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2.まずは目標が必要だ・アウトカム!

前回、治療には目標が必要だと述べました。パスの世界ではこの目標をアウトカムと呼びます。30年ほど前の医療では目標を明確に定めていませんでした。これも医師の頭のなかにはあったかもしれませんが、実際は「患者はいろいろなのでやってみないとわかりません」と説明していました。確かにいつごろまでに治りますと正確に予測することは難しいのですが、多くの患者さんのデータを集めて解析するとだいたい何日目ごろの退院が多いとか、術後5日目ごろには家に帰れますなどといったことが数値で具体的に示すことができます。患者さんや家族も、●月〇日に帰れるといったことより、だいたい何日目ぐらいを目安にと言った程度のことでもわかっておくとひと安心。

最大の目標は元気で退院することですが、治療の途中で熱はどれぐらいでるとか、痛みはこのくらいとか、食事はいつごろからできて、シャワーはいつ頃などの目安があれば、患者さんの安心感はさらに増します。パスでは手術後3日目にリハビリを始めますとか、食事は2日目夕方からとか、シャワーは3日目から、ドレーンは2日目で抜けます、点滴は2日目で終わりですなどが書いてあります。こうした医療行為(これをタスクと呼びます)の目標に加えて、患者さんの状態、つまり術後1日目の発熱は37.5°C以下だとか、2日目の食事摂取量は3分の2以上とか、3日目には500m歩けます、痛みは10段階で3程度ですなど標準的にいったらこういう経過を辿りますという目標を設定します。もちろんこうした標準経過は多くの症例を分析して、スタッフ全体で話をして設定します。これがアウトカム志向パスの本質です。

昔はこういった目標設定や説明自体を好ましくないと思う医師も多くいました。つまり予定通りいかなかったときはどう患者に説明するのかという心配です。でもよく考えてみてください。これはあくまで標準的経過です。一日ぐらい食事が遅れることもありますが、これは通常の範囲と考えて良い差です。もちろん、ここで患者さんには説明が必要です。おなかの動きが少し悪いので、食事は遅らせましょうという説明があれば患者さんも納得し安心します。

患者さんの不安の大半は情報がないことです。車の修理に出して部品を変える時は説明が必要ですね。 

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