厚労科研 概要
医療業務の軽減には、医療の質低下を招く危険が潜む。医療の質確保のために必要な業務は確実に継続し、不必要な業務の削減や移行をデータに基づき検討すること、結果を再びデータで確認することが重要です。
過去の研究結果を基に、クリニカルパス(以下パス)を基盤にICTを用いて医師の業務削減・タスクシフト/シェアを実施する研究です。病棟において1)医師行動識別センサ、2)循環器・肺がん手術標準パス(医療アウトカム評価)、3)AI診療支援(AI問診票によるカルテ作成・患者説明支援)、4)電子カルテログ(医師人件費)/レセプトデータ(医療コスト)、5)臨床検査関連業務を分析し、医療の質に関与しない医師業務を削減・タスクシフト/シェアし、医師業務負担を7%に軽減することを目標に設定しています。
パスを使うことにより、看護師や臨床検査技師を含めた、医師以外の医療職の業務の整理・タスクシフト/シェアも同時に可能となると想定されます。
本研究は日本クリニカルパス学会・日本医療情報学会の合同委員会、日本循環器学会、日本臨床検査技師会の共同研究です。2020年度までAMEDでパス標準化事業(以下ePath)を実施していましたが、その参加4病院を含めて行います。パスを用いた同様の海外事例はみあたらず、独自性の高い研究と言えます。
期待される効果は、本研究を基に策定するガイドラインを活用してパスの改定を行うことで、医師業務削減を合理的にかつ安全に実現することが可能となります。改善はLHS(Learning Health System)として継続的に行われます。
ePathは電子カルテトップ4ベンダが参加(シェアは85%)しています。電子カルテベンダに依存しないデータに基づく医師の業務負担軽減基盤が期待できます。ePath構造は2021年11月に日本医療情報学会標準となりました。また、ePathの仕様書は近日中に公開する予定で、4ベンダ以外の電子カルテベンダ/医療施設にも普及可能となります。ePath基盤は次世代医療基盤法の活用を前提とし、本研究終了後は業務改善としての多数施設での業務負担軽減解析が容易となります。