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鼠経部ヘルニア

鼠経部ヘルニア

疾患情報

「鼠径」は「そけい」と読み、人体の足の付け根部分のことを指します。また「ヘルニア」というのは体にある組織や内臓が本来あるべき位置からはみ出した状態のことを指します。
「鼠経部ヘルニア」は、本来お腹の中にとどまっているはずの腸や脂肪組織などが足の付け根のところから皮膚の下にはみ出してくる病気です。よく「脱腸(だっちょう)」とも呼ばれますが、これは俗称です。なぜはみ出してくるのかというと、本来しっかりしているべき筋膜というお腹の壁の組織が弱くなり、部分的に穴があいたようになってしまうためです。大人で鼠径部ヘルニアになる人は8割以上が男性です。40歳をすぎたあたりから症状が出る人がだんだん多くなり、70歳台がピークと言われています。厚生労働省の推計では日本国内で1年間に15万件ほど手術が行われているとされており、誰もがなりうる決して珍しくない病気です。癌のような悪性の疾患ではないのでそこまで急いで治療する必要はありませんが、まれにはみだした腸が戻らなくなって強い痛みを伴う「嵌頓(かんとん)ヘルニア」の状態となることがあります。鼠経ヘルニアの嵌頓を起こす確率は年に1%程度と言われており、嵌頓ヘルニアをそのままにしておくと腸の血流が悪くなって腐ってしまう可能性もあるため緊急の対応が必要です。

病名

鼠径ヘルニア、外鼠経ヘルニア、内鼠経ヘルニア、大腿ヘルニア

症状など

  • 鼠径部(足のつけ根)がふくらみ、横になったり手で押さえたりするとふくらみが戻る
  • 鼠経部がふくらんだときに痛み・違和感・つっぱり感・胃のあたりが引っ張られるような感じなどの症状がある
  • ふくらみが突然固くなって強い痛みを伴い、押さえても戻らない場合は「嵌頓ヘルニア」の可能性がある

主な検査

触診、鼠径部超音波検査、腹部CT検査など

治療方法

外科手術を受けることが唯一の治療法となります。鼠経部ヘルニアはお腹の壁の形が変形してしまった状態なので、薬の内服や点滴では良くなりませんし、様子をみていたら自然に治るということもありません。
手術方法としては鼠径部を4~6cm切開する従来から行われている手術のほか、5mmから1cm程度の小さい傷をお腹に数か所つけてお腹の中で手術をする腹腔鏡手術があります。従来手術と腹腔鏡手術それぞれに一長一短がありますが、どちらもメッシュシートという人工素材のパッチでヘルニアの穴をふさぐという点で大きな違いはありません。メッシュシートを使用した場合の術後再発率は1~2%程度と言われており、従来手術と腹腔鏡手術で再発率に明らかな差は無いと考えられています。当院では従来手術でも腹腔鏡手術でも1泊2日の短期入院で治療を行っています。
もし嵌頓ヘルニアを起こした場合で、病院に来てもふくらみが戻らないときやすでに腸が腐りかけている疑いがあるときは、緊急手術が必要となります。

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