乳がん放射線治療における済生会熊本病院の取り組み
当院では、2018年から乳がん術後に対する放射線治療を開始し、これまでに120例以上の治療を実施しました。患者さんにとってよりよい診療が行えるよう、日々、改善を重ねています。この記事では、乳がん放射線治療における当院の取り組みについてご紹介します。
スタッフ
看護師による充実した患者ケア
がん放射線療法看護認定看護師を含む2名の看護師が常駐し、患者さんへ丁寧な問診を行います。患者さんが安心して治療を受けられるよう、可能な限り心身のサポートをします。また、必要時には当院の「緩和ケアチーム」が介入します。
女性の放射線技師がメインで対応
治療室内に患者さんと男性の放射線技師のみ・・・そのような状況にならないよう、女性の放射線技師がメインで対応できるような人員配置にしています。
認定資格を取得した放射線技師が豊富に在籍
当院で学会の専門認定を受けたスタッフ数
がん放射線療法看護認定看護師 | 1名 |
放射線治療専門放射線技師 | 3名 |
放射線治療品質管理士 | 3名 |
医学物理士 | 3名 |
患者さん一人ひとりに、より安全で精度の高い放射線治療を提供するため、ガイドラインに準じた機器の精度管理の徹底はもちろん、放射線治療の安全性をより向上させるとともに、放射線医学の領域でのより深い技術習得のため認定資格の習得に励んでいます。
治療室
患者さんに治療を受けていただく治療室内は、木目と黄緑色を基調とした優しい雰囲気となっています。天井には、大きな天窓のように見える「スカイシーリング」を採用しています。大型の機械で不安になる方もいらっしゃいますので、治療室内はできるだけ優しい雰囲気になるよう心がけました。
治療技術
熊本県内で初めて、左乳がんに対する深吸気息止め放射線治療(DIBH)を導入しました。
左側の乳がんに対して放射線治療を行うと、数年~20年間、心疾患を発症するリスクが上がるという研究報告があります。その研究では、心臓が被ばくを受ける放射線量と心疾患の発症率は比例関係にあると報告されました。それを受けて、乳癌診療ガイドライン2018年版には、左乳がん術後の放射線治療において「心臓への被ばく低減の配慮は必須である」と記載がされています。
そこで近年、注目が集まっているのが深吸気息止め放射線治療(DIBH)です。 以下の図のように、深く息を吸った状態では、心臓の形が変わり、通常と比べて放射線が当たりづらくなります。
深く吸った状態で息を止めてもらいながら放射線を当てることで、心臓の被ばく低減が可能となる照射法です。適応基準がありますので、医師が慎重に適応を決定します。
当院では患者さんにとって利益のある最新の技術を、積極的かつ慎重に取り入れています。
深呼気息止め照射治療(DIBH)については、本治療を受ける方向けの説明動画を公開しています。治療方法について詳しく知りたい方も、ぜひご覧ください。
さいごに
乳がん術後の放射線治療を受けられる患者さんにとって、少しでも負担を減らせるように、人・環境・技術の向上に努めています。
これからも、よりよい放射線治療部門を目指して努力してまいります。
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