域に最先端の医療をいち早く提供する当院の取組みや様々な情報をご紹介します。

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人工透析の〝常識〞を変えたい

日本では人工透析の大半が「血液透析」ですが、じつはもうひとつの「腹膜透析」のほうが優位点が多く、当院では積極的に腹膜透析をおすすめしています。

腎臓の代わりに老廃物を体外に出すのが、人工透析

腎臓は、体の中に溜まった老廃物や摂り過ぎた塩分などを、尿として体外へ排出してくれる臓器です。その機能が低下することを「腎不全」といいます。慢性的な腎不全になると、機能が回復することはほぼありません。そうなると何らかの方法で老廃物を体外へ排出せねばならず、現在の医療では「腎臓移植」と「人工透析」の選択肢しかありません。

腎臓移植は、自分以外の人から2つある腎臓のうち1つを譲ってもらう、というもの。日本で最も多いのは夫婦間での移植です。

少しでも自分の腎臓に働いてもらうほうが長生きにつながる

人工透析は、腎臓の代わりに体外で老廃物を除去する対症療法で、「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。当院では、多くのメリットがあることから、できるだけ腹膜透析をおすすめしています。

 まずわかりやすいメリットは、通院回数を減らせること。血液透析は週3回程度の通院が必要ですが、腹膜透析は自宅でできるため、通院は月に1〜2回で済みます。自宅以外でも可能で、仕事や通学、出張、旅行などの選択肢も広がります。

 また、血液透析のように毎回太い透析針を刺す必要がなく、痛みがないことも特徴です。

 そして最も大きなメリットは、残存腎機能を維持しやすいこと。わずかでも残った腎機能に仕事をしてもらうことで、老廃物の自浄作用の一部を残すことができ、結果として余生の健康や長生きにつながります。もともと腎機能にはかなり余力があり、必要量の300%以上のキャパシティがあると言われています。腎臓移植が可能なのも、1個を移植しても150%が残るためです。

腹膜透析と血液透析の違い

腹膜透析と血液透析の違い

「自分でやるのは難しそう」という先入観を崩したい

このようにメリットの多い腹膜透析ですが、じつは日本で人工透析に占める割合はわずか3%程度です。これは諸外国と比較しても少ない数字です。

その理由は大きく2つ考えられます。1つは、対応施設が少ないこと。日本では人工透析=血液透析のみという施設もまだ多く、患者さんが選択する余地もないまま漫然と血液透析が行われています。

もう1つの理由は、「自分で行うのは難しそう」という患者さん側の先入観です。血液透析は週3回の通院は必要でも、病院にさえ来ればあとはお任せなのに対して、腹膜透析は自分(またはご家族など)が機械の操作などを行う必要があり、その手間を懸念する方もいます。しかし慣れてしまえば難しいものではなく、全て自分で行っている80代の患者さんもいます。もちろん全部を一人でせずとも、ご家族や周囲のサポートを前提に選ぶ方も多くいます。

地域で腹膜透析を支えられる仕組みづくりを

当院の考え方は「腹膜透析に力を入れる」というよりは「腹膜透析が適している(のに選べていない)患者さんに、きちんと選んでもらえるようにする」というスタンスです。

そのためには、まず「腎臓移植」「腹膜透析」「血液透析」という3つの選択肢があり、それぞれの長所短所を正しく患者さんに理解してもらうこと。そして同時に、自宅で腹膜透析を行いやすいシステム構築も重要と考えています。具体的には病院単独ではなく、訪問看護ステーション、各種施設、行政などが連携し、地域でサポートする体制を整備していきたい。

全国では約3%ですが、当院では約20%が腹膜透析を選んでいます。もちろん血液透析や移植のほうが適した患者さんも多く、無理に数字を伸ばすことが目的ではありませんが、当院から熊本の、そして日本の人工透析の常識を変えていきたいです。

副島 一晃

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