血管造影検査(Angio)
検査情報
血管造影検査(Angio)とは
血管造影検査とは、細い管(カテーテル)を使って造影剤というお薬を血管に流し込み、血管の疾患を調べるための検査です。検査は、細い管(カテーテル)を太ももの付け根または腕の血管から挿入し、造影剤を目的の血管に流し込みながら、X線撮影をします。血管が狭くなったり詰まったりしていないか、腫瘍に栄養を送っている血管はどれかなど、血管が関係している疾患を詳しく調べることができます。また、狭くなった血管を広げたり、腫瘍に栄養を送っている血管を詰めたりなど、治療を行うことも可能です。検査・治療時間は30分から数時間となります。
当院では、最新鋭の血管造影装置を導入しています。画像処理が一新され、血管の様子を高画質で撮影することができ、より安全で迅速な診断・治療が可能になりました。
検査について
心臓疾患の検査
- 心臓カテーテル検査
この検査では心臓の血管(冠動脈)に造影剤を流してX線撮影をし、血管の狭窄の有無を調べることができます。 コレステロールの沈着 (プラーク) により心臓の血管が狭くなると、狭心症や心筋梗塞を起こす可能性があります。心臓カテーテル検査はこれらの疾患を発見し、治療方針を決めるために必要な検査です。2009年より、外来での日帰りカテーテル検査も行っています。
心臓疾患の治療
- 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
血管の狭くなった部分に、風船のついたカテーテルを通して内側から押し広げたり、網状の筒(ステント)を留置したりする治療です。その他に、血管の中にできた血栓の吸引やカテーテルの先に取り付けたダイヤモンドのバーを回転させて硬くなった病変を削り取るなど、特殊な治療も行います。治療の際には、血管内超音波(IVUS)や光干渉断層撮影(OCT)を用い、血管内の評価を行う場合もあります。
病変部にステントを合わせ(①)、風船でステントを広げて(②)、ステントを留置します(③)。
※個人差もありますが患者さんによっては、風船などで広げる際に多少、胸に苦しさを感じる場合があります。その際は遠慮なくスタッフにお伝えください。
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)症例
冠動脈造影(画像1)にて右冠動脈末梢に90%の狭窄を認めます。狭窄部の光干渉断層撮影(以下OCT)画像(画像2)では、わずかな石灰化と線維性プラークを認めました。狭窄より末梢のOCT画像(画像3)では、狭窄やプラークは認めませんでした。
治療では狭窄部に3.5ミリメートル径の冠動脈ステントを留置しました。治療後の冠動脈造影(画像4)、ステント留置部のOCT画像(画像5)から狭窄はなくなっていることがわかります。
不整脈疾患の治療(心房細動)
- 高周波カテーテルアブレーション(RFCA)
心房細動に対するアブレーション治療では、心臓内で生じた異常な電気信号を遮断する治療を行っております。この異常な電気信号は心臓の肺静脈から生じることがほとんどです。高周波カテーテルアブレーションでは、肺静脈と心房の接合部分の心筋細胞を囲うように焼灼することで、異常な電気信号が伝わることを防いでいます。治療には2~3時間ほどかかります。痛みがある場合は、遠慮なくスタッフにお伝えください。
- クライオアブレーション(冷凍アブレーション)
クライオアブレーションでは電気の代わりに冷たいガスを用いて心筋組織を冷却することで、異常な電気信号を遮断し、心房細動を治療しています。この冷たいガスは、左心房内でバルーンを拡張させて肺静脈の入り口をバルーンで閉塞した後に用いられます。治療時間は1~2時間と、高周波カテーテルアブレーションより短い時間で治療が可能です。当院では2015年よりクライオアブレーション(冷凍アブレーション)治療を開始しています。
脳疾患の検査
- 頭部血管造影検査
