ガンマナイフ治療とは?痛みはあるの?専門医が解説【脳腫瘍・髄膜腫・三叉神経痛】
脳腫瘍や脳の病気が見つかったとき、「頭を開く手術が必要なのだろうか」「後遺症は大丈夫だろうか」と不安を感じる方は少なくありません。
脳神経外科の治療には開頭手術のほか、頭を切らずに治療を行う「ガンマナイフ治療」という選択肢があります。済生会熊本病院では1999年の導入以来、多くの患者さんにガンマナイフ治療を提供してきました。
今回は、ガンマナイフ治療の特徴や効果、副作用について、脳神経外科医がわかりやすく解説します。

ガンマナイフ治療とは?痛みなく「切らずに治す」脳神経外科治療
頭を開けることなく、脳内の病変に放射線を集中的に照射し、ピンポイントで治療を行う放射線治療装置です。イメージとしては、虫眼鏡で太陽の光を一点に集める仕組みに似ています。
虫眼鏡を使うと、広がっている太陽の光が一点に集まり、強い熱を生み出します。ガンマナイフも同じように、約200本の細いガンマ線を病変に集中させることで治療を行います。
ガンマナイフ治療に痛みはある?
患者さんから最も多く寄せられる質問の一つです。結論からいうと、放射線の照射そのものに痛みはほとんどありません。
治療前には頭部固定用のフレームを装着します。その際、局所麻酔の注射を行うためチクッとした痛みを感じることがありますが、照射中はベッドに横になって過ごしていただくだけで、熱さや痛みを感じることはほとんどありません。
ガンマナイフ治療の特徴とメリット
身体への負担が少ない
開頭手術と異なり、頭皮や頭蓋骨を切開する必要がありません。そのため、
- 出血のリスクを抑えられる
- 感染症のリスクが少ない
- 全身麻酔が不要
といったメリットがあります。
短期間で治療できる
- 日帰りまたは1泊2日程度の入院で治療が可能です。
治療後は比較的早く普段の生活に戻りやすく、仕事や家庭生活への影響を抑えやすい点も特徴の一つです。
高齢者にも適応しやすい
- 年齢や全身状態などの理由で開頭手術が難しい患者さんにとっても、治療を検討しやすい選択肢の一つとなります。
知っておきたいデメリット
ガンマナイフは非常に優れた治療法ですが、すべての病変に適しているわけではありません。病変の大きさや位置によっては、開頭手術を組み合わせたほうが望ましい場合もあります。そのため、一人ひとりの状態に応じて適切な治療法を検討することが大切です。
ガンマナイフ・開頭手術・その他の放射線治療との違い
開頭手術とガンマナイフの違い
開頭手術は、頭蓋骨を開いて腫瘍を直接摘出する治療です。大きな腫瘍にも対応でき、その場で腫瘍を摘出できることが特徴です。一方で、全身麻酔や一定期間の入院が必要となるため、身体への負担は比較的大きくなります。
ガンマナイフは、頭を切ることなく放射線を病変に集中させる治療です。腫瘍をすぐに取り除くことはできませんが、成長を抑えたり、時間をかけて縮小させたりすることが期待できます。
特に、
- 高齢で手術リスクが心配な方
- 持病があり全身麻酔が難しい方
- 脳の深部など手術が難しい場所に病変がある方
にとって、有力な治療選択肢となります。
サイバーナイフやリニアックとの違い
放射線治療には、ガンマナイフ以外にもリニアックやサイバーナイフがあります。以下の表のような特徴がありますが、ガンマナイフ治療は脳病変専用の高性能機器です。
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項目 |
ガンマナイフ |
リニアック |
サイバーナイフ |
|
放射線 |
ガンマ線 |
X線 |
X線 |
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主な治療部位 |
脳・頭蓋内病変 |
全身 |
全身 |
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得意な疾患 |
転移性脳腫瘍、髄膜腫、三叉神経痛など |
がん全般 |
脳腫瘍、肺がん、肝がん、前立腺がんなど |
|
照射 |
約200本のガンマ線を一点に集中 |
広い範囲を様々な角度から照射 |
1本の放射線を数回様々な角度から照射 |
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治療期間 |
日帰りまたは1泊2日程度 |
通院20日程度 |
通院5日程度 |
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特徴 |
脳疾患に特化した高精度治療。1回で治療が完了。 |
最も広く使用されるがん治療装置 |
動く病変でも追尾して照射できる |
対象となる病気(一例)
転移性脳腫瘍
肺がんや乳がんなど、他の臓器にできたがんが血液の流れを通じて脳へ転移したものを「転移性脳腫瘍」といいます。脳に転移した腫瘍は、正常な脳神経の働きに影響を及ぼし、さまざまな症状を引き起こすことがあります。日本脳腫瘍学会によると、がん患者さんの約10%が転移性脳腫瘍を発症するとされています。
また、転移性脳腫瘍に対するガンマナイフ治療は、緩和ケアを受けている患者さんでも適応となる場合があります。治療の目的は必ずしも「がんを治すこと」だけではなく、頭痛や麻痺などの症状を和らげ、その人らしい生活をできるだけ長く続けられるよう支えることでもあります。
そのため、全身状態や病状を総合的に評価しながら、治療の必要性を判断します。
髄膜腫(ずいまくしゅ)などの良性脳腫瘍
髄膜腫は、脳を包む「髄膜」から発生する良性脳腫瘍の一つです。中高年以降の女性に多くみられますが、発症のはっきりとした原因は現在もわかっていません。
髄膜腫は3~4cm程度まで大きくなっても症状が現れないことがあります。そのため、症状が出たときにはすでに腫瘍が大きくなっており、治療の選択肢が限られるケースもあります。
比較的小さな段階で発見された場合は、ガンマナイフ治療によって将来的な腫瘍の増大や症状の出現を防げる可能性があります。
三叉神経痛
顔にビリッとした激痛が走る病気を「三叉神経痛」といいます。虫歯と勘違いして歯医者さんに行くケースもあると聞きます。食事や洗顔、会話、風が当たるなどの日常の軽い刺激が引き金となって、数秒から数分続く鋭い痛みを繰り返すことが特徴です。
治療の流れ

