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3.誰がする?目標達成の判断

前回、クリニカルパスには患者さんの目標(アウトカム)が必要だと述べました。例えば「手術後の循環の状態が安定している」とか「痛みのコントロールができている」などのアウトカムを日にちごとに設置していきます。こうしたアウトカムの多くは医療者の経験に基づくもので、経験が多いほど、見るポイントやタイミングも適切になります。循環動態をどう見るのかはそれぞれスタッフの力量で大いに異なります。そこで「循環動態の安定」とは血圧がこの範囲で、脈拍はこの範囲、不整脈が無いなどを満たせばOKという判断の基準をあらかじめ決めておけば、誰でも判定ができます。

パスの本質的な利点はみんな「同じ物差し」で判断し「同じ言葉」で情報を共有することができることです。患者さんの状態がこの基準に合致すれば、治療は標準的に進んでいると判断できます。この判断の中身、この場合の血圧や脈拍を「観察項目」と呼びます。つまりアウトカムと言う目標の判断材料である観察項目が結びついているという構造です。もちろんこれは基本的で最低限の観察内容ですが、経験ある医療者は「ちょっと息苦しそうな話ぶりだ」とか「いつもより元気がなさそう」といったさらに深い情報を探ることができます。これが暗黙知ですね。早くこの域に達するように経験を深めましょう。

 

アウトカムに紐づいた観察項目がすべて満たされれば、アウトカム達成!患者さんは順調、そして記録はチェックだけでOK。簡単ですね。以前はこうした仕組みがなかったので看護記録には患者がしゃべった内容がそのまま記載されてました。

看護師「体調はどうですか?」、患者「どぎゃんなかたい」、看護師の評価「正常」と言った風に。この忙しいのに「そぎゃんこつ書くな!」と思わず熊本弁がでてしまう始末。記録を正確にそして詳細に書かなければならないのはアウトカムが達成されない時、つまりバリアンスが発生したときです。血圧が低すぎるとか、脈が早すぎれば、患者の訴えがなくとも一応バリアンスと判定します。バリアンスのときは患者の状態を細かく見て評価し、ほかの症状がないかを聞き出し、記録を詳細に書きます。これは後で治療を振り返って改善のポイントを探すためには大変重要な情報になります。これがバリアンス分析です。

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