僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症とは
肺で酸素を取り入れ、きれいになった血液は、心臓の左心房から左心室へと移動し、全身へ押し出されます。この左心房と左心室の間にあって、2つの部屋を遮るドアとなり、血流を一定方向に保つ役割を果たしているのが僧帽弁です。僧帽弁閉鎖不全症とは、僧帽弁が完全に閉鎖されないために、一度左心室へ送り出された血液が左心房内へ逆流する病気のことをいいます。
発症の原因
僧帽弁を支える腱索という組織が切れたり伸びたりして、僧帽弁の位置がずれてしまうことによって起きる僧帽弁逸脱症が、主な原因となっています。ほかにもリウマチ熱や心房細動が原因となって起きる場合もあります。
症状
軽症の場合は症状を感じることはありませんが、放置すると気づかない間に症状が進行する病気です。進行すると運動時に息が切れるようになり、更には運動時だけでなく、散歩や着替えなどの軽い動作時にも呼吸が苦しくなります。更に悪化すると、不整脈や心不全が起きることもあります。
合併症 | 心不全、心房細動、肺高血圧 |
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検査について
主に心臓エコー検査で診断します。これにより弁の大きさや長さ、硬さの程度、逸脱の有無や逆流の程度など多くの項目を調べることができ、これらの情報を総合して、主たる原因や重症度を判断します。
より詳細に弁や心臓の状態を観察したい場合は、超音波の端子を食道内に入れて心臓の裏側から超音波を当てることができる、経食道心エコーや、心臓カテーテル検査が行われることもあります。
また、原因となっている他の疾患(不整脈)がないかを調べるために心電図検査も行います。
治療方法
患者さんの状態に応じて方法を選択します。
内科的治療 |
「MitraClip®を用いた経皮的僧帽弁接合不全修復術」が2018年4月に保険適用となり、現在当院でも治療を開始しています。このカテーテル治療は、「僧帽弁閉鎖不全症」を改善する治療方法で、外科的弁置換術・形成術の危険性が高い、もしくは不可能と判断された場合に適応となります。高齢などで外科手術が不可能だった患者さんにも治療の選択肢が拡がりました。詳細は特設サイトをご覧ください。 また、症状が軽度であれば、薬による治療を行います。心臓の負担を減らす薬や不整脈を予防する薬、血液を固まりにくくし、血栓を予防するお薬を用います。 |
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外科的治療 |
自覚症状があるなど症状が進行している場合は、外科手術の適応となります。
僧帽弁置換術は僧帽弁を切り取って、代わりに人工弁(機械弁または生体弁)を縫い付ける手術です。
一方、僧帽弁形成術は自らの弁を利用して行う手術で、僧帽弁の逆流の原因となっている部分を切り取って縫い合わせたり、広がった弁輪を縮小したりして僧帽弁がきちんと閉じるようにする手術です。弁置換術に比べて術後に感染症や血栓塞栓症が発生する危険性が低く、手術からの回復も早いというメリットがあり、形成術が可能な場合はこれが第一選択となります。ただし技術的に高度なこともあり、全ての患者さんに行えるとは限らず、そのような場合には弁置換術を実施することとなります。最近は切開部分を小さくし、なるべく身体への負担を減らす術式(MICs)も多く行われています。さらに2019年からは、ダヴィンチを用いたロボット支援下手術も開始しています。
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