頭部の血管に造影剤を注入し、その様子をX線撮影することで、頭部の血管の状態を観察します。脳血管障害(脳動脈瘤・くも膜下出血・脳梗塞・脳動静脈奇形など)の状態を把握し、治療方針の決定のために行います。また、脳腫瘍の周囲の血管走行の確認など、脳の手術前の精査としても利用します。
脳疾患の治療
- 血栓回収術
脳梗塞に対する治療法です。脳梗塞は頭の主要な血管が血栓で塞がれて血液が流れなくなり、脳細胞が死んでしまう疾患です。血栓回収術では、脚の動脈からカテーテルを挿入して頭の血管まで進め、血栓を吸引したり、ステントを用いて血栓をからめとって除去したりし、血管の再開通を図ります。
- コイル塞栓術
脳動脈瘤に対する治療方法です。脳動脈瘤は脳の大事な血管の一部が外の方に膨らんでできたものです。脳動脈瘤は破れていない状態であれば症状はありません。膨らみが大きくなると、血管の壁がどんどん薄くなり、血圧に耐えきれなくなると破裂し、くも膜下出血を起こします。コイル塞栓術は、未破裂の動脈瘤に医療用のコイルを詰めて動脈瘤内への血液の流入をなくし、破裂を防ぎます。
- 頸部ステント留置術(CAS)
頸動脈狭窄症に対する治療方法です。頸動脈は、脳に血液を送る重要な役割を果たす血管です。頸動脈が狭くなると脳に血液が送られなくなり、脳梗塞を起こしたりすることがあります。 頸部ステント留置術では、狭くなった頸動脈の内側に金属の網状の筒(ステント)を置くことで頚動脈を正常な幅に広げ、脳への血液の流れを良くします。
消化器疾患の治療
- 経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)
血管に傷がついて出血が止まらない場合に、止血目的として血管を詰めます。
- 経カテーテル肝動脈化学塞栓術(TACE)
肝細胞癌(HCC)の治療のために、腫瘍に栄養を送っている血管にお薬を注入したり、その血管を詰めたりします。
当院では腹部の血管治療の際には、CT装置と血管造影装置が一体となった「IVR-CT」という装置を導入しています。カテーテルで血管を詰めた直後に、CTで撮影して確認することが可能となり、目的の血管をより確実に塞栓することができます。
その他
体のほとんどの血管を造影検査することが可能です。
- 血栓除去術(脳血管以外)
手や脚の動脈に血栓などが急に詰まる(急性動脈閉塞症)と、詰まった部分から先の組織には血液が送られなくなり、激しい痛みや冷感などの症状が現れます。血栓除去術は、先に風船のついたカテーテル(血栓除去カテーテル)を動脈に挿入し、血栓を引っ張り出して取り除きます。血栓を取り除いた後は造影剤を注入し、その様子をX線撮影することで、動脈が再開通しているかを確認します。
- ステントグラフト内挿術
・大動脈瘤などの疾患に対して、開胸(開腹)手術をすることなく治療を行います。大腿動脈からカテーテルを挿入するため、低侵襲の治療が可能であり、手術が難しい高齢者の患者さんなどにも実施できます。また、ステントグラフト内挿術では、動脈瘤のある部位に人工血管とその内側のステントを広げて留置することで、動脈瘤の中に血流が流れ込むことを防ぎます。それにより動脈瘤破裂の危険を無なくすことができます。
ご注意いただきたいこと
- 検査・治療前は絶食になります。
- ほとんどの検査、治療において、動脈に針を刺し、カテーテルを挿入します。針を刺す場所を消毒し、清潔なシートをかぶせて検査・治療を進めますので、実施している間は動くことができません。
- 検査、治療中には患者さんに声掛けを行い、身体的・精神的負担を抑えることができるよう心がけています。検査、治療中に何かありましたら遠慮なくスタッフにお伝えください。
- 苦痛や不安を取り除くために、薬剤を用いて人工的に睡眠状態を作り出す「鎮静」を行う場合があります。鎮静を行った後は十分に休息をとる必要があります。
- 針を刺した場所によって異なりますが、検査・治療後は数時間の安静が必要です。
造影剤の投与について
造影剤とは何か、副作用はどのようなものがあるのか、検査前の注意事項などを詳しくまとめていますので、下記をクリックしてご覧ください