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済生会熊本タイムズ

地域に最先端の医療をいち早く提供する当院の取組みや様々な情報をご紹介します。

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鼠経部ヘルニアのテーラーメイド治療 ~それぞれの患者さんにとって最適な鼠径部ヘルニア手術の追求~

国際ガイドラインに準拠した手術術式の実践

鼠径部ヘルニアについて

鼠経部ヘルニアは、本来お腹の中にとどまっているはずの腸や脂肪組織などが足の付け根のところから皮膚の下にはみ出してくる病気です。よく「脱腸(だっちょう)」とも呼ばれますが、これは俗称です。成人の鼠径部ヘルニアは40歳を過ぎたあたりから症状が出る人が徐々に多くなり、70歳台が発症のピークと言われています。厚生労働省の推計によれば年間の手術件数は15万件にのぼり、消化器・一般外科が担当する手術の中で最も多く行われています。

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非常に多くの手術方法があるという特徴

鼠径部ヘルニアは手術が唯一の治療法です。昔は組織を針と糸で縫い合わせる手術でしたが、現代の手術ではポリプロピレンなどの人工素材でできたメッシュシートでヘルニアが出てくる穴にパッチをあてるように塞いでしまう「メッシュ法」が一般的です。しかし、ひとくちにメッシュ法といっても実際にはその中で非常に多くの手術方法が存在します。鼠径部を切開する方法(鼠径部切開法)として主なものだけでもMesh Plug法、Lichtenstein法、Kugel法、TIPP法、Bilayer Patch Device法、ONSTEP法など多数あり、腹腔鏡手術でもTAPP法とTEP法の2種類があります。さらに、腹腔鏡手術では全身麻酔が基本となりますが、鼠径部切開法の場合は麻酔方法として全身麻酔・腰椎麻酔・局所麻酔のいずれも選択可能という特徴があります。このようにひとつの病気で手術方法や麻酔方法にいくつもの選択肢があるというのは他の外科疾患ではあまり見られない、鼠径部ヘルニア特有の事情です。

これら多くの術式の中でどれが一番良いのかという疑問に答えるため、これまで主に海外で様々な研究がなされてきましたが、明確な結論は出ないままでした。2015年に出された我が国のガイドラインではどの術式も同等に優れているので、外科医の慣れた方法であればどれを選択しても良いということになっており、病院あるいは外科医が各々の経験と考えで手術方法を選択しているというのが現状です。しかし、2016年に初めてまとめられた国際ガイドラインには推奨する術式としてLichtenstein法、TAPP法、TEP法の3つが明記されました。Lichtenstein法は海外では以前から一般的な方法でしたが、実はこれまで日本ではごく一部の病院でしか行われてこなかったという歴史的経緯があるため、今後我が国のガイドラインがどのように変わっていくのかが注目されるところです。

国際ガイドラインに準拠した当院の手術

当院では鼠径部ヘルニアの手術方法として、まさに国際ガイドラインで推奨されたLichtenstein法、TAPP法、TEP法の3つを基本的な術式と位置付けて診療にあたっています。Lichtenstein法は局所麻酔でも施行可能であり、手術操作が腹壁の深いところまで及ばないので傷のまわりを圧迫することで術後の出血をある程度予防できるというメリットもあると考えています。腹腔鏡手術であるTAPP法とTEP法は術後の痛みが鼠径部切開法よりも軽い傾向にあり、また左右両側の鼠経部ヘルニアを同じ傷で手術できるなどのメリットがありますが、慣れを要する独特の手術操作が多いためある程度経験を積んだ外科医が手術に関与することが求められます。

 

国際ガイドラインの推奨術式
Lichtenstein法のイメージ
Lichtenstein法のイメージ
Lichtenstein法で使用するメッシュ
Lichtenstein法で使用するメッシュ
腹腔鏡手術のイメージ
腹腔鏡手術のイメージ
腹腔鏡手術のメッシュ補強イメージ
腹腔鏡手術のメッシュ補強イメージ

画像提供:いずれも株式会社メディコン

当院の診療体制

当院は熊本県下で唯一(2022年9月現在)、日本内視鏡外科学会の技術認定をヘルニア領域で取得した医師が在籍しており、チームで協力して診療にあたっています。

患者さんのもつ様々な背景に合わせた手術を

病院にはいろいろな背景をもった鼠径部ヘルニアの患者さんがいらっしゃいます。他に持病を持っていない元気な人、以前にお腹を切る手術を受けたことがある人、心臓・肺・腎臓など重要な臓器に障害がある人、血液を固まりにくくする薬を常用している人など本当に様々です。そういった体の状況次第で鼠径部ヘルニアのベストな手術方法・麻酔方法は変わってくると我々は考えており、つねにその患者さんに最も適していると思われる手術方法を検討し、提案しています。もし患者さん自身が希望する特定の手術方法がある場合は、本人とよく相談して納得のいく治療方針をたてるようにしています。

鼠経部ヘルニアで悩んでいる方へ

当院では鼠径部ヘルニア手術の際は手術当日入院・翌日退院の1泊2日を標準の入院スケジュールとする短期滞在手術を実践していますので、仕事など忙しい方でも手術を受けやすくなっています。 心臓や肺が悪くて全身麻酔の危険度が高い方には麻酔リスクを最低限とするために局所麻酔下での手術も積極的に行っていますので、他院で手術ができないと言われた方でも対応できる可能性があります。お困りの方はぜひ当院までご相談ください。

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