- 1.外来受診
- 専門医が画像検査結果を確認し、治療方針を相談します。
- 2.フレーム装着
- 局所麻酔を行い、頭部を正確に固定するためのフレームを装着します。
- 3.治療計画作成・照射
- MRIやCT画像をもとに治療計画を作成し、照射を行います。照射時間は病変の状態によって異なりますが、おおむね1〜3時間程度です。
- 4.退院・経過観察
- 日帰り、もしくは、1泊2日程度で退院します。その後は外来にて診察や検査などを行い、経過観察をします。
済生会熊本病院のガンマナイフ治療の特徴を専門医が解説
手術とガンマナイフ、両方に対応できる体制が当院の強み
脳腫瘍の治療では、手術とガンマナイフのどちらが適しているかは、腫瘍の大きさや位置、患者さんの年齢や健康状態によって異なります。
済生会熊本病院では、開頭手術とガンマナイフ治療の両方に対応しているため、一人ひとりの状態に合わせた治療方針をご提案できます。
例えば大きな腫瘍の場合は、まず手術で安全に摘出できる範囲を取り除き、その後に残った病変へガンマナイフを照射することで、治療効果と安全性の両立を目指すこともあります。
「手術ありき」「ガンマナイフありき」ではなく、患者さんにとって何が最適な治療なのかを第一に考えて提案できることが、当院の大きな特徴です。
チームで支えるガンマナイフ治療
ガンマナイフ治療では、病変に放射線を正確に集中させるための治療計画が重要になります。
当院では、脳神経外科医や放射線治療に携わるスタッフが連携し、MRIやCT画像をもとに治療計画を作成しています。病変の形や周囲の神経・血管の位置を丁寧に確認しながら、正常な脳への影響をできるだけ抑えられるよう検討を重ねます。
こうした多職種によるチーム医療により、安全性に配慮しながら質の高いガンマナイフ治療の提供に努めています。
気になる症状や脳ドックでの指摘は、早めの相談を
脳腫瘍は、症状がないまま見つかることも少なくありません。特に髄膜腫などの良性脳腫瘍は、脳ドックや画像検査で偶然発見されることがあります。
「症状がないから大丈夫」と思われるかもしれませんが、腫瘍が大きくなると脳や神経を圧迫し、手足の麻痺やふらつき、聴力低下、視力障害などの症状につながることがあります。
また、腫瘍が小さいうちはガンマナイフ治療で対応できる場合でも、大きくなると手術が必要になることがあります。その頃には年齢や体力面の不安から、治療の選択が難しくなるケースも少なくありません。そのため、早い段階で専門医に相談し、適切な経過観察や治療方針について確認しておくことが大切です。
頭痛が続く方、ふらつきや手足のしびれが気になる方、脳ドックで異常を指摘された方は、お気軽にご相談ください。済生会熊本病院では、開頭手術とガンマナイフ治療の両方に対応し、一人ひとりの状態に合わせた治療方針をご提案しています。
◆Q&A
治療中に痛みはありますか?
放射線を照射している間に痛みを感じることはほとんどありません。治療中はベッドに横になった状態で過ごします。ただし、治療のために頭部を固定する際に多少の違和感を感じることがあります。
どのような病気がガンマナイフ治療の対象になりますか?
主に転移性脳腫瘍、髄膜腫、聴神経腫瘍、脳動静脈奇形、三叉神経痛など、脳や頭蓋内の病変が対象となります。ただし、病変の大きさや数、患者さんの全身状態によって適応は異なるため、詳しくは医師が判断します。
高齢でも治療を受けられますか?
ガンマナイフは身体への負担が比較的少ないため、高齢の方でも治療を検討できる場合があります。年齢だけでなく、全身状態や病気の状況を総合的に判断して治療方針を決定します。
ガンマナイフ治療は何度でも受けられますか?
病変の状態によって異なりますが、ガンマナイフ治療は複数回行える場合があります。
ガンマナイフは、病変に対してピンポイントで放射線を照射する治療です。そのため、周囲の正常な脳組織への影響をできるだけ抑えながら治療を行うことができます。
一方、リニアックやサイバーナイフでは、治療の特性上、病変の周囲を含めた範囲にも一定量の放射線が照射されます。そのため、正常な脳への被ばくや累積線量を考慮しながら治療計画を立てる必要があり、繰り返し照射が難しくなるケースがあります。治療機器ごとに特徴や適応は異なりますので、治療方法の選択は病変の状態や患者さんの状況を踏まえて判断されます。
他のがん治療や緩和ケアを受けていても治療できますか?
転移性脳腫瘍の場合、抗がん剤治療や緩和ケアを受けている方でもガンマナイフ治療が適応となることがあります。症状の改善や生活の質(QOL)の維持を目的として治療を行う場合もあります。
話を聞いた先生
脳神経外科 部長
山城重雄
学生時代から脳神経外科を志し、脳腫瘍などの診療・治療に取り組んできました。脳神経外科は日々新しい知見や技術が生まれる分野であり、手術技術を磨きながら患者さんにより良い治療を提供できることに大きなやりがいを感じています。現在は若手医師の育成にも携わり、これまでの経験を次世代へ伝えながら、地域医療に貢献したいと考えています。

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