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済生会熊本タイムズ

地域に最先端の医療をいち早く提供する当院の取組みや様々な情報をご紹介します。

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遺伝子情報を調べて、オーダーメイドのがん治療を提供

治療法が見つからない患者さんと有効な治療薬をつなげる「がんゲノム医療」

がんゲノム医療とは、患者さんのがん細胞の遺伝子を調べてその方に合う治療薬を探し、最適な薬物療法へ導く医療です。当院は2021年4月にがんゲノム医療連携病院に指定され、2024年4月末までに230件以上のがん遺伝子パネル検査の実績があります。

遺伝子に起こる突然変異の蓄積が、がんの引き金になる。

遺伝子の情報を調べることが、なぜがん治療につながるのか。その理由はがんが生じる過程にあります。ヒトの体は37兆個の細胞で形作られていて、細胞一つひとつにあるDNAという物質には、全てのタンパク質の設計図である約2万5千個の情報(遺伝子)が書き込まれています。その設計図を読み解くことができれば、生まれ持った体質や特徴がわかります。そしてがんは、ひとつの細胞の中で遺伝子の異常(突然変異)が何度も積み重なった結果、起こる病気です。そのため、同じ場所にできた同じがんであっても、一っとして同じ遺伝子のものはないほど違いがあります。

患者さんにとって最適な薬物療法を探す医療。

がんゲノム医療は、細胞ががん化していく遺伝子変異の全体像を、一回のがん遺伝子パネル検査で明らかにし、患者さん一人ひとりに合った治療(個別化治療)へつなげる医療です。同じ臓器のがん治療で同じ薬剤を使っても、人によって効果が全く異なることはよくあります。個々の患者さんのがん細胞の遺伝子変異情報を調べることで発症の原因となった遺伝子変異の特徴がわかり、その方のがんにだけ有効な治療が見つかるケースがあるのです。また、この検査を受けることで、がんにかかりやすい遺伝子変異を生まれつき持っているとわかることもあり、本人の治療薬の選択だけでなく、家族のがん予防や健康管理に役立つ場合もあります。がんゲノム医療は保険診療で受けられますが、現時点では対象が限られています。標準治療が終了または終了見込みの方、原発不明がん・希少がんの方が対象です。

がん治療には、大きく分けて手術、放射線治療、薬物療法の3つがあります。以前の薬物療法といえば、がん細胞の増殖を抑える薬剤が中心でした。しかし近年では新しい薬が次々と開発されています。たとえば従来の抗がん剤のようにがん細胞を直接攻撃するのではなく、免疫細胞ががん細胞を見つけて攻撃する手助けをする薬(免疫チェックポイント阻害薬)などが登場しています。その代表例がオプジーボです。オプジーボはその画期的な効果により、開発者の一人である本庶佑教授は2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

がんゲノム医療は、こうしたさまざまな薬物療法の中から、その患者さんに最も適した治療法を見つけ出すために用いられています。標準的な治療を全て試した方でも、新たな治療の可能性が広がるのです。

がんゲノム外来受診の流れ

一人でも多くの患者さんに活用してほしい。

現在のがん遺伝子パネル検査で有効な治療薬が見つかるのは100人中10人未満。患者さんに合う治療薬が見つかるケースは正直なところ少ないのが現状です。しかし検査を受けたことで特定の薬が有効とわかり、延命につながった症例も複数あります。検査を受けないことで折角の治療機会を失わないことが重要です。令和元年から国内でも始まったがんゲノム医療は、まだあまり認知や理解が進んでいないことが課題です。がんで亡くなる方は日本で年間約30万人以上ですが、がん遺伝子パネル検査を受けているのは全国で年間1万人ほどにすぎません。標準治療の途中で亡くなられる方や、病状の進行具合や併存疾患のために十分な治療を受けるのが難しい方もおられます。しかしその一方で、がんゲノム医療の恩恵を受けられるのに、その機会すら与えられない患者さんが多数いると予想されます。原発不明がんや希少がんの方は最初から検査が受けられますし、標準治療中でも治療戦略を考える上で参考になる可能性があります。

がんゲノム医療が受けられる病院は当院を含め熊本県内に3ヵ所だけです(2024年6月現在)。当院では、集学的がん診療センターで標準的ながん薬物療法やがんゲノム医療を一貫して行っているため、いずれの治療も並行して検討できます。

地域における最先端の医療やご家族を含めたがん予防の機会まで提供することが私たちの使命です。お気軽にご相談いただき、がんゲノム医療を一人でも多くの方にご活用いただければと思います。

関連情報

お話を聞いた先生

小田 尚伸

がんゲノムセンター長 兼
総合腫瘍科 がん先端医療推進部長
小田 尚伸(おだ ひさのぶ)
体型維持のために始めたエアロバイク。トレーニング中のBGMは安室奈美恵。

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