~肺がん~ 薬物療法の最前線
肺がんは、日本人の全がん死因の約5分の1を占め、がんの中での死亡数がトップとなっています(がん情報サービス:がんの統計2022より)。毎年約7万人以上の方が亡くなり、最も予後が悪いとされている悪性腫瘍の1つです。一方で、近年は治療機器や薬剤の進歩により、治療成績の向上が得られています。今回、当院で行っている肺がん薬物療法の“今”について、呼吸器内科の坂田先生にお話をうかがいました。
肺がんの薬物療法とは?
がん薬物療法とは、その名の通り薬剤を使用したがんの治療のことであり、薬の服用や注射によって、がん細胞が増えるのを抑えたり、がん細胞を壊したりする作用が期待できます。がんの進行度や種類に応じて、肺がんは大きく2つの種類(小細胞肺がん/非小細胞肺がん)に分けて治療されますが、以前の薬物療法では、いずれもいわゆる「抗がん剤」として認識されている、殺細胞性抗がん剤による治療が主体となっていました。
しかし近年、新たな柱として“分子標的治療薬”と“免疫チェックポイント阻害剤”が加わり、肺がんの薬物療法戦略は大きく変わることとなりました。治療の柱が増えたことで、その組み合わせによる選択肢が増え、予後の延長など治療成績は年々向上しています。
新薬の開発や治療方法の進歩にはめざましいものがあり、肺がんを薬で完全に根治させることも夢ではなくなってきました。しかし一方で、様々な種類の薬や、それにより生じる多彩な副作用を管理しなければ、十分な治療効果は得られません。当院では主治医だけの判断ではなく、最新のガイドラインに準じ、かつ検討会での議論を経て、最適な治療薬の選択を行っています。
また、救命救急センターを擁する当院では、例え夜間に副作用の症状が出たとしても、お電話で薬剤師や看護師が対応し、適切なトリアージを行うことが可能です。がんと診断されることは、多くの方にとって大変なショックを受けられることと思います。当院では他部署と協働して、患者さんの不安に応える体制を構築しています。
当院の治療実績
呼吸器内科における、薬物療法(外来点滴治療)の年度ごとの実施件数は以下の通りです。
治療予後の向上や、患者数の増加に伴い、年々実施件数は増加しています。
呼吸器内科 外来点滴治療実施件数
臨床研究への積極的な参与
熊本における臨床研究のリーディングホスピタルとして、多施設共同臨床試験や新薬開発のための臨床治験にも積極的に参加しています。よりよい治療法の開発に寄与するとともに、治験という形で、治療選択肢が限られている進行性の肺がん患者さんに対して、治療機会の提供を行っています。
なお、近隣医療機関の先生方との連携が以下の治験件数に結びついており、地域をあげて、がん診療の進展を推進しております。
肺がんの臨床研究実施件数推移
肺がんの治験受託件数推移
関連情報
お話を聞いた先生
呼吸器センター 呼吸器内科医長
日本臨床腫瘍学会(がん薬物療法専門医)
日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)
坂田 能彦(さかた よしひこ)
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