あきらめないで!片頭痛
「病院へ行くほどのことじゃない」「行っても治らない」と思い込んでいませんか?
日本人の4人に1人が頭痛に悩んでいるというデータがあります。片頭痛だけでも約840万人の患者がいると言われ、私たちの日常の生活に大きな支障をもたらしています。「たかが片頭痛」と放置したり、「そもそも病気じゃないから治らない」と諦めていませんか?正しく治療すれば、片頭痛は抑えられます。その背景を知るとともに、しっかり治療を図っていきましょう。
監修:脳卒中センター特別顧問 橋本洋一郎 医師
まず、頭痛の種別を知ることから
要注意!後遺症や命に関わる場合も!
片頭痛は、たくさんある頭痛の分類の中のひとつです。頭痛は大きく二種類あり、頭痛そのものが病気である「一次性頭痛」と、別の病気の症状として起こる「二次性頭痛」に分類されます。二次性頭痛は、その裏に大きな病気が隠れていることも多く、例えば、くも膜下出血が原因の頭痛は、「雷に打たれたような激痛」と言われます。なかでも脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、カテーテル治療や手術などですぐに対処しないと後遺症が残ったり死に至ることもあります。
一方、片頭痛などの一次性頭痛はすぐ命に関わるものではありません。しかし「一次性なら心配ないだろう」と甘く見るのは間違いです。
何年、何十年と慢性的に続くこともあり、その痛みや悩み、そこから生まれる社会的損失は想像以上に深刻です。
頭痛の種類
片頭痛トリビア01 「「片頭痛」だから痛いのは片側だけ?」
片頭痛という名称は、片側のこめかみ付近がズキズキと痛むことが由来。しかし実際には、片頭痛患者さんの4割近くが頭の両側が痛む経験をしています。そのため、「片頭痛」=「頭の片側だけの痛み」とは限りません。
男性 < 女性・中高年 < 若年層
片頭痛は、最も忙しい世代の女性に多い!
調査によると、日本人で片頭痛を持つ割合は8.4%。少なく感じるかもしれませんが、女性に限ると12.9%、30代女性では約20%に上るなど、バリバリ働く世代の女性に多いということです。片頭痛は女性の生理と深く関連しており、小学校高学年ごろから増え始め、30代後半~40代前半でピークに。40代後半から更年期で減り、その後閉経で無くなる、というケースが多くなっています。
ずっと片頭痛があった方が、妊娠するとなくなることがあります。これは、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが妊娠中に増えるため。エストロゲンが多いほど、頭痛になりにくいのです。逆に生理時には減るため、片頭痛発作が起きやすくなります。残念ながら出産後しばらくするとエストロゲンが通常に戻り、出産後1ヵ月で約半数の方に片頭痛が再発します。
意外なものも要因になる?
片頭痛の“トリガー”は、多種多様!
片頭痛には、頭痛発作を引き起こす「要因(=誘発因子・トリガー)」があります。その最も多いものは女性の生理ですが、男性にも片頭痛の方はいるなど、要因は多種多様で一人ひとり違います。自分の片頭痛の要因が分かれば、対処方法や付き合い方を考えやすくなります。
たとえば睡眠不足やストレスが要因になりやすい女性なら、生理の時期には睡眠不足やストレスを避けるなどすれば、複数因子が重なるのを回避でき、片頭痛の予防や期間短縮、軽減につながります。
片頭痛を引き起こす要因(誘発因子・トリガー)
- チョコレート
- 柑橘類
- 脂っこいもの・揚げ物
- 食品着色料
- 茶・コーヒー
- アルコール飲料
- カフェインを含む飲み物
- 乳製品など
- ストレス
- 視覚(光など)
- 聴覚(特定の音など)
- 嗅覚(特定のニオイなど)
- 疲労
- 空腹
- 睡眠不足・睡眠過多
- 天気・気圧など
- 胎児期の母親の飲酒喫煙
- 女性の生理など
せっかくの薬が逆効果!
頭痛薬の飲み過ぎも、頭痛になる!
頭痛の原因として意外と知られていないのが、頭痛薬の飲み過ぎ。頭痛持ちの人が痛み止めを服用しすぎて、薬の過剰服用がさらに頭痛を引き起こす。そうなるとさらに薬を飲んでしまい慢性化する、という特殊な状態です。
病院で処方箋をもらって受け取る薬なら医師や薬剤師がストップをかけられますが、直接薬局で購入する市販薬は本人任せのため、薬の飲み過ぎが起こりやすくなります。
片頭痛トリビア02 「片頭痛は脳梗塞につながっている場合も!」
片頭痛と脳梗塞の関連について様々な研究があり、片頭痛持ちの人が喫煙や経口避妊薬(ピル)を使用すると、脳梗塞リスクが7~9倍に増加するというデータがあります。
これをいちばん知ってほしい!
実は3年前から、片頭痛の特効薬が登場!
2021年から「抗CGRP抗体」と呼ばれる、片頭痛の特効薬が保険適用になりました。月1回の注射で、片頭痛のかなり大きな改善効果が期待できるものです。飲み薬でなく注射という点は苦手な方も多いかもしれませんが、効果が1カ月持続するため通院や服薬の手間を軽減でき、仕事や子育てなどで忙しい方に非常に有益と言えます。よく効く薬ほど副作用が強いのが一般的ですが、この注射は副作用がほとんどない点も大きなメリットです。
この「抗CGRP抗体」は、従来の予防薬を使用しても片頭痛が治まらない場合や、副作用などで従来の予防薬が使用できない場合に、保険適用で使用可能です。
お話を聞いた先生
脳卒中センター特別顧問
総合腫瘍科 がん先端医療推進部長
橋本洋一郎 Yoichiro Hashimoto
神社仏閣、城、温泉めぐりをこよなく愛する。
読書は瀬戸内寂聴著『源氏物語』と、『鬼滅の刃』を通読中。
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