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済生会熊本タイムズ

地域に最先端の医療をいち早く提供する当院の取組みや様々な情報をご紹介します。

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脳血管障害の治療に、「開頭手術」と「血管内治療」の両輪で挑む

未破裂脳動脈瘤のクリッピング術をはじめとして、これまで、開頭手術を中心に据えて脳血管障害を治療してきた当院で、今後はカテーテルを用いた血管内治療と両輪で進めていくことになりました。

脳血管障害の開頭手術で全国屈指の実績

まず脳血管障害とは何か。脳の中の血管が狭くなったり塞がれたりする「虚血性脳血管障害」と、脳の中の血管が破れる「出血性脳血管障害」があります。がん、心疾患に次いで日本人の死因の第3位(※1)、寝たきりの原因としては第1位(※2)を占める疾患です。高齢化の進行によりその影響は大きくなっています。

高度な技術が求められる脳血管障害の治療として、これまで当院では、頭蓋骨を切り開く「開頭手術」を中心に行ってきました。開頭手術は根治性の高さが大きな特徴で、高い技術と最新鋭の機器を揃え、数多くの治療実績を経験してきました。術後の長期成績も非常に良好です。

※1 老衰を除く死因 厚労省 令和元年(2019)人口動態統計より
※2 厚労省 2019年 国民生活基礎調査の概況より

血管内治療というもうひとつの選択肢

そんな脳血管障害の治療法として、開頭手術以外に「血管内治療」という選択肢が出てきました。すでに海外では2000年代から、国内でも2010年代から増えています。
血管内治療とは、その名の通り血管を通じてそのまま脳の中の患部までカテーテルを挿入して治療を行うものです。頭の皮膚を切開する必要がない、それゆえ脳自体を触らずに治療ができる、開頭手術での治療が困難な部位にも到達できる、入院期間が短くなる、など多くのメリットがある低侵襲治療です。

脳血管障害における「開頭手術」と「血管内治療」のそれぞれの優位点

開頭手術が優れている点
  • 根治性が高い
  • 脳の表面に近い疾患に適している
  • 小さな脳動脈瘤(3mm未満)では安全性が高い
血管内治療が優れている点
  • 頭を切開する必要がなく、外見上の傷が残らない
  • 開頭手術での治療が困難な部位にも届く
  • 入院期間が短くなる

5時間かかっていた手術が1~3時間に

血管内治療の最大のメリットは、治療時間の短さ。開頭手術はおよそ5時間程度かかり、そのうち開頭だけでも1時間ほど要しますが、血管内治療は、治療自体が1~3時間ほどで終わることが大半です。患者さんからは喜ばれ、驚かれます。

とはいえ、急にすべてを血管内治療に置き換える、というものではありません。患者さんの状況にあわせていずれが相応しいかを選びます。
脳の表面に近い病変や、3mm未満の小さな脳動脈瘤については開頭手術のほうが安全性が高いと言えます。特殊な脳動脈瘤の一部には開頭でしか手術できないものもあります。

開頭クリッピング術をはじめとして、脳血管障害に対する開頭手術の経験と実績が多い当院では、どちらの方法がそれぞれの患者さんに適しているのかを熟知しているため、無理のない、より安全な治療を提案できる強みがあります。

血管内治療(コイル塞栓術)と開頭手術(クリッピング術)の図

開頭手術と血管内治療、どちらも対応し続けられるように

最近はネットで独自に情報収集されている患者さんやご家族も増えてきて、未破裂脳動脈瘤の治療で開頭でのクリッピング術を主に手がけてきた当院でも、「血管内治療ではだめですか?」と要望されることも出てきました。

血管内治療はデバイスやその安全性の進歩がめざましいことから、当院でもその導入を積極的に進めることになりました。

血管内治療の症例はおのずと増えていくと思われますが、従来の開頭手術でないと救えない患者さんや疾患も必ずあり、今後の課題は、その技術も途絶えさせず残していくことです。開頭手術と血管内治療、その両方にしっかり対応し、あらゆる脳血管障害の治療を担える体制を維持していきたいです。

脳神経外科担当 部長 山城重雄 加地正知 天達俊博

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