がん治療に循環器治療の視点を入れる。専門外来「腫瘍循環器外来」を新たに開設
専門外来「腫瘍循環器外来」を新たに開設
近年、がん患者が循環器疾患を併発しているケースが少なくないことがわかってきました。 そこで当院では今年4月、がん治療と循環器治療を並行して行えるよう、「腫瘍循環器外来」を新たに開設しました。
がんと心臓の意外な関係。
がん治療になぜ心臓が関係あるの?と思われる方も多いかもしれません。実は、がん患者さんが心臓や循環器の症状を併発するケースがまれではなく、がんと循環器の関連が明らかになっています。がん自体が血液を固まりやすくして血栓症(心筋梗塞や脳梗塞)を引き起こしたり、がん治療に必要な薬や放射線の影響で心機能が低下することなどが指摘されるようになりました。 がん治療の主治医と、心臓や血管の専門家である循環器の医師が、早期から協働してがん治療に取り組むことが急務だと、私自身感じていました。院内で要望が高まっていたこともあり、腫瘍循環器外来の立ち上げを提言し、発足時の担当医に立候補し今に至ります。
当外来の目的は、がん治療をやり遂げるための支援、治療後のクオリティ・オブ・ライフを高めることです。心機能の低下にいち早く気づき、いち早く治療する。心臓を保護する薬を数値が悪くなる前に開始するなど、一人ひとりのがん治療をできるだけ中断、中止せず続けられるようなサポートをすることが、私たちの役割です。
チーム医療で目指す早期発見・早期治療。
腫瘍循環器外来では、主にがん治療前のスクリーニング検査※や、治療中のモニタリング、治療後のフォローを行います。特に事前のスクリーニング検査は、治療方針を左右するためとても重要です。当外来は循環器内科医だけではなく、検査を行う技師、患者さんの病状を聴く看護師、薬物療法の専門家である薬剤師と、多職種が連携し成り立っています。検査結果や治療・検査スケジュールに気になる点があれば、スタッフから私へ声がかかります。多職種の視点が入ることで気づきが増えるので、とてもありがたいです。
また患者さんご本人とスタッフのコミュニケーションも活発です。当外来では、その日訪れる患者さんの情報を全員で共有する場を朝に設けています。各自その際に気になる点を洗い出し、患者さんに直接声をかけるので「いろんな方から話しかけられて驚きました」と患者さんからは言われます。
この「横の連携」もさることながら、循環器内科医と主治医との連携も大切で、がん治療の朝のカンファレンスに私も参加しています。顔を合わせて話す機会が増えたので、コンサルト※しやすくなっていると思います。先生方からも窓口ができたことで相談しやすくなったと言われます。
外来は週2日ですが、腫瘍内科の先生にはいつでも電話してくださいと伝え、私も心エコー検査(心臓超音波検査)の担当なので心機能の低下に気づいたらその場で連絡しています。がん診療や治療における循環器内科の役割がはっきりしたことで、さまざまな連携がよりスムーズになったと感じています。
コンサルトとは主治医が対処に困った患者さんの問題について、専門家やより知見のある医師に意見を聞いたり、診療を委ねたりすることで、より質の高い医療を提供するための一連の手続き。
スクリーニング検査とは 超音波(エコー)を心臓に当てることで、心臓の形状やサイズ、弁や心臓の壁の動き、血液の流れなどといった心機能を診る検査です。
がん治療中の患者さんにも経験者の元患者さんにも、頼れる外来に。
まずはスクリーニング検査やモニタリング項目、間隔を検討し、体系的に行うことが目標です。ゆくゆくは、当院でがんを治療する患者さん以外にも役立てる腫瘍循環器外来にしたいと考えています。
というのも、以前に乳がんや小児がんの治療をして寛解した方でも、20〜30年たってから、当時のがん治療の影響で心臓に疾患や後遺症などが出ている場合もあるためです。そのような〝がん経験者〟に、念のためにチェックで受診してもらえるようにしたいのです。かかりつけ医の紹介を通じて地域と連携することで、一人でも多くの方のがん治療を後押しし、クオリティ・オブ・ライフの向上を一緒に目指していきたいです。
心機能Q&A
心機能検査には、どんな検査がありますか?
血液検査、胸部X線撮影、超音波検査があります。
心臓の超音波検査(心エコー検査)は、どんな検査ですか?
上半身裸になり、身体の右半分を下にして横向きで寝そべって検査します。胸に超音波の通りを良くするゼリーをつけて検査します。身体を傷つけることはなく、放射線被ばくの心配はありません。
関連情報
お話を聞いた先生
循環器内科 医長
堀端 洋子 (ほりばた ようこ)
和服は、着るのも見るのも大好き。夏は浴衣でビアホール。
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