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12 パスが変われば病院が変わる

 わかりやすいクリニカルパスの話も最終回となりました。初心者向けに書いてきましたが、最後にこれから病院はどう変わらなければならないかを述べて、まとめとしたいと思います。

 病院と言う事業は、資金や人材などさまざまな社会資源を投入し医療を通して社会に貢献できるような成果を持続的に達成する活動と言えます。われわれのコアの仕事は医療、とくに急性期病院では治す医療で、これを効率よくおこない安全で質の高い医療プロセスを常に目指す事が重要です。必然的に自分たちのやっている医療の中身を常に見直しブラッシュアップ、つまり良い方法を模索する作業を立ち止まることなく続けていくことになります。

 今までも述べたようにパス、とくにアウトカム志向のパスはチーム全体が明確かつ具体的な目標を共同で設定し、その達成状況を管理していくというツールで、この手法は他に例をみません。さらに医療者間で使用される用語の標準化と判断基準の組み合わせは、曖昧な評価を避けデータとして正確に状態把握ができ、分析可能な、電子化に対応した仕組みでもあります。共同で作成した標準化パスを使うことで各病院の間でベンチマークが可能になり、自院の良い点、改善すべき点が明らかになります。マネジメントする立場から言えば、質の高い医療を追求するためには必須のアイテムですが、いまだに、パスはなじまないとか個別性を無視して画一的だ等の批判もあります。ではどういう点がなじまないのか、個別性とは何かなど突き詰めた議論はあまりなされておらず、相変わらず医療内容はばらばらで単純な比較さえ困難、質向上の議論など全くできないのが現状ではないでしょうか。結局パスを導入できないとかパスがうまく機能しないという背景には、組織全体が変わりたくない、今までどおり好きなようにやりたいという「気分」があるように思えます。

 もちろん医療の中身を客観的に評価できる、すなわち数値で把握し、比較できるという状況はごく最近やっとできるようになったというのも事実です。しかしITの急速な進歩によるリアルビッグデータの生成が可能になりました。それぞれのパス情報の電子的交換や、電子カルテへの直接的な移入ももうすぐ可能になると思います。そうすればパスを作成する負担も確実に減るはずですし、標準化も一気に進み、データ収集と解析が日常的に行われるLearning Health Systemが実現できます。

 ITの進歩は目覚ましく、とくにChat GPTに代表される生成AIは今後ますます多岐にわたって開発され、医療の分野でも大いに活用されると考えています。多くの人が病院に行く前にChat GPTに質問し、いくつかの選択肢を提示されて病院を受診することになるかもしれません。その時のAIの判断に病院の治療実績や、医療の質情報やスタッフ数などの公開情報が利用される事になるでしょう。

 先進国でも非先進国でもマイナンバー、オンラインは当たり前の世界で、こうした仕組みを忌避して変わっていけないならば、ますます世界の潮流に後れを取ることになります。一連のコロナ騒動でわが国のデータ収集の仕組みが他国に比較して相当遅れていることに気づかされました。そして大量のデータを個々の病院で分析するのも非効率。多くの病院のデータを集め、ベンチマークとともにパスの改訂も共同で行うことで負担も減ると思われます。

  パス作成は医療者間のコミュニケーションを円滑にし、データ解析によりパスを改訂して医療を進歩させるプロセスは、変える組織、変える風土を醸成します。そしてこうした努力は最終的に治療成績や患者満足度の向上、効率化による経営改善や働きかた改革につながります。

 パスを使ってデータを集め、みんなで分析して医療を変えていこう!

パスで病院はどう変わるか

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