全身管理をするため、あらゆる知識を身につけることができます。
ーどのようなことが学べますか?
単一疾患では説明できないことが学べます。たとえば高齢者の場合、一つの疾患だけでは全てが説明できないような複数の臓器にわたっている症例が多いです。そうした全身管理を、専門的ではないにしろ広い知識を持って対応することになります。また、重症なのに何が起こっているのかわかりづらい悩ましい症例にも遭遇します。どこの科に聞いてもわからない場合もあるため、一から文献で調べるなどして勉強できるのも当センターの特徴です。
初期対応からその後の治療、退院まで全て自分たちで診られることが魅力です。
ー仕事のやりがい、喜びは何ですか?
救急部からセンターになって部署の規模が大きくなり、複数の科の医師が所属されるようになったことです。各科の敷居が低くなって患者さんの様々な問題点を相談しやすくなったし、いろいろな角度から患者さんを診られるようになりました。また、他の病院の救急部では、システムの違いから入院患者の制限があったり、各科に振り分けたらその後の治療に関われなかったりします。当センターでは初期対応からその後の治療、退院まで途中の経過も全て自分たちで診られることが魅力で、力も付けられます。当院の場合、手術を外科に依頼しても、術後の管理は全て当センターに任せてもらえます。それによって内科疾患も外科疾患も網羅した全身管理ができるため、恵まれた環境だと感じます。働く上でも以前に比べてマンパワーが充実しているため、一人ひとりの負担が軽減され、土日も休みがきちんと取れます。
もっといろいろな疾患を学びたい、重症の患者さんを診られるようになりたいと思いました。
ー当院に就職したきっかけを教えてください。
大学は県外でしたが、実家が開業していることもあって熊本に帰り、当院で2年間の研修をしました。その間、いろいろな科を回りましたが当時、救急総合診療センターはまだなく、規模の小さい救急部という部署でした。臨床研修医は他科の場合、自分で判断して処置することはほとんどないのですが、救急部ではいろんな処置を勉強させていただきました。いわゆる短時間で勝負をつけねばならないところが魅力的でした。それでレジデントになる時、もっといろいろな疾患を学びたい、重症の患者さんを診られるようになりたいと思い、新しく発足した救急総合診療センターを選びました。また、救急の仕事は若い今のうちだからこそできると思った部分もあります。
レジデント時代に回復した患者さんからいただいた「ありがとう」の言葉が忘れられません。
ー救急総合診療センターで最も印象に残ったことは何ですか?
当センターがスタートした時に研修医からレジデントになりましたが、1年しか違わないのに夜勤も一人で担当することになり、ベテランの先生方と同じように勤務が組まれます。一人前として扱われることに責任を感じる半面、最初はビクビクしたところがありました。そんな頃、非常に重症の患者さんが搬送されてきました。出血が大量で意識が落ちる前、「まだ死にたくない」と訴えられました。でも、血圧はどんどん下がっていきました。その途端急に怖くなり、とにかく必死になって当番の外科や消化器の先生にも声をかけて治療にあたりました。幸い、1カ月半ほどの入院で普通にご飯を食べたり冗談を言えるようになるまで回復されました。「死にたくない」との言葉は覚えていなかったそうですが、「ありがとう」の言葉が胸一杯しみわたりました。今後の医師としての人生の中で一生、決して忘れられない出来事となりました。そして同時に、この経験が自信にも繋がりました。
目指す分野が決まっている人・いない人、どちらにも非常に勉強になる環境です。
ー就職希望者へのメッセージをお願いします。
私の場合、卒業してすぐ熊本の病院も医師の方々も、よく知らない状況で帰って来て当院に入職しました。知っている人がいない中で臨床研修医としてやっていくのは不安もあったのですが、非常に環境がよく居心地が良い職場です。それぞれの科の先生が温かく、相談もしやすい雰囲気です。当センターではいろいろな疾患を診られるので、「将来は内科に」とか決めている場合でも役立つし、逆にまだ進路を決めていない人にも非常に勉強になります。特に、同じ若い世代の方にはぜひ、経験してみることをお勧めします。